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最終章・ノワール、貴女は幸せになれましたか?
第十二話 勇者の血を引く者
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『貴様がノワールだな‼︎』
「そうですが、貴方はルベイン?」
『俺の名はヴァレード! ヴァレドリア帝国で皇帝の一族で勇者の血を引く者だ‼︎』
「勇者の…って、貴方…あのクソルベインに良く似ているわね⁉」
『我が祖先をクソ呼ばわりするか⁉︎』
だって…本当にクソなんだもん、勇者ルベインって…
聖女時代、私とルベインは幼馴染だった。
16歳の時にルベインは勇者の紋章が浮かび…私には聖女の聖印が浮かび上がった。
そしてルベインは勇者として城に呼ばれ…私はメルキサス大神殿に呼ばれたのだった。
その後…魔王ヴェルトーザに対抗出来る聖剣を作り出したが、今一歩威力に欠けると言う事で…私の血が聖剣を強くすると言って、ルベインは私に…「世界の為に死んで欲しい。 代わりに俺は一生結婚せずにお前を思う!」と言って私は命を落としてから、ルベインは見事魔王ヴェルトーザを倒した…と、ここまでは良い。
だけどこのルベインは、約束を見事に破り…当時のレヴナンツディール王国の姫君と結婚をして、王になって子孫を遺したと言う。
メイド時代にこの真実を知った時は、タイムマシンが作れるなら作ってから過去に戻って、ルベインをボコボコにしてやりたかったわ!
『勇者は俺1人で事が足りる…世の中に勇者は2人もいらん!』
「貴方は…勇者の血を引くというだけで、別に勇者という訳じゃないでしょ? このまま魔王アンノウンに挑んでもむざむざ殺されるだけなんだから、大人しく帰れば?」
『ふっ…俺には祖先の勇者から受け継いだ、この聖剣バルムンクがある!』
「あれ? それって…」
ヴァレードが抜き放った剣は、確かに聖女時代に見た聖剣で間違いない。
だけど、聖剣の名前はバルムンクという名前じゃなかったし、なにより…あの剣を見ていると無性に腹が立った。
それもその筈…ただの剣が私の血によって聖剣になった物なのだから…
私は聖女時代にあの剣で体を貫かれて殺されたのだから、忘れる訳がない!
「アルマ、ファティマ、チヨ…絶対に手を出さないでね!」
『仲間に手伝って貰わなくても良いのか? 貴様だけだと…』
「御託は聞き飽きたから、さっさと掛かって来なさい!」
『後悔するなよ‼』
ヴァレードは剣を振り翳して斬り込んで来た…が、魔王ヴェルトーザが支配していた世界とは違い…平和な世の中で鍛えられた剣技は、当時の剣士に比べるとかなり弱い。
私はヴァレードの剣を叩き落としてから、ヴァレードに風魔法のストームを放つと…聖剣から遠ざけた。
そしてその忌々しい聖剣を、ガンドムが作ってくれた聖剣で粉々に砕いたのだった。
『貴様…我が聖剣バルムンクを⁉』
「こんなもの…無い方がこの世の為よ! これで、半分は清々したわ!」
『貴様…その聖剣バルムンクは、ヴァレドリア帝国の宝なのだぞ!』
「知らないわよ! 国の宝か何かなんてどうでも良いわ! あの忌々しい剣を私に見せなければ、壊される事は無かったんだから、自業自得でしょ!」
ヴァレードは、聖剣を見つめながら項垂れていた。
その姿も、あのクソルベインを彷彿と思い出させてくれる…
半分は清々した!
だけど、もう半分はこのルベインそっくりの男をボコらないと気が済みそうもない!
『ノワール…貴様、覚えていろよ! この屈辱は国に帰ってから…』
「何を言っているの? まさかと思うけど…逃げれると思っているの?」
『は? 貴様は何を…』
「クリスタルチェーンバインド! パラライズ!」
私はヴァレードに拘束魔法と麻痺魔法を放った。
麻痺魔法でも十分だと思うけど、念の為の対策としてだ。
そして倒れて動けなくなったヴァレードに馬乗りになって、私はヴァレードの顔に鉄拳をぶちかました…が?
