18 / 63
第二章 冒険者ギルド加入試験の章
第八話・最終回 特別待遇…なのか、処置なのか?
しおりを挟む
ギルドカードのランクを確認すると、Cランクからのスタートになっていた。
私はすぐに受付で確認をした。
「あの…冒険者の資格を得た場合はGランクからのスタートで、特別な採取や討伐でもFランクから…では無かったのですか?」
「あぁ、ノワール様のランクですね。 詳しい話はギルドマスターからお話がありますので、奥の訓練場にお越し下さい。」
「訓練場? 普通なら、部屋に案内されるんじゃないのかな?」
私は受付嬢とは別の職員に連れられて、冒険者ギルドの奥の訓練場に案内された。
さっきまでいた試験会場ほどではないけど、訓練場も中々の広さだった。
すると、訓練場には腕を組んだ体格の良い髭面の男と刺されて負傷した試験官、私の最終試験の時に相手をした騎士団副団長のアルマが立っていた。
すると、髭面の男が話しかけて来た。
「お前がノワールだな? 俺はこの冒険者ギルドのギルドマスターをしているグランツだ!」
私は頭を下げた。
やはり、この体格の良い髭面の男がギルドマスターだったのね。
年齢は50歳前後位かしら?
「お前がギルドカードに疑問を抱いた理由は何となくわかる。」
「普通はGランクからのスタートで、特別でもFランクなのに…私だけCランクというのが分からなくて…」
「順を追って説明しよう。 まず、最初の課題の採取のマンドラゴラだが、お前の採って来たマンドラゴラは通常のマンドラゴラと違い、変異種を捕まえて提出してきた。 この時点では、Eランクを渡しても問題ないと思っていたのだが…次のウォーリアコッコの討伐の段階で…しかも11匹も仕留めた挙句、それらを全て回収してから提出して来たのはお前が初めてだったので、Dランクの資格をあげても良いと判断した。」
「それなら私はDランクからでは?」
「最後まで話を聞け!」
「はい…」
ギルドマスターは咳払いをすると、再び話しかけて来た。
「試験官が負傷した代わりにアルマが相手をして…ある程度の実力が分かれば良いという段階の話なのに、お前はアルマを倒してしまった。 冒険者ギルドのBランクの冒険者でも、アルマを倒せる者なんてそれほど多くはないというのに…」
「あはは…」
「それで特別処置として、俺の権限でCランクからのスタートにしようと思っていたのだ…が?」
「が?」
「アルマの話では、お前は魔法が使えるらしいではないか⁉︎」
私はアルマを見た。
内緒にして欲しいと頼んでいた筈なのに、それをアッサリ破るなんて…アルマは私に両手を合わせて謝罪したポーズを取っていた。
「はぁ…バレていたのなら隠す必要もないですね。」
私は試験官に近付いてから、身体に触れてヒールを掛けた。
すると試験官は刺された怪我がすっかり治って感謝をして来た。
そしてギルドマスターは、再び私に尋ねて来た。
「お前の使える魔法は、回復だけでは無いよな?」
「えーっと?」
そう言って誤魔化そうとすると、試験官が話して来た。
「5番の少女が魔法を使用した時に会場にいた者達は驚いた表情をしていたのに対し、8番のお前だけ無表情だったのが気になっていてな…」
「あの段階で皆の表情を確認していたのね…はい、他にも使えます!」
「なら見せてみろ!」
私は溜息を吐いてから右手を上げると、空中に1m程の大きさの火球を100個出現させた。
訓練場にいた者達は、驚愕の表情を浮かべていた。
「な…なな…なんだ、この数は⁉︎」
「足りませんか? なら、もっと増やしましょうか?」
私はもう隠す気も無いので、更に追加でもう100個出現させた。
ギルドマスターのグランツの表情が驚愕から恐怖に変わっていたので、私は右手を下ろすと同時に出現していた火球も消えて行った。
「これは…Cランクでも低過ぎるな! ノワール…お前はAランクからのスタートだ! お前達も異論は無いな?」
「ある訳ないでしょう! Sランクでも良い位ですよ!」
「私も異論を唱えようとは思わない…寧ろ騎士団に欲しい位だ!」
私は追手の事があって、あまり目立ちたくは無かったのだけれど…
決定した事を覆せる程の理由も無いので、仕方なく頷いた。
その後…受付に戻ってからギルドカードが再発行されて、Aランクのギルドカードを受け取った。
私はいきなりの高ランクからのスタートで嬉しい反面、人生設計を崩されたのだった。
【私の人生設計】
低ランクからのスタートで、依頼をこなして徐々にランクを上げてから…かけがえの無い相棒を見つけて…そこから恋愛に発展する!
