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第三十八話 一方その頃…(カリオス編)
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一方その頃…ノースファティルガルドに飛ばされたカリオスはというと?
冒険者ギルドに登録してカードを発行された…が、最低ランクの依頼ではとても船に乗れる様な金額が稼げるわけでは無く、更には依頼料も少なかった。
その金額ではせいぜい安いボロ宿屋に一晩泊まれるだけの賃金しか稼げずに、資金稼ぎの方も難航していた。
更に言うと…カリオスは働いた事がない。
仮にも王族で王子だった為に、平民の様に毎日汗水を垂らして労働をする事はなかった。
キツイ仕事もレイラに丸投げで…まぁ、レイラがいなくなった後は書類整理をしなければならなかった為に面倒ながらも愚痴をこぼしながら何とかやっていたが…?
冒険者ギルドで稼ぐ場合は、当然デスクワークなどは無く、身体を使ってクタクタになるまで働くしかなかった…が、それに見合う金額が貰えないカリオスは不貞腐れていた。
ノースファティルガルドは現在、寒冷期の為に街の外には出られない。
街の中は魔道具による結界で外ほど雪は抑えられていると言っても、全く降っていない訳ではない。
外に出られない場合の仕事は、主に雪掻きと屋根の雪下ろしがメインとなる。
※街の外の積雪量が5m位として、街中は2m~2.5m位です。
工事現場で重機が無い状態での土運びの様に、雪掻きもそれに近い仕事だった。
「何で俺が…」
カリオスは仕事をしながら愚痴をこぼしていた。
雪掻きは大した金額にはならない。
…が、この仕事に携わると宿代が安くなったり、料理が格安で得られるからだった。
そんなカリオスが最初に雪掻き現場に来た時、仕事は二種類あった。
1つは屋根の雪下ろしで、もう1つは屋根から落とされた雪を運ぶという物だった。
面倒な事が嫌いなカリオスは、下ろされた雪を運ぶという様な重労働は避けたいと思い…屋根の雪下ろしを選択した。
どちらも大して変わらないと思うのだが、ベテランが軽々と雪下ろしをしているのを見て、そちらの方が楽だと思ったからだった。
だが実際にやってみると、雪は重くて軽々と出来る訳もなく、更に屋根は滑り易く…油断して足元を掬われたカリオスは、屋根から雪と一緒に落ちたのだった。
どの家の高さも2階建なのでそれほど高くは無いし、落ちても雪がクッションになって大した怪我は無い。
…筈なんだけど、カリオスは屋根から落ちる時の恐怖感で屋根に上がるのを拒み、雪運びを選択する以外選びようがなかった。
雪運び班は2つに分かれている。
雪をスコップでソリに積み上げていく者と、積み上げた雪をソリで運ぶ者だった。
他の者達は雪掻きは慣れている為に、簡単そうにやってはいる。
カリオスはまたも…スコップでソリに積み上げる仕事は重労働と感じ、ベテランがソリで軽々と運んでいる姿を見て…
ところが、山の様に雪が積まれているソリが簡単に動く訳がない。
ベテラン達はこの仕事をやり慣れているから簡単に見えるだけであって、仕事をした事がないカリオスの体力は…平均の成人男性に比べるとヘナチョコだった。
その為に、ソリを動かそうとしてもビクともせずに…雪掻きの監督に怒られて、スコップ要員に回されたのだった。
そして暫くやっていると…?
「俺はこんな仕事はやりたくは無い‼︎」
「なら屋根に上がるか?」
「いや、屋根は…」
「お前はソリでの運搬は全く役に立たないからな! だとしたら、やる事はコレしかないだろ?」
「俺はレントグレマール王国の王子だぞ‼︎」
「自国の王子なら権力があっても、他国の王子にそんな権力はねぇぞ…って、そもそも本当に王子なら…こんな仕事はしてねぇだろうし、下手な嘘をつくんじゃねぇよ‼︎」
監督にそう言われてカリオスは、一切言い返す事ができなかった。
そして暫くして…今日の分の雪掻きの仕事は終わった。
カリオスはやっと過酷な労働から解放される…と思って、監督から賃金を得るのだが、明らかに皆より少ない事に抗議をした。
「この仕事は参加すれば報酬がもらえる訳ではなく、与えられたノルマを達成して報酬を得られんだ! 与えられたノルマをこなせられない奴が、ノルマを達成した者と報酬が同じわけがないだろ!」
「くっ…」
その日のカリオスは大人しく報酬を受け取って焚き火の元に向かった。
何故なら…戦いを挑んでも勝てそうな見込みがなかったからだった。
ヒョロもやしのカリオスが、ハルク並みに鍛えられた監督に敵う訳がないからだった。
今回の報酬では、とてもではないが格安とは言え宿に泊まれる程の金額は稼いでいなかったので、焚き火で暖を取るしか無かった。
果たしてカリオスは、こんな仕事をしていて…船代を稼げるのだろうか?