『所詮は、非力な女の拳だな! 痛くも痒くもないぜ!』
「あ…そう! なら…シャープネスとパワーブースト!」
そして…先ほどの言葉を後悔させるべく、私はヴァレードの顔に連打を浴びせていった。
すると、ヴァレードの顔は段々歪んで行った。
ヴァレードは涙を流しながら許しを乞おうとしていたが、あのルベインそっくりな顔で泣きべそをかいていると高揚感だけが湧き上がってくる感じだった。
『貴様! 無抵抗な人間を一方的に殴っておいて…心が痛むとか、申し訳ないとか思わないのか⁉︎』
「ぜーんぜん! 寧ろ貴方の顔が歪んでいく方が面白くて愉快だわ!」
すると、先程砕いた聖剣の鍔にあった宝石が光り出して…目の前にルベイン本人が浮かび上がって私に言って来た。
《ノワールよ…子孫を痛ぶるのは辞めにしてくれないか?》
「ルベイン! 貴方は人生を全うした筈なのに、何であの時の姿のままなの?」
『貴方が勇者ルベイン! 我が祖先の…⁉︎』
「お前は黙ってて!」
私はヴァレードの腹に突きを入れると、ヴァレードを気絶させた。
その姿を見て、ルベインは慌てた素振りを見せた。
《ノワール…子孫を殺したのか⁉︎》
「気絶させただけよ! 貴方との会話をスムーズにする為には、ヴァレードは邪魔だったから…」
《全くお前は…子供の時から変わらないな!》
「余計なお世話よ! それで…何しに現れたの?」
「お…おい、ノワール…彼が勇者ルベインなのか?」
「アルマ…邪魔しないでと言っておいた筈だけど?」
「だって…魔王ヴェルトーザを倒した勇者様だぞ! その姿を拝謁するなんて…」
「この男はそんな立派な者ではないわ! 貴女もこの男の真実を知れば、呆れ果てるだけよ。 後で教えてあげるから、今は黙っていて!」
「あぁ…分かった!」
私はアルマを黙らせると、ようやくルベインと話をする事ができる。
するとルベインは語り出した。
《俺は、魔王を倒した後に聖剣の宝玉に意識を移して置いたのだ。 ノワールが聖女になる前に俺に話してくれた前世の話が真実なら、いずれは俺の聖剣を見つけ出してくれると思ってな!》
「私は聖女時代に自分を殺した剣なんか見たくもなかったけどね。 とっくに消滅していると思ったから、気にも留めては居なかったわ!」
《だが、こうしてノワールと再び出会う事ができた! 俺の話を聞いて欲しい。》
「私は話す事なんかないから別に良いわ。」
私はそう話した筈なのに、ルベインは関係無しに話し始めた。
子供の頃からこのマイペースな性格は治ってないみたいで、私は呆れ果てるのだった。
《魔王ヴェルトーザを倒した俺は、田舎に帰ってノワールの両親に全てを話した。》
「ふーん。 魔王を倒すのに私の血が必要だったから、私に死んで欲しいとルベインが願った事を?」
《いや…ノワールは、世界を救う為に自らの命を捧げたと…》
「全くの大嘘じゃない! 私は自分が死ぬ事になるなんて思わなかったわよ! 少量の血で十分だった筈なのに、足りなかったら困ると私より力の弱い聖女の言葉を鵜呑みにして私の命を奪っておいて…」
《あの時は…》
「あの時は何よ⁉︎」
本当にこの男は…昔から考え無しで周りに流されるまんまに行動する物だから、良い様に言い含められたのね。
《その後、俺は…生涯を1人で過ごそうとした…》
「筈だったんだけど、王族に言い寄られて王女と結婚したんだよね?」
《あぁ…未来にまた強大な魔王が現れた時の場合の対処に為に、勇者の血筋を残そうとな…》
「ルベインさぁ、貴方の事だから…どうせ自分の事が書かれた本を見ていないでしょう? 面倒臭がって…」
《え? 何か書いてあったのか?》
「書いてあったわよ~私が次の転生したメイドになった時に本で見たけど…過去に遡れる魔法があるのなら、過去世界の貴方に会いに行ってぶち殺したいと思う内容がね…」
《えーっと? なんて書いてあったんだ?》
「ルベイン…王宮での会話は必ず専属の筆者士がいたのを知っていた? その筆者士が書いてあった内容がそのまま本になっていたのよ。」
