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最終章・ノワール、貴女は幸せになれましたか?

第十三話 戦いの前の束の間の休息にて…

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 「ノワールに聞きたいのだが、お前の前世での話を全て信じる事にした。 だから可能な限り話してくれないか?」

 魔導都市グローディアが見えている場所の手前で、私達はキャンプしていると…突然アルマが言ってきた。

 「急にどうしたの?」
 「勇者ルベインの話もそうだったが…ノワールが関わっていた時代には、有名な騎士や英雄の話を散々聞いてきたけど、それが偽りだったんじゃ無いかと思ってきてな…」
 「ん~? 例えば誰の話?」
 「騎士ノワールの相方と言われた、英雄ファシウスなんだけど…」
 「ファシウスが英雄? それに相方って…私の手柄を自分が活躍した様な話をして近衛騎士に抜擢されたファシウスが英雄って…」
 「やっぱりそうなのか?…歴戦の指揮官のグレイヴハート卿は?」
 「前線に出る事なくて、後ろで命令しているだけだったわ! 作戦も碌なものが無くて、常に敗戦ばかりしいていたわ!」
 「剣聖ジュダルは?」
 「ジュダル? あの泣き虫ジュダルが後世では剣聖なんて呼ばれていたの? 魔物との戦いで走り出した時にすっ転んだ拍子に手放した武器が敵の指揮官の急所を射抜いただけなのに?」
 「誰も倒せなかった敵の将を討ち取ったと書いてあったが…」
 「それは本当なんだけど、真実はそんな感じだったけど…もしかして勇猛果敢に立ち回ったとでも書かれていたの?」
 
 アルマは両手で顔を覆っていた。
 アルマにとって、憧れていた歴戦の英雄の活躍していたという話は音を立てて崩れたみたいだった。

 「私も良いですか、お姉様?」
 「ファティマも気になる人でもいるの?」
 「現・妖精王のフェアリーダムナド卿です。 魔女の時代に、ノワール姉様と肩を並べていたと…」
 「誰それ? 全く知らない人ね。 妖精王って言われるくらいだから、エルフよね?」
 「はい、エルフです。 エルフの世界では、人間のノワールが唯一肩を並べられる存在だったと…」
 「全く知らない人だわ! 私と肩を並べられる人っていなかったからなぁ? それにエルフの研究員っていなかったし…妖精族で私の弟子にあたる人物だと、ハーフウットのファルくらいかな?」

 私の話を聞いて、ファティマは1冊の本を捨てたのだった。
 拾い上げてから筆者の絵を見ると、エルフの学者らしき男が描かれていたが…全く見に覚えがなかった。

 「やっぱり、全然記憶にない。 私の死後に知らない間に勝手にライバルとか、肩を並べていたと言っているだけなんでしょうねぇ。」
 「そういえば、父様とも初めて会った時は仲が悪かったって…」
 「そうねぇ…意見の食い違いで何度か衝突していたなぁ。 最後には和解したけど…」
 
 エルフって妙に気位が高いから、説得するのに骨が折れたのよねぇ。
 こっちが少し弱みを見せてから、会話に棘が無くなったんだけど…

 「ノワァ! わーもいいかぁ~?」
 「チヨも気になる人がいるの?」
 「気になる人というか…魔王ヴェルトーザについて…」
 「魔王ヴェルトーザかぁ…直接会った事は無かったけど、かなりの威圧感はあったね。 私が張っていた結界を何度か破壊されたから…」
 「やっぱり、強い方だったの?」
 「その辺は魔王というだけの事はあったね。 下手な魔族よりよっぽど手ごわかったし…」
 
 一応前魔王の威圧感を知っているから、今度の魔王アンノウンもどの程度の物かが図れると思う。
 
 「大サービスよ! 今だったら何度も答えてあげるわ!」
 「いや、私は良い…これ以上聞くと、私の中の憧れの英雄像が崩れていくから…」
 「私も良いですわ、これ以上姉様の話を聞くと…私室にある本を全部も燃やしたくなるので。」
 「わーもないな。」
 
 あらら…?
 他にも色々あるんだけどね…過去の英雄達の黒歴史。
 でも、本人たちが聞きたくないと言うなら、無理に話さなくても良いか。

 「じゃあ、今日はもうこれ位にして…明日に備えて寝ましょう!」
 「あぁ、わかった!」
 「おやすみなさい、姉様!」
 「良き夢を!」

 私は3人が寝息を立てて眠っていることを確認すると、静かにそっとテントを出た。
 そして月明かりの下で月の光を浴びながら思いにふけた。

 「今度の戦いで死ぬ事になれば、もうこの世界で転生は叶わなくなる…最後にこんな素晴らしい仲間との思い出が出来て良かったわ!」

 私は密かに覚悟を決めていた。
 そしてその発言通りになる…かは、明日の決戦で決まるのだった。
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