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第二章 本章スタート

第十六話 頭が痛くなる程の…親馬鹿

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 「テルパ・ドーラ!貴様はよくも我が娘を傷物にしてくれたな‼」

 私は城に呼ばれて国王陛下がいる王宮にいた。

 そこには国王陛下に王妃陛下、王子や王女達に…わざとらしく泣いているアイーシャの姿があった。

 自分から喧嘩を売っておいて、負ければ親に告げ口って…

 「今回の試合は、両者の承諾の元に行われたものです。」

 「だが、娘の話では…必要以上な辱めを負わせたという話だぞ‼」

 国王陛下の言葉にアイーシャは声を上げて泣き出した。

 それを憐れむかのように、王妃や兄妹達が寄り添ってい慰めていた。

 「貴様は我が王国に対して牙を向いたのだ!それは到底許せる事ではない‼貴様はこのまま投獄させて極刑を与える事も出来るのだぞ‼」

 「もしも私が死んだら…この王国に対してドーラ商会からの寄付金は無くなり、そして世界に配布されているドーラ商会の商品の需給が止まり、世界が大混乱になりますが…その覚悟はありますか?」

 「そんな物、誰かに後を継がせれば良いだけの…」

 「お言葉ですが、商品の9割は私のオリジナルのレシピになっております。私が死ねばそれは闇に葬られて、二度と作り出される事がありません。さらに私を理不尽な理由で処刑した事が各国に知れ渡り、この国が未曾有の危機に見舞われますが…その覚悟はお有りですか?」

 私の創ったドーラ商会は、他の大陸にある大国の年間予算より売り上げが高い。

 そしてこの大陸のみならず、他大陸の王族や貴族にもその商品は出回っている為に、需給が止まればどういう事になるかが分かるだろう。

 「そもそもですよ、やられる覚悟が無い者が何故私に喧嘩を吹っ掛けて来たんですか?それに、何故大事な娘を英雄学園に入れたりしたのです?」

 「それは…娘の主張を尊重する為に。」

 「英雄学園は、いずれは英雄や勇者を世の中に輩出させて大いなる存在に立ち向かわせる為に育成する学園です。そうなれば、アイーシャ王女もいずれは大いなる存在に立ち向かう為の者の1人になる事になります。そうなった時はどうしますか?」

 「そ…それは、学園を卒業したら城で生活させる為に…」

 「なら私のした事を咎める権利はないじゃないですか!」

 「貴様は娘の上位ジョブの力を抜き取ったと…」

 「それの何がいけないのですか?学園を卒業したら城で生活させるのなら、別に上級ジョブの恩恵は必要ないですよね?戦いに赴く訳ではないのですから。」

 どうやらこの国王陛下…のおっさんは、溺愛している娘の所為で目が曇っているみたいだ。

 いや、国王陛下だけではないか。

 「だが、娘の上位ジョブは返して貰うぞ‼」

 「どうぞ、ご自由に!」

 「なら、娘から抜き取った上位ジョブを返せ!」

 「先程仰ってましたが、アイーシャ王女様は英雄学園を卒業なさるのですよね?」

 「それが何だ‼」

 「今年度から英雄学園の卒業条件に、演習場にあるダンジョンの100階層をクリアが条件になっております。アイーシャ王女様の上位ジョブの欠片はダンジョン内に散らばせました。卒業なさられるのなら、ダンジョンに挑んで回収をしたら宜しいのではないでしょうか?」

 「つべこべ言わずにさっさと戻せ!処刑するぞ‼」

 「どうぞご自由に!他大陸にある公国や帝国や大国を敵に回してこの国を滅ぼしたいのでしたら、いつでもどうぞ。」

 駄目だな、話が平行線のままだね。

 この国王は普段は厳格な王様なんだけど、娘が絡むとここまでおかしくなる物なのかな?

 何を考えているかは解らないけど、どうせ碌な事を考えてないだろうな。

 「分かりました、上位ジョブを返却しても良いですが…1つ条件があります。」

 「なんだ、言ってみろ!」

 「上位ジョブをアイーシャ王女に返却する代わりに、アイーシャ王女には英雄学園を退学させます。」

 「何だと⁉」

 「何でよ‼」

 「分かりませんか?周りの生徒に悪影響を与えるからですよ。かつての講師の中でも行き過ぎた教育をされて、親達から反発を喰らうという事が起きました。普通の学園ならそれは問題はありますが、いずれ英雄を輩出させる英雄学園ですよ?生温い教育をして英雄が育つ訳がないでしょう。」

 「む…むぅ?」

 「それに、周りの生徒だけに留まるのなら問題はありませんが…王国が娘可愛さに好き勝手やっていると解れば、他国からも反発を喰らいますよ!この英雄学園を設立したのは、デルシリアス大陸にある大公国のアトラディルーデンなのですから。」

 これだけ言えば、娘の所為で目が曇っている国王も理解はするだろう。

 理解…しているよね?

 「早く私のジョブを返して‼」

 「なら学園を去るのですね?」

 「去る訳ないでしょ!貴女に何の権限があるっていうの‼」

 「どうでも良いですが、わざとらしい泣き真似はもう良いのですか?」

 アイーシャは顔を真っ赤にして黙った。

 「さて、国王陛下は如何致しますか?」

 国王はアイーシャの顔を見た後に、王族達の顔を見渡した。

 それから必死に悩む様な素振りを見せた後に沈黙が続いた。

 「答えが出ないみたいですね?では、ゆっくりと考えて下さい。私は学園に戻りますので…」

 「ま…まて、貴様!」

 「あ、それと…仮に刺客を送り込んだりして来たら、ドーラ商会に宣戦布告をしたとみなし…人脈を駆使して他国と連携して立ち向いますのでそのつもりで。賢き判断をされる事を願っております。」

 私は転移魔法で学園に戻った。

 釘を刺しておけば、手荒な事はしてこないだろう。

 後は、国王がどういう選択をするかになる…のだが?
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