《俺…何か気に触る様な事を言ったのか⁉︎》
「王女との会話の中でね…王女様が、「貴方が私との結婚を望まないのは、聖女ノワール様に未練があるからでしょうか?」という問いに対して…」
《あれ? 俺はその時になんて答えたんだっけ?》
「覚えてないんだ? その時に勇者ルベインは、「聖女ノワールとはただの幼馴染で、子供の頃からガサツで可愛げが無く、色気も無くて身体も貧相、恋愛対象なんて皆無です! 未練がある? あんな女に対して未練なんかこれっぽっちもありませんよ!」って、書いてあったわよ。 随分好き勝手に言ってくれたものね?」
ルベインはあたふたと焦っている様だった。
そして苦し紛れに言い出した。
《そんな事を言った記憶は無い!》
「王宮の筆者士は、どんな囁いた言葉ですら記憶するのよ。 だから…私が過去に戻って貴方をぶち殺したいという意味が分かってくれたかしら?」
《し…しかし、こうして現に魔王が新たに現れた訳だし、結果的に子孫を遺したのは正解だっただろう?》
「ふふーんw 私に右手にある紋章はな~んだ?」
《そ…それは、勇者の紋章⁉︎ 何でノワールが⁉︎》
「ルベインにいい事を教えてあげる! 勇者ってね…血筋で決まる訳じゃないんだよ~」
《いや…だって、王族から勇者は血筋で現れると…》
「じゃあ、ルベインに聞くけど…魔王ヴェルトーザの前の魔王って、名前知ってる? それを倒した勇者の名前も…貴方の祖先なんだから知らない筈は無いよね?」
魔王ヴェルトーザの前の魔王の名前は…私がこの世界に転生する前の話だ。
1000年以上前の話で、魔王と書かれてはいるが…魔王の名前までは書かれていないし、それを倒した者は人間では無いという話だった。
だから、頭の抜けたルベインが知る筈もない。
「自分の祖先何でしょ? 祖先の勇者の名前と魔王の名前を言ってみなさいよ!」
《・・・・・・・・・・・》
「話がそれだけなら、もう良いわよね?」
《もう…良いとは?》
「我慢していたんだけど…貴方の顔を見ていると、不快で堪らないのよ!」
私は砕いた聖剣の鍔の宝玉に手を触れた。
《ノワール! 何をする⁉︎》
「何って…貴方には二度と会いたく無いから、このまま消滅させようかと思って…」
《止めろ! 俺は後世の世界を子孫と共に見て回りたいと…》
「ダ・メ・よ! 消滅魔法…エクゼキューション!」
《止めろ~~~~~!!!》
こうして、宝玉はおろか…聖剣そのものを消滅させたのだった。
消滅魔法エグゼキューションは、生物には効果が無いが物質を消滅させる魔法である。
魔女時代に廃棄処理や失敗作を良く消していった。
さて…残るはルベインに良く似た子孫のヴァレードだが…?
「久々にルベインに会って…不快と憎しみが増大したわ! 本当なら、ルベインを直にボコりたかったけど…代わりにこっちで我慢するか!」
私はヴァレードに回復魔法を掛けてから…顔が元に戻った状態に一撃を入れた。
そして何度も何度も顔の原形が無くなってから回復させ、また殴るを繰り返していった。
アルマとチヨは引いていて、ファティマは震えていた。
それもその筈、私はヴァレード殴っている間…歓喜な奇声を発しながら殴っていたからだ。
ヴァレードにしてみたら、祖先に顔が似ているというだけのただのとばっちりである。
そして…すっかり気分が晴れた私は、ボコボコになったヴァレードをヴァレドリア帝国に帰還魔法で送り返したのだった。
「あ~~スッキリした!」
「本当にノワールは容赦が無いな…」
「あの顔を見ているとイライラしてねぇ…」
「先程の会話で、お前の事情が分かったから同情はするが…」
「それにしても、勇者ルベインって最低な人だったんですね? 私の持っている物語の人物とは似ても似つきませんね!」
「それは恐らく…売り出す為に色々と修正を加えた作品だからでしょう。 真実はあんな感じよ!」
私は呆れた表情で言った。
そして私達は、再び魔王アンノウンが居る…魔導都市グローディアに向けて歩き始めるのだった。
次回…遂に魔王アンノウンと対峙す事になるのだが…?
