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第四章 あれ? おかしくないかな?

第八話 愚か者親子の無知な主人

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 「もしや…アクード王子では?」
 「お前は…エルティナス伯爵!」
 
 俺はノワールの家族であるエルティナス伯爵の一家とこの街で再会した。
 
 「アクード王子はここで何を?」
 「あぁ、資金稼ぎだ! これから数か月は街から出られないんでな…少しでも路銀を稼ごうとしている所だ!」
 「アクード王子は働いているのですか?」

 エルティナス伯爵は、アクードをまじまじと見た。
 城での顔だけは良いが、体系は標準だった体が筋肉に覆われて2回り位大きくなっていたのだった。
 
 「アクード王子…? なんだか、逞しくなられましたね?」
 「まぁ、この街で仕事をしながら生活をしていれば…自然とこんな感じの体になるさ!」
 「はぁ、左様ですか? それで王子は今何処に寝泊まりを…?」
 「俺か? 俺は一般の宿で寝泊まりしているよ。 泊まるだけなら安いのでな。 ところで、エルティナス伯爵は何しにノースホイントに来たんだ?」
 「我が娘ノワールがこの地に来ているという話でして…」
 「それは知っている! 俺もこの街に来てから情報を集めていたが、偽名を使っているのか…この街に来た時に書かされる用紙にはノワールの名前は無く、目撃者もいなかったという話だ。」
 「私はジコククーニ王国から旅立つ娘が最後に立ち寄った場所から、有力な手掛かりを掴みましたので…これから冒険者ギルドで依頼をするのです!」
 
 エルティナス伯爵は、冒険者ギルドで何を依頼する気だ?
 何を依頼するかは知らないが、伯爵はこの地の事を知らなさすぎる!

 「ちなみに、ノワールの居場所はどこなんだ?」
 「この大陸の中心地のセルヴィース山という場所の麓にいると…」
 「は? セルヴィース山だと⁉」
 
 エルティナス伯爵は、冒険者ギルドに入り…依頼書に記入をしてから依頼書と報酬の金貨の袋を受付嬢に渡した。
 だが…?

 「この内容で依頼をするのですか?」
 「あぁ、早速張り出してくれ‼」

 エルティナス伯爵は、冒険者依頼の仕方を知っている様だった。
 受付嬢は、依頼のクエストボードに伯爵の依頼書を貼り付けると、冒険者達が見に来だしていた。
 だが…依頼書を読むと、誰もその依頼を受けることはせずに散りだして行った。
 その様子を見て、エルティナス伯爵は…また受付に行って叫んだ。

 「何故だ⁉ 何故、誰も依頼を受けようとする者はいない⁉ 報酬か? 報酬が足りないのか⁉」
 「いえ、そういう理由ではなくてですね…」

 エルティナス伯爵は、バッグから更に金貨の袋を追加した。
 それによって受付嬢が依頼書の方遊学に変更を加えたが、今度は見てもすら貰えなかった。

 「何故だ⁉ 何故、冒険者達は見向きもしないんだ⁉ 金貨500枚だぞ‼」
 
 すると、冒険者の数人がエルティナス伯爵に言った。

 「あんたさぁ…このふざけた内容の依頼者か? 確かに俺達は報酬で動くけどよ…こんな荒唐無稽な話に引っ掛かる馬鹿はこの街にはいねぇよ‼」
 「な…なんだと⁉」
 「セルヴィース山に向かった娘を探し出して…って、この寒さで生きている訳はないし、仮に生きていたとしても魔物に喰われているさ!」
 「それになんだよ、セルヴィース山に住まうドラゴンを倒せって…」
 「その山にいるのはただのドラゴンだろ? 冒険者なら倒せるだろう!」
 
 すると、冒険者ギルド内で大きな笑い声が一斉に響いた。
 そして冒険者の1人が笑いながらエルティナス伯爵に言った。

 「おいおい…おっさんは、どこの田舎から来た? セルヴィース山を収めているのがただのドラゴンだって?」
 「セルヴィース山を収めているのは、幻龍ミドガルズオルムだぞ?」
 「幻龍だかなんだか知らんが、ただのドラゴンだろ?」
 「あーあ…とんだ馬鹿がいたもんだ! 幻龍というのはな、ドラゴンの上位種のエンシェントドラゴンの更に上の神龍と言われる様な存在のドラゴンなんだよ。 世界中の王国の騎士が束になって挑んだって勝てないんだよ! そんなドラゴンに誰が戦いを挑むってんだ?」
 「それで、報酬が金貨500枚だと? 安すぎる上に誰も行く奴なんか居ねぇよ‼」

 すると、エルティナス伯爵は依頼書のドラゴン討伐の欄を消して、ノワールの捜索だけを依頼した。
 だが、冒険者は誰も依頼を受ける事はしなかった。

 「これでどうだ! ドラゴン討伐の欄は消したから、女の捜索で金貨500枚だ!」
 「はぁ…おっさんさぁ、もう少しこの大陸の事を知ってから依頼を出せよ! これからこの大陸は寒冷期に入るんだよ。」
 「ただでさえ歩きにくく、迷いやすい街の外なのに…3か月くらい吹雪いて視界が悪い上に街から出て行くなんて自殺行為なんだよ! 寒冷期が終わったら行っても良いが…どうする?」

 すると、エルティナス伯爵は依頼書を剥がしてから受付に行って依頼をキャンセルした。
 そして冒険者達に笑われながら、怒った表情で冒険者ギルドを出た。
 一連のやり取りを見ていたアクードは何も言えなかった。
 この街に来た時点だったら、同じ事を依頼していたかもしれないからだ。

 「クソッ! クソッ! クソッ! 腰抜け共め…こうなれば、ワシ等だけでも探しに行ってやる!」

 エルティナス伯爵は、宿で休んでいた妻とメルティに声を掛けてから準備をさせた。
 そしてエルティナス伯爵親子は、その日の内にノワールを探す為に街から出て行ったのだ。
 アクードは嫌な予感がしてエルティナス伯爵が泊っている宿を訪れたが、すでにもぬけの殻だった。

 「まさか…寒冷期を甘く見ていないだろうな? こんな時に出て行ったら、死にに行くようなものだぞ!」

 アクードは急いで準備をして、街の出口にいる門番に尋ねた。
 すると、その親子が先程に街から出て行く所を目撃していたのだった。
 アクードは、エルティナス伯爵の親子を追い掛けて行った。
 アクードは、無事にエルティナス伯爵親子に追い付くのだろうか?
 そして、危険と分かっていてもエルティナス伯爵親子を追う理由とは⁉

 「頼む! 見失わないで追い付いてくれよ‼」

 アクードは以前とは変わったのか?
 それとも…?
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