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第二章 冒険者ギルド加入試験の章

第八話・最終回 特別待遇…なのか、処置なのか?

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 ギルドカードのランクを確認すると、Cランクからのスタートになっていた。
 私はすぐに受付で確認をした。

 「あの…冒険者の資格を得た場合はGランクからのスタートで、特別な採取や討伐でもFランクから…では無かったのですか?」
 「あぁ、ノワール様のランクですね。 詳しい話はギルドマスターからお話がありますので、奥の訓練場にお越し下さい。」
 「訓練場? 普通なら、部屋に案内されるんじゃないのかな?」

 私は受付嬢とは別の職員に連れられて、冒険者ギルドの奥の訓練場に案内された。
 さっきまでいた試験会場ほどではないけど、訓練場も中々の広さだった。
 すると、訓練場には腕を組んだ体格の良い髭面の男と刺されて負傷した試験官、私の最終試験の時に相手をした騎士団副団長のアルマが立っていた。
 すると、髭面の男が話しかけて来た。

 「お前がノワールだな? 俺はこの冒険者ギルドのギルドマスターをしているグランツだ!」
 
 私は頭を下げた。
 やはり、この体格の良い髭面の男がギルドマスターだったのね。
 年齢は50歳前後位かしら?

 「お前がギルドカードに疑問を抱いた理由は何となくわかる。」
 「普通はGランクからのスタートで、特別でもFランクなのに…私だけCランクというのが分からなくて…」
 「順を追って説明しよう。 まず、最初の課題の採取のマンドラゴラだが、お前の採って来たマンドラゴラは通常のマンドラゴラと違い、変異種を捕まえて提出してきた。 この時点では、Eランクを渡しても問題ないと思っていたのだが…次のウォーリアコッコの討伐の段階で…しかも11匹も仕留めた挙句、それらを全て回収してから提出して来たのはお前が初めてだったので、Dランクの資格をあげても良いと判断した。」
 「それなら私はDランクからでは?」
 「最後まで話を聞け!」
 「はい…」

 ギルドマスターは咳払いをすると、再び話しかけて来た。

 「試験官が負傷した代わりにアルマが相手をして…ある程度の実力が分かれば良いという段階の話なのに、お前はアルマを倒してしまった。 冒険者ギルドのBランクの冒険者でも、アルマを倒せる者なんてそれほど多くはないというのに…」
 「あはは…」
 「それで特別処置として、俺の権限でCランクからのスタートにしようと思っていたのだ…が?」
 「が?」
 「アルマの話では、お前は魔法が使えるらしいではないか⁉︎」

 私はアルマを見た。
 内緒にして欲しいと頼んでいた筈なのに、それをアッサリ破るなんて…アルマは私に両手を合わせて謝罪したポーズを取っていた。

 「はぁ…バレていたのなら隠す必要もないですね。」

 私は試験官に近付いてから、身体に触れてヒールを掛けた。
 すると試験官は刺された怪我がすっかり治って感謝をして来た。
 そしてギルドマスターは、再び私に尋ねて来た。

 「お前の使える魔法は、回復だけでは無いよな?」
 「えーっと?」

 そう言って誤魔化そうとすると、試験官が話して来た。

 「5番の少女が魔法を使用した時に会場にいた者達は驚いた表情をしていたのに対し、8番のお前だけ無表情だったのが気になっていてな…」
 「あの段階で皆の表情を確認していたのね…はい、他にも使えます!」
 「なら見せてみろ!」

 私は溜息を吐いてから右手を上げると、空中に1m程の大きさの火球を100個出現させた。
 訓練場にいた者達は、驚愕の表情を浮かべていた。

 「な…なな…なんだ、この数は⁉︎」
 「足りませんか? なら、もっと増やしましょうか?」

 私はもう隠す気も無いので、更に追加でもう100個出現させた。
 ギルドマスターのグランツの表情が驚愕から恐怖に変わっていたので、私は右手を下ろすと同時に出現していた火球も消えて行った。

 「これは…Cランクでも低過ぎるな! ノワール…お前はAランクからのスタートだ! お前達も異論は無いな?」
 「ある訳ないでしょう! Sランクでも良い位ですよ!」
 「私も異論を唱えようとは思わない…寧ろ騎士団に欲しい位だ!」

 私は追手の事があって、あまり目立ちたくは無かったのだけれど…
 決定した事を覆せる程の理由も無いので、仕方なく頷いた。
 その後…受付に戻ってからギルドカードが再発行されて、Aランクのギルドカードを受け取った。
 私はいきなりの高ランクからのスタートで嬉しい反面、人生設計を崩されたのだった。

 【私の人生設計】
 低ランクからのスタートで、依頼をこなして徐々にランクを上げてから…かけがえの無い相棒を見つけて…そこから恋愛に発展する!
 そう夢見ていた筈だったのに、見事に崩されてしまった。

 私はあの馬鹿王子の所為で、王族や貴族と結婚したいなんてもう思わない!
 日々の暮らしをしていけるだけの財力で、たまに贅沢をする位で普段は質素に…
 いつまでも一緒に幸せに過ごす…そんな生活を夢見ているのよ!
 
 「でも、決まった事に文句を言っていても仕方ないわね。 気持ちを切り替えて行きましょう!」

 そう思っていた筈だけど、やはり心の中では割り切れずにいた。
 早く運命の相手が現れないかしら…ね?


 ・・・・・・・・・第二章・完・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・第三章に続く・・・・・・・・・
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