「そうですが、貴方はルベイン?」
『俺の名はヴァレード! ヴァレドリア帝国で皇帝の一族で勇者の血を引く者だ‼︎』
「勇者の…って、貴方…あのクソルベインに良く似ているわね⁉」
『我が祖先をクソ呼ばわりするか⁉︎』
だって…本当にクソなんだもん、勇者ルベインって…
聖女時代、私とルベインは幼馴染だった。
16歳の時にルベインは勇者の紋章が浮かび…私には聖女の聖印が浮かび上がった。
そしてルベインは勇者として城に呼ばれ…私はメルキサス大神殿に呼ばれたのだった。
その後…魔王ヴェルトーザに対抗出来る聖剣を作り出したが、今一歩威力に欠けると言う事で…私の血が聖剣を強くすると言って、ルベインは私に…「世界の為に死んで欲しい。 代わりに俺は一生結婚せずにお前を思う!」と言って私は命を落としてから、ルベインは見事魔王ヴェルトーザを倒した…と、ここまでは良い。
だけどこのルベインは、約束を見事に破り…当時のレヴナンツディール王国の姫君と結婚をして、王になって子孫を遺したと言う。
メイド時代にこの真実を知った時は、タイムマシンが作れるなら作ってから過去に戻って、ルベインをボコボコにしてやりたかったわ!
『勇者は俺1人で事が足りる…世の中に勇者は2人もいらん!』
「貴方は…勇者の血を引くというだけで、別に勇者という訳じゃないでしょ? このまま魔王アンノウンに挑んでもむざむざ殺されるだけなんだから、大人しく帰れば?」
『ふっ…俺には祖先の勇者から受け継いだ、この聖剣バルムンクがある!』
「あれ? それって…」
ヴァレードが抜き放った剣は、確かに聖女時代に見た聖剣で間違いない。
だけど、聖剣の名前はバルムンクという名前じゃなかったし、なにより…あの剣を見ていると無性に腹が立った。
それもその筈…ただの剣が私の血によって聖剣になった物なのだから…
私は聖女時代にあの剣で体を貫かれて殺されたのだから、忘れる訳がない!
「アルマ、ファティマ、チヨ…絶対に手を出さないでね!」
『仲間に手伝って貰わなくても良いのか? 貴様だけだと…』
「御託は聞き飽きたから、さっさと掛かって来なさい!」
『後悔するなよ‼』
ヴァレードは剣を振り翳して斬り込んで来た…が、魔王ヴェルトーザが支配していた世界とは違い…平和な世の中で鍛えられた剣技は、当時の剣士に比べるとかなり弱い。
私はヴァレードの剣を叩き落としてから、ヴァレードに風魔法のストームを放つと…聖剣から遠ざけた。
そしてその忌々しい聖剣を、ガンドムが作ってくれた聖剣で粉々に砕いたのだった。
『貴様…我が聖剣バルムンクを⁉』
「こんなもの…無い方がこの世の為よ! これで、半分は清々したわ!」
『貴様…その聖剣バルムンクは、ヴァレドリア帝国の宝なのだぞ!』
「知らないわよ! 国の宝か何かなんてどうでも良いわ! あの忌々しい剣を私に見せなければ、壊される事は無かったんだから、自業自得でしょ!」
ヴァレードは、聖剣を見つめながら項垂れていた。
その姿も、あのクソルベインを彷彿と思い出させてくれる…
半分は清々した!
だけど、もう半分はこのルベインそっくりの男をボコらないと気が済みそうもない!
『ノワール…貴様、覚えていろよ! この屈辱は国に帰ってから…』
「何を言っているの? まさかと思うけど…逃げれると思っているの?」
『は? 貴様は何を…』
「クリスタルチェーンバインド! パラライズ!」
私はヴァレードに拘束魔法と麻痺魔法を放った。
麻痺魔法でも十分だと思うけど、念の為の対策としてだ。
そして倒れて動けなくなったヴァレードに馬乗りになって、私はヴァレードの顔に鉄拳をぶちかました…が?
