【完結】五度の人生を不幸な出来事で幕を閉じた転生少女は、六度目の転生で幸せを掴みたい!

アノマロカリス

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第一章 婚約破棄の章

第一話 婚約破棄と甦った前世

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 『ノワール・エルティナス! 貴様とは婚約破棄だ!』
 「え? 何でですかアクード様…理由をお聞かせください!」

 ノワール・エルティナス伯爵令嬢は、この国の第三王子のアクード・ベリヤルに婚約破棄を告げられた。

 「理由か…それはな、出てこい!」
 
 アクード王子がそういうと、背後から女性が現れた。
 その女性はアクード王子の隣に立つと、アクードはその女性の肩を抱いた。

 「こういう事なのよ、お姉様!」
 「これが理由だ! お前よりも妹のメルティが俺には相応しいと判明したのだ!」

 ノワールは信じられずに立ち崩れていた。
 今迄、アクードの妻になる為に自分の時間や社交界を犠牲にして、必死に勉強や礼儀作法に時間を費やしたというのに、それらの努力が音を立てて崩れて行った。
 すると、あまりのショックで…頭の中にビジョンが甦って来た。

 初めは日本という異世界で、淵東 黒樹えんどう くろきという女子高生でゲームや漫画好きなオタク女子だったが、学校の帰り道にトラックに刎ねられて死んだ人生。

 2度目は転生後に異世界で目覚めて、日本の知識をフル活用して魔女になり…魔法の発展や薬学により名を広めて行ったが、教会に異形の者として扱われ始めて、魔女狩りによって命を終わらせられた人生。
 
 3度目は、ある王国に使える女騎士で…戦場で様々な武勲を挙げて国に貢献したのにも関わらず、魔物の侵攻に真っ先に盾として導入されて命を落とした人生。

 4度目は、聖女として生まれ変わり国に仕えてから様々な事で貢献して来た筈なのに、魔王軍の侵攻で生贄にされてから散った人生。

 5度目は、城に使えるメイドで、炊事・洗濯など家事関係では右に出る者がいない程に有能なメイドで、それによりとある上位貴族から声が掛かり妻として迎えたいと言われたが、同期のメイドの嫉妬により捏造された濡れ衣の罪をなすりつけられて処刑された人生。

 過去に5度の人生の記憶がフラッシュバックされると、アクードに婚約破棄された事なんて小さい事に思えて吹き飛んでしまった。
 ノワールはメルティとアクードを見て言った。

 「婚約破棄ですが、快くお受け致します。」
 「お姉様、悔しいんですよね?」
 「いえ、全然! 寧ろ、婚約破棄は大歓迎よ! これで好きな人生を歩めるわ!」
 「なんだノワール…先程までショックを受けた様な表情をしていたではないか!」
 
 急に私の性格が変わった物だから、アクードとメルティは戸惑っていた。

 「お姉様…無理をしていませんか?」
 「無理なんて、ぜーんぜん! あ、そうだ! メルティにこれだけは言っておくわ!」
 「な…なんですか?」
 「そこの馬鹿王子だけど、浮気癖が酷いから気を付ける事ね。 貴女より体系の良い綺麗な子を見付けたら、すぐに捨てられるわよ!」
 「な…!」
 「じゃあ、私は帰るわね! バイバーイ!」

 私はそう言って部屋から出ようとすると、大勢の騎士に囲まれた。
 すると背後には、馬鹿王子が怖い顔で睨んでいた。

 「この俺様を馬鹿王子だと⁉ 貴様…不敬罪で牢に入れてやる!」
 「あら? 馬鹿に馬鹿といったら不敬罪になるのかしら? 馬鹿だから馬鹿と言っただけなのにw」
 「また馬鹿と言ったな! お前等、この女を捕らえろ!」
 「はぁ…黙って家に帰して欲しい物だわ!」

 私は体内に流れる魔力を開放した。
 すると騎士達は、その魔力の波動に逆らう事が出来ずに壁まで吹っ飛ばされた。

 「うんうん! 久しぶりだったけど、上手く行ったわ!」
 「馬鹿な! ノワールに魔力だと⁉ ノワールには魔力なんか宿っていなかった筈なのに…」
 「貴方の婚約破棄のショックのお陰で私の能力が開放されたみたい。」
 「その魔力…良いな! 婚約破棄はなしだ! 再び俺のモノになれ!」
 「寝言は寝てから言って貰えます? 貴方になんか全くの魅力も感じませんし、興味もありませんので!」

 私は部屋から出ようとしたけど、振り返ってからメルティに言った。

 「ほら、貴女より魅力がある女性に簡単に乗り換えるでしょ、この馬鹿王子は…まぁ、頑張りなさいな!」

 私はメルティにそう言い残すと、部屋から出た。
 そして私は城からも出て、馬車に乗って実家であるエルティナス伯爵家に帰った。
 すると、屋敷では事情を知らない両親が私を蔑む様に言って来た。

 「王子の婚約者はメルティに決まったのだ! 妹に婚約者を奪われたお前を家に置いて置く理由は無くなった! だから、この家からさっさと出て行け!」
 「そうよ、貴女には失望したのだから、これからは外の世界で生きていくのね!」
 「なるほど…そういう事だったのね。 解りました、家から出て行きますわよ!」

 私は部屋に向かって行くと、両親もクドクドと文句を言いながら着いてきた。
 私は部屋にある家具やドレス、アクセサリーなどを収納魔法に入れていると、両親は唖然とした顔をしていた。

 「ノワール…貴女、魔法なんて使えたの⁉」
 「お前に魔法なんて…そんな能力は無かった筈だ!」
 「つい先ほど使える様になりましたの。 それと、今迄お世話になりました。」

 私はドレスの裾を持ってお辞儀をすると、両親は掌を返したように言って来た。

 「魔法が使える何て素晴らしいじゃないか! さすが我らの娘だ!」
 「その力があれば、領地にも役立たせる事が出来るわ! その魔法を役立たせて…」
 「何を言っているのですか、お父様にお母様? 先程仰った様に私はこの家を出て行きますので…」
 「いや、その様な素晴らしい力があるのなら、追い出すなんて事はしない!」
 「そうよ、貴女はいつまでもこの家にいても良いのよ!」

 はぁ…
 私にこんな力があると解った時点で都合の良い事を言い出したわね。

 「お父様にお母様、1つ言っても宜しいですか?」
 「うむ、何だ?」
 「どうしたの、ノワール?」
 「この私の力は、外の世界で使って行きます。 ですので…お前等の為に使う訳ねぇーだろ、バーカ!」

 私はそれだけ言うと、屋敷から出て行こうとした。
 だが両親は、先程とは打って変わって宥めようと猫なで声を上げて謝罪して来た。
 私は無視して庭に出ると、箒を手元に呼んでから腰掛けた。
 そしてある程度上空まで浮かび上がると、遠くを見て言った。

 「あの山の向こうに隣国があったわね…まずはそこに向かうとしましょう。」

 下を見ると両親が何かを叫んでいるが、ここまで声が届かなかった。
 私は両親に手を振ると、そのまま箒で旅立って行った。
 
 「私は今度の人生こそ、良い人を見付けて幸せになるんだから!」

 ノワールの硬く心に誓ったのだった。
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