【完結】全てを後悔しても、もう遅いですのよ。

アノマロカリス

文字の大きさ
上 下
40 / 63

第三十八話 一方その頃…(カリオス編)

しおりを挟む
 一方その頃…ノースファティルガルドに飛ばされたカリオスはというと?

 冒険者ギルドに登録してカードを発行された…が、最低ランクの依頼ではとても船に乗れる様な金額が稼げるわけでは無く、更には依頼料も少なかった。

 その金額ではせいぜい安いボロ宿屋に一晩泊まれるだけの賃金しか稼げずに、資金稼ぎの方も難航していた。

 更に言うと…カリオスは働いた事がない。

 仮にも王族で王子だった為に、平民の様に毎日汗水を垂らして労働をする事はなかった。

 キツイ仕事もレイラに丸投げで…まぁ、レイラがいなくなった後は書類整理をしなければならなかった為に面倒ながらも愚痴をこぼしながら何とかやっていたが…?

 冒険者ギルドで稼ぐ場合は、当然デスクワークなどは無く、身体を使ってクタクタになるまで働くしかなかった…が、それに見合う金額が貰えないカリオスは不貞腐れていた。

 ノースファティルガルドは現在、寒冷期の為に街の外には出られない。

 街の中は魔道具による結界で外ほど雪は抑えられていると言っても、全く降っていない訳ではない。

 外に出られない場合の仕事は、主に雪掻きと屋根の雪下ろしがメインとなる。

 ※街の外の積雪量が5m位として、街中は2m~2.5m位です。

 工事現場で重機が無い状態での土運びの様に、雪掻きもそれに近い仕事だった。

 「何で俺が…」

 カリオスは仕事をしながら愚痴をこぼしていた。

 雪掻きは大した金額にはならない。

 …が、この仕事に携わると宿代が安くなったり、料理が格安で得られるからだった。

 そんなカリオスが最初に雪掻き現場に来た時、仕事は二種類あった。

 1つは屋根の雪下ろしで、もう1つは屋根から落とされた雪を運ぶという物だった。

 面倒な事が嫌いなカリオスは、下ろされた雪を運ぶという様な重労働は避けたいと思い…屋根の雪下ろしを選択した。

 どちらも大して変わらないと思うのだが、ベテランが軽々と雪下ろしをしているのを見て、そちらの方が楽だと思ったからだった。

 だが実際にやってみると、雪は重くて軽々と出来る訳もなく、更に屋根は滑り易く…油断して足元を掬われたカリオスは、屋根から雪と一緒に落ちたのだった。

 どの家の高さも2階建なのでそれほど高くは無いし、落ちても雪がクッションになって大した怪我は無い。

 …筈なんだけど、カリオスは屋根から落ちる時の恐怖感で屋根に上がるのを拒み、雪運びを選択する以外選びようがなかった。

 雪運び班は2つに分かれている。

 雪をスコップでソリに積み上げていく者と、積み上げた雪をソリで運ぶ者だった。

 他の者達は雪掻きは慣れている為に、簡単そうにやってはいる。

 カリオスはまたも…スコップでソリに積み上げる仕事は重労働と感じ、ベテランがソリで軽々と運んでいる姿を見て…

 ところが、山の様に雪が積まれているソリが簡単に動く訳がない。

 ベテラン達はこの仕事をやり慣れているから簡単に見えるだけであって、仕事をした事がないカリオスの体力は…平均の成人男性に比べるとヘナチョコだった。

 その為に、ソリを動かそうとしてもビクともせずに…雪掻きの監督に怒られて、スコップ要員に回されたのだった。

 そして暫くやっていると…?

 「俺はこんな仕事はやりたくは無い‼︎」

 「なら屋根に上がるか?」

 「いや、屋根は…」

 「お前はソリでの運搬は全く役に立たないからな! だとしたら、やる事はコレしかないだろ?」

 「俺はレントグレマール王国の王子だぞ‼︎」

 「自国の王子なら権力があっても、他国の王子にそんな権力はねぇぞ…って、そもそも本当に王子なら…こんな仕事はしてねぇだろうし、下手な嘘をつくんじゃねぇよ‼︎」

 監督にそう言われてカリオスは、一切言い返す事ができなかった。

 そして暫くして…今日の分の雪掻きの仕事は終わった。

 カリオスはやっと過酷な労働から解放される…と思って、監督から賃金を得るのだが、明らかに皆より少ない事に抗議をした。

 「この仕事は参加すれば報酬がもらえる訳ではなく、与えられたノルマを達成して報酬を得られんだ! 与えられたノルマをこなせられない奴が、ノルマを達成した者と報酬が同じわけがないだろ!」

