上 下
35 / 63

第三十三話 脱出?

しおりを挟む
 ノースファティルガルドから遠く離れた無人島では…

 ここ数日間は台風の被害に遭い、ヴァッシュ殿下は瀕死に近い状態を送っていた。

 …というのも、この無人島には遮るものがない為に雨に打たれ捲る。

 穴を掘って回避するも、どしゃ降りの雨の所為で穴に水が溜まり溺れそうになる。

 更に元々気温があまり高く無い為に、台風時は気温が下がって低体温症になりかけていた。

 なので、台風が終わった後に瀕死に近い状態というのは、そういう意味だった。

 だけど、全て悲観する訳ではない。

 嬉しい事もあったのだった。

 台風のおかげなのか…大量の流木が無人島に流れ着いた事だった。

 ヴァッシュ殿下は、その流木を木の皮で繋ぎ合わせて…粗末なイカダを完成させたのだった。

 そして余った流木をナイフで削ってオールを作り、魔法が使える場所まで漕いで移動し、そこからは風魔法で大陸に進路を取って移動し始めたのだった。

 …ただし、誤算もあった。

 ヴァッシュ殿下がいた無人島は、地球で言うなら…南太平洋の中心にある無人島で、周りは果てしなく広がる地平線でこれと言った目印になる島が無い。

 なので、風魔法を使って大陸を目指して進んでいる…と思っているのだが、現在地を把握していない為に何処だか分からない。

 ヴァッシュ殿下の魔法により、魔物関係は一切近寄らない術を船に施している為に襲われる心配はないのだけれど…?

 イカリみたいな固定出来るものが無いために、寝ている間に波に流されてしまい…正確な位置を知るためには、夜の星を頼りにするしか無かった。

 だけど、方向を示す為に船に矢印を付けるが…流されている間に方向も変わる為に、夜になるまでちゃんとした方向が分からずに何度も苦戦を強いられた。

 何日間か海を漂っていると、遠くに島の形が見えたので…?

 ヴァッシュ殿下は風魔法最大出力で島に向けて移動をし、島の砂浜に到着する事が出来た。

 無人島では獣も虫もない、海藻を食うだけの食生活をやっと回避出来ると思って上陸するが…見覚えのある木々が並んでいた。

 …そう、ヴァッシュ殿下は元の無人島に戻って来てしまった。

 何故、こんな事になってしまったのかというと…?

 無人島周辺の海域は、穏やかな流れだが島に向かって海流が流れている。

 なので、その海域を脱出出来ない限りどんなに進んでも、無人島に戻る様になっていた。

 ヴァッシュ殿下は、一気に絶望感が襲って来た。

 「こうなったら…海域を抜けるまでは寝ることは許されないな!」

 ヴァッシュ殿下は果たして、無事に海域を抜ける事は出来るのだろうか?
しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~

白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。 王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。 彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。 #表紙絵は、もふ様に描いていただきました。 #エブリスタにて連載しました。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

婚約破棄から聖女~今さら戻れと言われても後の祭りです

青の雀
恋愛
第1話 婚約破棄された伯爵令嬢は、領地に帰り聖女の力を発揮する。聖女を嫁に欲しい破棄した侯爵、王家が縁談を申し込むも拒否される。地団太を踏むも後の祭りです。

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

役立たずの私はいなくなります。どうぞお幸せに

Na20
恋愛
夫にも息子にも義母にも役立たずと言われる私。 それなら私はいなくなってもいいですよね? どうぞみなさんお幸せに。

お飾りの聖女は王太子に婚約破棄されて都を出ることにしました。

高山奥地
ファンタジー
大聖女の子孫、カミリヤは神聖力のないお飾りの聖女と呼ばれていた。ある日婚約者の王太子に婚約破棄を告げられて……。

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです

秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。 そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。 いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが── 他サイト様でも掲載しております。

処理中です...