冒険者ギルドに登録してカードを発行された…が、最低ランクの依頼ではとても船に乗れる様な金額が稼げるわけでは無く、更には依頼料も少なかった。
その金額ではせいぜい安いボロ宿屋に一晩泊まれるだけの賃金しか稼げずに、資金稼ぎの方も難航していた。
更に言うと…カリオスは働いた事がない。
仮にも王族で王子だった為に、平民の様に毎日汗水を垂らして労働をする事はなかった。
キツイ仕事もレイラに丸投げで…まぁ、レイラがいなくなった後は書類整理をしなければならなかった為に面倒ながらも愚痴をこぼしながら何とかやっていたが…?
冒険者ギルドで稼ぐ場合は、当然デスクワークなどは無く、身体を使ってクタクタになるまで働くしかなかった…が、それに見合う金額が貰えないカリオスは不貞腐れていた。
ノースファティルガルドは現在、寒冷期の為に街の外には出られない。
街の中は魔道具による結界で外ほど雪は抑えられていると言っても、全く降っていない訳ではない。
外に出られない場合の仕事は、主に雪掻きと屋根の雪下ろしがメインとなる。
※街の外の積雪量が5m位として、街中は2m~2.5m位です。
工事現場で重機が無い状態での土運びの様に、雪掻きもそれに近い仕事だった。
「何で俺が…」
カリオスは仕事をしながら愚痴をこぼしていた。
雪掻きは大した金額にはならない。
…が、この仕事に携わると宿代が安くなったり、料理が格安で得られるからだった。
そんなカリオスが最初に雪掻き現場に来た時、仕事は二種類あった。
1つは屋根の雪下ろしで、もう1つは屋根から落とされた雪を運ぶという物だった。
面倒な事が嫌いなカリオスは、下ろされた雪を運ぶという様な重労働は避けたいと思い…屋根の雪下ろしを選択した。
どちらも大して変わらないと思うのだが、ベテランが軽々と雪下ろしをしているのを見て、そちらの方が楽だと思ったからだった。
だが実際にやってみると、雪は重くて軽々と出来る訳もなく、更に屋根は滑り易く…油断して足元を掬われたカリオスは、屋根から雪と一緒に落ちたのだった。
どの家の高さも2階建なのでそれほど高くは無いし、落ちても雪がクッションになって大した怪我は無い。
…筈なんだけど、カリオスは屋根から落ちる時の恐怖感で屋根に上がるのを拒み、雪運びを選択する以外選びようがなかった。
雪運び班は2つに分かれている。
雪をスコップでソリに積み上げていく者と、積み上げた雪をソリで運ぶ者だった。
他の者達は雪掻きは慣れている為に、簡単そうにやってはいる。
カリオスはまたも…スコップでソリに積み上げる仕事は重労働と感じ、ベテランがソリで軽々と運んでいる姿を見て…
ところが、山の様に雪が積まれているソリが簡単に動く訳がない。
ベテラン達はこの仕事をやり慣れているから簡単に見えるだけであって、仕事をした事がないカリオスの体力は…平均の成人男性に比べるとヘナチョコだった。
その為に、ソリを動かそうとしてもビクともせずに…雪掻きの監督に怒られて、スコップ要員に回されたのだった。
そして暫くやっていると…?
「俺はこんな仕事はやりたくは無い‼︎」
「なら屋根に上がるか?」
「いや、屋根は…」
「お前はソリでの運搬は全く役に立たないからな! だとしたら、やる事はコレしかないだろ?」
「俺はレントグレマール王国の王子だぞ‼︎」
「自国の王子なら権力があっても、他国の王子にそんな権力はねぇぞ…って、そもそも本当に王子なら…こんな仕事はしてねぇだろうし、下手な嘘をつくんじゃねぇよ‼︎」
監督にそう言われてカリオスは、一切言い返す事ができなかった。
そして暫くして…今日の分の雪掻きの仕事は終わった。
カリオスはやっと過酷な労働から解放される…と思って、監督から賃金を得るのだが、明らかに皆より少ない事に抗議をした。
「この仕事は参加すれば報酬がもらえる訳ではなく、与えられたノルマを達成して報酬を得られんだ! 与えられたノルマをこなせられない奴が、ノルマを達成した者と報酬が同じわけがないだろ!」
「くっ…」
その日のカリオスは大人しく報酬を受け取って焚き火の元に向かった。
何故なら…戦いを挑んでも勝てそうな見込みがなかったからだった。
ヒョロもやしのカリオスが、ハルク並みに鍛えられた監督に敵う訳がないからだった。
今回の報酬では、とてもではないが格安とは言え宿に泊まれる程の金額は稼いでいなかったので、焚き火で暖を取るしか無かった。
果たしてカリオスは、こんな仕事をしていて…船代を稼げるのだろうか?
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