『所詮は、非力な女の拳だな! 痛くも痒くもないぜ!』
「あ…そう! なら…シャープネスとパワーブースト!」
そして…先ほどの言葉を後悔させるべく、私はヴァレードの顔に連打を浴びせていった。
すると、ヴァレードの顔は段々歪んで行った。
ヴァレードは涙を流しながら許しを乞おうとしていたが、あのルベインそっくりな顔で泣きべそをかいていると高揚感だけが湧き上がってくる感じだった。
『貴様! 無抵抗な人間を一方的に殴っておいて…心が痛むとか、申し訳ないとか思わないのか⁉︎』
「ぜーんぜん! 寧ろ貴方の顔が歪んでいく方が面白くて愉快だわ!」
すると、先程砕いた聖剣の鍔にあった宝石が光り出して…目の前にルベイン本人が浮かび上がって私に言って来た。
《ノワールよ…子孫を痛ぶるのは辞めにしてくれないか?》
「ルベイン! 貴方は人生を全うした筈なのに、何であの時の姿のままなの?」
『貴方が勇者ルベイン! 我が祖先の…⁉︎』
「お前は黙ってて!」
私はヴァレードの腹に突きを入れると、ヴァレードを気絶させた。
その姿を見て、ルベインは慌てた素振りを見せた。
《ノワール…子孫を殺したのか⁉︎》
「気絶させただけよ! 貴方との会話をスムーズにする為には、ヴァレードは邪魔だったから…」
《全くお前は…子供の時から変わらないな!》
「余計なお世話よ! それで…何しに現れたの?」
「お…おい、ノワール…彼が勇者ルベインなのか?」
「アルマ…邪魔しないでと言っておいた筈だけど?」
「だって…魔王ヴェルトーザを倒した勇者様だぞ! その姿を拝謁するなんて…」
「この男はそんな立派な者ではないわ! 貴女もこの男の真実を知れば、呆れ果てるだけよ。 後で教えてあげるから、今は黙っていて!」
「あぁ…分かった!」
私はアルマを黙らせると、ようやくルベインと話をする事ができる。
するとルベインは語り出した。
《俺は、魔王を倒した後に聖剣の宝玉に意識を移して置いたのだ。 ノワールが聖女になる前に俺に話してくれた前世の話が真実なら、いずれは俺の聖剣を見つけ出してくれると思ってな!》
「私は聖女時代に自分を殺した剣なんか見たくもなかったけどね。 とっくに消滅していると思ったから、気にも留めては居なかったわ!」
《だが、こうしてノワールと再び出会う事ができた! 俺の話を聞いて欲しい。》
「私は話す事なんかないから別に良いわ。」
私はそう話した筈なのに、ルベインは関係無しに話し始めた。
子供の頃からこのマイペースな性格は治ってないみたいで、私は呆れ果てるのだった。
《魔王ヴェルトーザを倒した俺は、田舎に帰ってノワールの両親に全てを話した。》
「ふーん。 魔王を倒すのに私の血が必要だったから、私に死んで欲しいとルベインが願った事を?」
《いや…ノワールは、世界を救う為に自らの命を捧げたと…》
「全くの大嘘じゃない! 私は自分が死ぬ事になるなんて思わなかったわよ! 少量の血で十分だった筈なのに、足りなかったら困ると私より力の弱い聖女の言葉を鵜呑みにして私の命を奪っておいて…」
《あの時は…》
「あの時は何よ⁉︎」
本当にこの男は…昔から考え無しで周りに流されるまんまに行動する物だから、良い様に言い含められたのね。
《その後、俺は…生涯を1人で過ごそうとした…》
「筈だったんだけど、王族に言い寄られて王女と結婚したんだよね?」
《あぁ…未来にまた強大な魔王が現れた時の場合の対処に為に、勇者の血筋を残そうとな…》
「ルベインさぁ、貴方の事だから…どうせ自分の事が書かれた本を見ていないでしょう? 面倒臭がって…」
《え? 何か書いてあったのか?》
「書いてあったわよ~私が次の転生したメイドになった時に本で見たけど…過去に遡れる魔法があるのなら、過去世界の貴方に会いに行ってぶち殺したいと思う内容がね…」
《えーっと? なんて書いてあったんだ?》
「ルベイン…王宮での会話は必ず専属の筆者士がいたのを知っていた? その筆者士が書いてあった内容がそのまま本になっていたのよ。」
《俺…何か気に触る様な事を言ったのか⁉︎》
「王女との会話の中でね…王女様が、「貴方が私との結婚を望まないのは、聖女ノワール様に未練があるからでしょうか?」という問いに対して…」
《あれ? 俺はその時になんて答えたんだっけ?》
「覚えてないんだ? その時に勇者ルベインは、「聖女ノワールとはただの幼馴染で、子供の頃からガサツで可愛げが無く、色気も無くて身体も貧相、恋愛対象なんて皆無です! 未練がある? あんな女に対して未練なんかこれっぽっちもありませんよ!」って、書いてあったわよ。 随分好き勝手に言ってくれたものね?」
ルベインはあたふたと焦っている様だった。
そして苦し紛れに言い出した。
《そんな事を言った記憶は無い!》
「王宮の筆者士は、どんな囁いた言葉ですら記憶するのよ。 だから…私が過去に戻って貴方をぶち殺したいという意味が分かってくれたかしら?」
《し…しかし、こうして現に魔王が新たに現れた訳だし、結果的に子孫を遺したのは正解だっただろう?》
「ふふーんw 私に右手にある紋章はな~んだ?」
《そ…それは、勇者の紋章⁉︎ 何でノワールが⁉︎》
「ルベインにいい事を教えてあげる! 勇者ってね…血筋で決まる訳じゃないんだよ~」
《いや…だって、王族から勇者は血筋で現れると…》
「じゃあ、ルベインに聞くけど…魔王ヴェルトーザの前の魔王って、名前知ってる? それを倒した勇者の名前も…貴方の祖先なんだから知らない筈は無いよね?」
魔王ヴェルトーザの前の魔王の名前は…私がこの世界に転生する前の話だ。
1000年以上前の話で、魔王と書かれてはいるが…魔王の名前までは書かれていないし、それを倒した者は人間では無いという話だった。
だから、頭の抜けたルベインが知る筈もない。
「自分の祖先何でしょ? 祖先の勇者の名前と魔王の名前を言ってみなさいよ!」
《・・・・・・・・・・・》
「話がそれだけなら、もう良いわよね?」
《もう…良いとは?》
「我慢していたんだけど…貴方の顔を見ていると、不快で堪らないのよ!」
私は砕いた聖剣の鍔の宝玉に手を触れた。
《ノワール! 何をする⁉︎》
「何って…貴方には二度と会いたく無いから、このまま消滅させようかと思って…」
《止めろ! 俺は後世の世界を子孫と共に見て回りたいと…》
「ダ・メ・よ! 消滅魔法…エクゼキューション!」
《止めろ~~~~~!!!》
こうして、宝玉はおろか…聖剣そのものを消滅させたのだった。
消滅魔法エグゼキューションは、生物には効果が無いが物質を消滅させる魔法である。
魔女時代に廃棄処理や失敗作を良く消していった。
さて…残るはルベインに良く似た子孫のヴァレードだが…?
「久々にルベインに会って…不快と憎しみが増大したわ! 本当なら、ルベインを直にボコりたかったけど…代わりにこっちで我慢するか!」
私はヴァレードに回復魔法を掛けてから…顔が元に戻った状態に一撃を入れた。
そして何度も何度も顔の原形が無くなってから回復させ、また殴るを繰り返していった。
アルマとチヨは引いていて、ファティマは震えていた。
それもその筈、私はヴァレード殴っている間…歓喜な奇声を発しながら殴っていたからだ。
ヴァレードにしてみたら、祖先に顔が似ているというだけのただのとばっちりである。
そして…すっかり気分が晴れた私は、ボコボコになったヴァレードをヴァレドリア帝国に帰還魔法で送り返したのだった。
「あ~~スッキリした!」
「本当にノワールは容赦が無いな…」
「あの顔を見ているとイライラしてねぇ…」
「先程の会話で、お前の事情が分かったから同情はするが…」
「それにしても、勇者ルベインって最低な人だったんですね? 私の持っている物語の人物とは似ても似つきませんね!」
「それは恐らく…売り出す為に色々と修正を加えた作品だからでしょう。 真実はあんな感じよ!」
私は呆れた表情で言った。
そして私達は、再び魔王アンノウンが居る…魔導都市グローディアに向けて歩き始めるのだった。
次回…遂に魔王アンノウンと対峙す事になるのだが…?
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これは、ポーションも作れないし冒険もしない、ささやかな錬金術師の物語である。
彼女は化粧品や石けんを作り、「ささやかな小市民」でいたつもりなのだが、品質の良い化粧品を作る彼女を周囲が放っておく訳はなく――。
毎日15:10に1話ずつ更新です。
この作品は小説家になろう様・カクヨム様・ノベルアッププラス様にも掲載しています。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
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