そう夢見ていた筈だったのに、見事に崩されてしまった。
私はあの馬鹿王子の所為で、王族や貴族と結婚したいなんてもう思わない!
日々の暮らしをしていけるだけの財力で、たまに贅沢をする位で普段は質素に…
いつまでも一緒に幸せに過ごす…そんな生活を夢見ているのよ!
「でも、決まった事に文句を言っていても仕方ないわね。 気持ちを切り替えて行きましょう!」
そう思っていた筈だけど、やはり心の中では割り切れずにいた。
早く運命の相手が現れないかしら…ね?
・・・・・・・・・第二章・完・・・・・・・・・
・・・・・・・・・第三章に続く・・・・・・・・・
私はすぐに受付で確認をした。
「あの…冒険者の資格を得た場合はGランクからのスタートで、特別な採取や討伐でもFランクから…では無かったのですか?」
「あぁ、ノワール様のランクですね。 詳しい話はギルドマスターからお話がありますので、奥の訓練場にお越し下さい。」
「訓練場? 普通なら、部屋に案内されるんじゃないのかな?」
私は受付嬢とは別の職員に連れられて、冒険者ギルドの奥の訓練場に案内された。
さっきまでいた試験会場ほどではないけど、訓練場も中々の広さだった。
すると、訓練場には腕を組んだ体格の良い髭面の男と刺されて負傷した試験官、私の最終試験の時に相手をした騎士団副団長のアルマが立っていた。
すると、髭面の男が話しかけて来た。
「お前がノワールだな? 俺はこの冒険者ギルドのギルドマスターをしているグランツだ!」
私は頭を下げた。
やはり、この体格の良い髭面の男がギルドマスターだったのね。
年齢は50歳前後位かしら?
「お前がギルドカードに疑問を抱いた理由は何となくわかる。」
「普通はGランクからのスタートで、特別でもFランクなのに…私だけCランクというのが分からなくて…」
「順を追って説明しよう。 まず、最初の課題の採取のマンドラゴラだが、お前の採って来たマンドラゴラは通常のマンドラゴラと違い、変異種を捕まえて提出してきた。 この時点では、Eランクを渡しても問題ないと思っていたのだが…次のウォーリアコッコの討伐の段階で…しかも11匹も仕留めた挙句、それらを全て回収してから提出して来たのはお前が初めてだったので、Dランクの資格をあげても良いと判断した。」
「それなら私はDランクからでは?」
「最後まで話を聞け!」
「はい…」
ギルドマスターは咳払いをすると、再び話しかけて来た。
「試験官が負傷した代わりにアルマが相手をして…ある程度の実力が分かれば良いという段階の話なのに、お前はアルマを倒してしまった。 冒険者ギルドのBランクの冒険者でも、アルマを倒せる者なんてそれほど多くはないというのに…」
「あはは…」
「それで特別処置として、俺の権限でCランクからのスタートにしようと思っていたのだ…が?」
「が?」
「アルマの話では、お前は魔法が使えるらしいではないか⁉︎」
私はアルマを見た。
内緒にして欲しいと頼んでいた筈なのに、それをアッサリ破るなんて…アルマは私に両手を合わせて謝罪したポーズを取っていた。
「はぁ…バレていたのなら隠す必要もないですね。」
私は試験官に近付いてから、身体に触れてヒールを掛けた。
すると試験官は刺された怪我がすっかり治って感謝をして来た。
そしてギルドマスターは、再び私に尋ねて来た。
「お前の使える魔法は、回復だけでは無いよな?」
「えーっと?」
そう言って誤魔化そうとすると、試験官が話して来た。
「5番の少女が魔法を使用した時に会場にいた者達は驚いた表情をしていたのに対し、8番のお前だけ無表情だったのが気になっていてな…」
「あの段階で皆の表情を確認していたのね…はい、他にも使えます!」
「なら見せてみろ!」
私は溜息を吐いてから右手を上げると、空中に1m程の大きさの火球を100個出現させた。
訓練場にいた者達は、驚愕の表情を浮かべていた。
「な…なな…なんだ、この数は⁉︎」
「足りませんか? なら、もっと増やしましょうか?」
私はもう隠す気も無いので、更に追加でもう100個出現させた。
ギルドマスターのグランツの表情が驚愕から恐怖に変わっていたので、私は右手を下ろすと同時に出現していた火球も消えて行った。
「これは…Cランクでも低過ぎるな! ノワール…お前はAランクからのスタートだ! お前達も異論は無いな?」
「ある訳ないでしょう! Sランクでも良い位ですよ!」
「私も異論を唱えようとは思わない…寧ろ騎士団に欲しい位だ!」
私は追手の事があって、あまり目立ちたくは無かったのだけれど…
決定した事を覆せる程の理由も無いので、仕方なく頷いた。
その後…受付に戻ってからギルドカードが再発行されて、Aランクのギルドカードを受け取った。
私はいきなりの高ランクからのスタートで嬉しい反面、人生設計を崩されたのだった。
【私の人生設計】
低ランクからのスタートで、依頼をこなして徐々にランクを上げてから…かけがえの無い相棒を見つけて…そこから恋愛に発展する!