 「くっ…」

 その日のカリオスは大人しく報酬を受け取って焚き火の元に向かった。

 何故なら…戦いを挑んでも勝てそうな見込みがなかったからだった。

 ヒョロもやしのカリオスが、ハルク並みに鍛えられた監督に敵う訳がないからだった。

 今回の報酬では、とてもではないが格安とは言え宿に泊まれる程の金額は稼いでいなかったので、焚き火で暖を取るしか無かった。

 果たしてカリオスは、こんな仕事をしていて…船代を稼げるのだろうか?
しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

「聖女はもう用済み」と言って私を追放した国は、今や崩壊寸前です。私が戻れば危機を救えるようですが、私はもう、二度と国には戻りません【完結】

小平ニコ
ファンタジー
聖女として、ずっと国の平和を守ってきたラスティーナ。だがある日、婚約者であるウルナイト王子に、「聖女とか、そういうのもういいんで、国から出てってもらえます?」と言われ、国を追放される。 これからは、ウルナイト王子が召喚術で呼び出した『魔獣』が国の守護をするので、ラスティーナはもう用済みとのことらしい。王も、重臣たちも、国民すらも、嘲りの笑みを浮かべるばかりで、誰もラスティーナを庇ってはくれなかった。 失意の中、ラスティーナは国を去り、隣国に移り住む。 無慈悲に追放されたことで、しばらくは人間不信気味だったラスティーナだが、優しい人たちと出会い、現在は、平凡ながらも幸せな日々を過ごしていた。 そんなある日のこと。 ラスティーナは新聞の記事で、自分を追放した国が崩壊寸前であることを知る。 『自分が戻れば国を救えるかもしれない』と思うラスティーナだったが、新聞に書いてあった『ある情報』を読んだことで、国を救いたいという気持ちは、一気に無くなってしまう。 そしてラスティーナは、決別の言葉を、ハッキリと口にするのだった……

毒家族から逃亡、のち側妃

チャイムン
恋愛
四歳下の妹ばかり可愛がる両親に「あなたにかけるお金はないから働きなさい」 十二歳で告げられたベルナデットは、自立と家族からの脱却を夢見る。 まずは王立学院に奨学生として入学して、文官を目指す。 夢は自分で叶えなきゃ。 ところが妹への縁談話がきっかけで、バシュロ第一王子が動き出す。

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

【完結24万pt感謝】子息の廃嫡? そんなことは家でやれ! 国には関係ないぞ!

宇水涼麻
ファンタジー
貴族達が会する場で、四人の青年が高らかに婚約解消を宣った。 そこに国王陛下が登場し、有無を言わさずそれを認めた。 慌てて否定した青年たちの親に、国王陛下は騒ぎを起こした責任として罰金を課した。その金額があまりに高額で、親たちは青年たちの廃嫡することで免れようとする。 貴族家として、これまで後継者として育ててきた者を廃嫡するのは大変な決断である。 しかし、国王陛下はそれを意味なしと袖にした。それは今回の集会に理由がある。 〰️ 〰️ 〰️ 中世ヨーロッパ風の婚約破棄物語です。 完結しました。いつもありがとうございます!

【完結】「神様、辞めました〜竜神の愛し子に冤罪を着せ投獄するような人間なんてもう知らない」

まほりろ
恋愛
王太子アビー・シュトースと聖女カーラ・ノルデン公爵令嬢の結婚式当日。二人が教会での誓いの儀式を終え、教会の扉を開け外に一歩踏み出したとき、国中の壁や窓に不吉な文字が浮かび上がった。 【本日付けで神を辞めることにした】 フラワーシャワーを巻き王太子と王太子妃の結婚を祝おうとしていた参列者は、突然現れた文字に驚きを隠せず固まっている。 国境に壁を築きモンスターの侵入を防ぎ、結界を張り国内にいるモンスターは弱体化させ、雨を降らせ大地を潤し、土地を豊かにし豊作をもたらし、人間の体を強化し、生活が便利になるように魔法の力を授けた、竜神ウィルペアトが消えた。 人々は三カ月前に冤罪を着せ、|罵詈雑言《ばりぞうごん》を浴びせ、石を投げつけ投獄した少女が、本物の【竜の愛し子】だと分かり|戦慄《せんりつ》した。 「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」 アルファポリスに先行投稿しています。 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 2021/12/13、HOTランキング3位、12/14総合ランキング4位、恋愛3位に入りました! ありがとうございます!

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

【完結】お飾り妃〜寵愛は聖女様のモノ〜

恋愛
今日、私はお飾りの妃となります。 ※実際の慣習等とは異なる場合があり、あくまでこの世界観での要素もございますので御了承ください。

処理中です...