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第四十六話 二人の動向…

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 常夏の島から出港した私は、フレマアージュ王国に向けた船に乗っていた。

 一度行った場所になら転移魔法という移動する魔法も使えなくは無いんだけど、発動すると極端に疲れる上に、遠距離ともなると身体にモロに負担を強いられる。

 まぁ…今はパーティー活動をしている訳ではないし、取り立てて急ぐ必要も無いので、身体に負担の掛かる転移魔法の類は使わなくても良いだろう。

 それよりも…私は暫く放っておいた二人の動向が気になっていた。

 「カリオスは…まだまだノースファティルガルドにいると思うけど、ヴァッシュ殿下も…?」

 私は遠視魔法を使って、まずはカリオスの様子を見る事にした…んだけど?

 ノースファティルガルドでは、まだまだ寒冷期は終わってはおらず…町から出る事が出来るのは海路のみとなっている。

 所持金を全て奪われたカリオスは、祖国に戻る為には働くしか無いはず…なんだけど、町の中をくまなく探しても見つからなかった。

 「あれ? まさか…こんなに早くに船代を稼ぐ事が出来たの⁉︎」

 そう思って、レントグレマール王国も確認したけど…?

 戻った様子は無かったのを確認出来た代わりに、城下街のあちらこちらにカリオスの指名手配の紙が貼られているのを確認した。

 帰りの船から船室に荷物を残した状態で別の場所に移動させた為に、その荷物がレントグレマール王国に渡った後に、任務を放棄してバックれ扱いになっているという事らしい。

 これだと…何も知らないカリオスが祖国に戻ったらどうなるのやら?

 まぁ、私にはどうでも良い事なので構わない。

 それよりもカリオスの姿が本当に見当たらない。

 フレマアージュ王国や定期船の船も確認したけど、やはりカリオスは発見出来なかった。

 …いや、ファスティアはカリオスの姿をノースファティルガルドで何度も目撃をしていた。

 なら、何故ファスティアが気付かなかったのかというと?

 城の頃にいた時に比べて筋肉がビルドアップされて、まるで炭坑で働く工事作業員と思う位に逞しい姿になっていた。

 午前中に雪掻きをし、午後からは仲間達と飯を共にする…

 より多くの収入を得る為には、労働もそれなりにこなさなければならない為に…

 まずは船代を稼ぐ前に、良く食べて身体を作る事を優先し始めていたのだった。

 その為…毎日同じ生活を送って来た為に、カリオスの見た目は大幅に変わっていたので、ファスティアはその人物を見てもカリオスとは気付かなかった。

 「え? あれがカリオスなの⁉︎」

 てっきり、未だにヒョロモヤシだとばかり思っていた。

 「船代の方は…まだ目標金額に達してはいなさそうね?」

 これなら心配は無いだろう。

 私はカリオスを一旦保留にして、次はヴァッシュの方を確認する為に無人島の方を確認する事にした。

 …ところが、ヴァッシュは無人島のどの場所を見ても発見する事が出来なかった。

 「船は破壊したし、無人島に流れ着いた木材も全て破壊したはずなのに…?」

 無人島から大陸に向かっていくルートで、立ち寄れそうな島を探してみた。

 小船で移動出来る範囲では、無人島からそれ程遠くには行けないと思っていたけど…?

 思ったよりも離れた場所でヴァッシュを発見する事が出来た…んだけど?

 掘立て小屋の中にヴァッシュを発見した…までは良かったんだけど、何やら紙を細く巻いた物に火を付けて煙を吸っているヴァッシュの姿があった。

 「あへ~あへあへ~~~あっへあへ~~~」

 何というか…まともな言語を話していなかった。

 目も虚で、口からは涎を垂らしながら快楽の中に身を置いている様な感じだった。

 「あれは…違法薬物の麻薬草かしら?」

 カリオスの様にヴァッシュは人のいる場所に送っていた訳では無い。

 これが周りに人がいる状態だったら、禁止薬物なんかに手を出す事はなかったと思うけど、人が居ないとこうも変わる物なのかと思った。

 私は小屋から畑の方に目を向けてから、マーキングロッドで畑にセットしてから麻薬草を火魔法で燃やし始めた。

 ヴァッシュの言動からすれば、これ以上…麻薬草を使用していたら本当に引き返せない状態になってしまう。

 まぁ、別にヴァッシュを大陸に向かわせないという理由なら、このまま放置していても良いんだけど…流石にあんな姿を見るのは忍びなかった。

 すると、麻薬草が燃えているのを察したヴァッシュが小屋から出てくると、勢い良く見えている麻薬草を見て嘆いた。

 そして魔法を発動させて消火しようとしているみたいだったが、麻薬草を吸引し続けていた結果…正常な判断が付かずに魔法を発動する事はなかった。

 このまま放っておけば、麻薬草は全て燃え尽きる…が、ヴァッシュはまだ何かをやろうとしていたので、土魔法で土を身体を固めてから穴に顔だけ出して埋めた。

 こうすれば、消火作業の妨げにもなるし…何より中毒も解消出来るかも知れない。

 そして畑全ての麻薬草が燃え尽きると、ヴァッシュは大泣きしていた。

 私は土魔法を解除すると、ヴァッシュは穴から這い出て来て畑に向かって土を掬い上げた…が、麻薬草は炭になっていて、風が吹いて飛ばされて行った。

 これで全て方がついた…と思っていたら、ヴァッシュは収納魔法からストックした麻薬草を取り出して、また紙に巻いて吸引し始めた。

 「収納魔法の中にも保管してあったのね…」

 流石に他人の収納魔法の中身の物を破壊する方法は無い。

 それに…どうせ多く収納はしていないだろうし、今ある分が終わればもう無いはず?

 始めは無人島に連れ戻そうかとも考えたけど、今の状態のヴァッシュを見ていると…その必要性も感じなかった。

 なので、放置する事にした。

 「麻薬草が無くなり、身体の中にある中毒が抜ければ…」

 だけど、ファスティアの見通しは甘かった。

 それから数日後…

 まさかヴァッシュがあんな行動に出るとは、予想も付かなかった。
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