そう夢見ていた筈だったのに、見事に崩されてしまった。
私はあの馬鹿王子の所為で、王族や貴族と結婚したいなんてもう思わない!
日々の暮らしをしていけるだけの財力で、たまに贅沢をする位で普段は質素に…
いつまでも一緒に幸せに過ごす…そんな生活を夢見ているのよ!
「でも、決まった事に文句を言っていても仕方ないわね。 気持ちを切り替えて行きましょう!」
そう思っていた筈だけど、やはり心の中では割り切れずにいた。
早く運命の相手が現れないかしら…ね?
・・・・・・・・・第二章・完・・・・・・・・・
・・・・・・・・・第三章に続く・・・・・・・・・
11
お気に入りに追加
1,413
あなたにおすすめの小説
【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。
絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので
ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。
しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。
異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。
異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。
公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。
『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。
更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。
だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。
ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。
モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて――
奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。
異世界、魔法のある世界です。
色々ゆるゆるです。
【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい
三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。
そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。
【完結】不協和音を奏で続ける二人の関係
つくも茄子
ファンタジー
留学から戻られた王太子からの突然の婚約破棄宣言をされた公爵令嬢。王太子は婚約者の悪事を告発する始末。賄賂?不正?一体何のことなのか周囲も理解できずに途方にくれる。冤罪だと静かに諭す公爵令嬢と激昂する王太子。相反する二人の仲は実は出会った当初からのものだった。王弟を父に帝国皇女を母に持つ血統書付きの公爵令嬢と成り上がりの側妃を母に持つ王太子。貴族然とした計算高く浪費家の婚約者と嫌悪する王太子は公爵令嬢の価値を理解できなかった。それは八年前も今も同じ。二人は互いに理解できない。何故そうなってしまったのか。婚約が白紙となった時、どのような結末がまっているのかは誰にも分からない。
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
これぞほんとの悪役令嬢サマ!?
黒鴉宙ニ
ファンタジー
貴族の中の貴族と呼ばれるレイス家の令嬢、エリザベス。彼女は第一王子であるクリスの婚約者である。
ある時、クリス王子は平民の女生徒であるルナと仲良くなる。ルナは玉の輿を狙い、王子へ豊満な胸を当て、可愛らしい顔で誘惑する。エリザベスとクリス王子の仲を引き裂き、自分こそが王妃になるのだと企んでいたが……エリザベス様はそう簡単に平民にやられるような性格をしていなかった。
座右の銘は”先手必勝”の悪役令嬢サマ!
前・中・後編の短編です。今日中に全話投稿します。
森に捨てられた令嬢、本当の幸せを見つけました。
玖保ひかる
恋愛
[完結]
北の大国ナバランドの貴族、ヴァンダーウォール伯爵家の令嬢アリステルは、継母に冷遇され一人別棟で生活していた。
ある日、継母から仲直りをしたいとお茶会に誘われ、勧められたお茶を口にしたところ意識を失ってしまう。
アリステルが目を覚ましたのは、魔の森と人々が恐れる深い森の中。
森に捨てられてしまったのだ。
南の隣国を目指して歩き出したアリステル。腕利きの冒険者レオンと出会い、新天地での新しい人生を始めるのだが…。
苦難を乗り越えて、愛する人と本当の幸せを見つける物語。
※小説家になろうで公開した作品を改編した物です。
※完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる