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第二章 本章スタート

第十三話 新たな試み!

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 「先生!今帰った…」

 カーリスは教室に入るなり、私の顔を見て言った。

 背後にはベルリーニがリーゼの肩を借りた状態で入って来た瞬間に座り込んだ。

 「お帰りなさい!何階層まで辿り着きましたか?」

 「12階層がやっとですのん!10階層まではせんせぇ~の言った通りにサクサク進めましたけどん、11階層からは難易度が跳ね上がりましたわん!」

 「これが迷宮ダンジョンとフィールドダンジョンの違いです。」

 「先生の言った意味が良くわかった。これは…4人いないとキツい!」

 「そう思って、このクラスにテトラさんが帰って来ました。」

 「テトラ…いたのか!」

 「居たわよ!」

 「でもこれで4人になるわん!…と言いたいんだけれどん、テトラから何も力を感じないわん?」

 「貴女達がダンジョンに潜っている間にね、ひと騒動があって…テトラの勇者のジョブの証を抜き取ったのよ。」

 「ジョブの証を抜くって…先生はそんなことも出来るのか‼︎」

 「これは闇のスキルを使用したものだから、やろうと思えば…貴女達のパラディンや聖女の証を抜き取る事が出来るわよ。」

 3人は私から距離を取る様に下がった。

 ベルリーニとリーゼは身を庇う様に震えていた。

 「安心して下さい!やったりなんかしませ………」

 この子達はジョブの恩恵があるにも拘らずに、行けた階層が12階層までだった。

 ラス達もそうだったけど、ジョブの恩恵で成長が著しく早かった…となれば、ジョブの恩恵が無い状態ではどの程度まで進めるのかな?

 私はカーリスとベルリーニとリーゼから、ジョブの証を抜き取った。

 抜き取られた3人は、疲労感により床に座り込んだ。

 「か…体が重い!」

 「力が入らないのねん!」

 「先生は何をしたのですか?」

 「貴女達の恩恵であるジョブの証を抜き取りました。」

 「え⁉抜き取らないと言ったのに…」

 「これには理由があるのです。」

 「ど…どんな理由ですか!」

 私は咳払いを1つしてから話し始めた。

 「今は凄く弱っている貴女達に拷問をして、私に一切逆らえない様に絶対服従を…」

 「せ…先生⁉」

 「…というのは冗談です。」

 「この状態でそんな話を聞かされたら、本気かと思うぞ!」

 「実はですね、新たな試みをしてみたいと思ったのですよ。ジョブを抜かれてもレベルは下がりませんが、ステータスが著しく低下します。」

 「まぁ、体が重いからそうなんだろうとは思うけど…」

 「この状態で体を鍛えてからジョブを戻した場合、どれくらいの力が得られるかという…基本能力の底上げですね。」

 「…という事は、ジョブの無いこの状態がアタイ達の本来の力という訳か!」

 「うわぁ…ウチのステータス低いのん!」

 「わたくしも、回復魔法が使えませんわ!」

 「この状態で体を鍛えつつ、実戦を学んでからダンジョンに突入して…最下層を目標に頑張って貰います。」

 「この状態で最下層…ですか⁉」

 「いえいえ、その状態で最下層に辿り着く前に全滅しますからね。貴女達のジョブの恩恵を5つに砕きます。それを20・40・60・80・100階層のある場所に設置して、恩恵を回収しながら進んで貰います。」

 「じゃあ、この何もない状態で20階層まで行かないと…恩恵が戻って来ないというのか‼」

 「5つを取り戻して本来の恩恵が手に入ります。1つだけなら、ある程度のステータスが上昇…5分の1程度ですね。」

 「これ…何か意味あるのん?」

 「ラス君達に手っ取り早く近付ける方法としての訓練だと思って下さい。ラス君達がこの方法を使用していたら…恐らく30階層に到達はまだ無理だったでしょう。」

 「お兄様に近付けるのなら…やるのん!」

 「あぁ!強くなれる為ならやってやるぜ!」

 「良く言いました!では早速鍛錬を始めますので、第二演習場に向かって下さいね。」

 4人は第二演習場に向かった。

 そこで自分達と同じ重さの鎖帷子を着させられた後に、演習場内を走らせた。

 「今日は開始初日なので、かる~く100周から始めましょうね!」

 「ひゃ…100⁉」

 「歩かずに走って下さいね。歩かれた方には魔法で熱湯をぶっ掛けますから!」

 「お…鬼だ!」
 
 「いえ、悪魔よ!」

 「これ…拷問じゃないの⁉」

 初日はこんな感じで進んで行き、皆は100周を走り終えるとその日は寮に帰って死んだ様に眠っていたのだった。

 そして翌日、理由を付けて授業をサボる者が居ると判断した私は、アポーテスという人物呼び出しの転移魔法で4人を演習場に集合させた。

 更に4人に体力回復ポーションを渡してから全快させる+疲れを吹っ飛ばす効果を飲ませてから、昨日と同じ風に演習場を走らせた。

 「先生!今日も100周ですか?」

 「毎日100周ですよ…ただし、毎日負荷を課せますので…グラビティ!」

 「「「「ぐわぉっ‼」」」」

 「昨日の倍の重さで100周して下さいね!」

 「この悪魔‼」

 「この魔王‼」

 「人でなし‼」

 「皆酷いですね、先生はこんなにも親身になって皆を鍛えて差し上げようというのに…」

 「頼んでないわよ‼」

 「せんせぇ~鬼畜ですわん!」

 「喋る元気があるなら大丈夫でしょ!また歩いた子を発見したら、昨日と同じ様に熱湯を掛けますからね!」

 4人は寡黙になって走っていた。

 この重力の中でベルリーニが最初に音を上げるかと思ったが、意外に根性があるみたいで皆に付いて行った。

 それから1週間は基礎体力造りとして、毎日同じ鍛錬をさせた。

 ただし、重力負荷を増やしながら…。

 「アイーシャさんも気になるのなら、近くに来てみればいいのに…」

 演習場の上の方でアイーシャの姿が目に入った。

 だが、私は気付かないふりをするのだった。

 「さて、今日からは別な鍛錬を致しますね。」

 そういってカーリスにはグレートソードを、テトラとリーゼにはバスタードソードを、ベルリーニにはメイスを持たせた。

 「これから1週間は、毎日素振りをして貰います。1日のノルマは一万ですので、真面目にやって下さいね。」

 「もしも手を抜いたりしたらどうなるのん?」

 「そんなのは決まっているじゃないですか!ダンジョンの最下層に辿り着かないで、貴女達は一生自分のジョブの恩恵が戻らないだけですよ。留年したいのなら別ですが…」

 「一万か…走らされるよりかは楽か?」

 「強くなる為に近道や抜け道はありませんからね。努力をすればしただけ身に付きますし、手を抜けば抜いた分だけ…後は分かりますよね?」

 4人は真面目に素振りを始めた。

 でもまぁ、出来ても千回が良い所だろう。

 この子達も精々家での素振りは千回以下だろうし。

 だが、予想を反して千回は越えた…が二千回に到達する位で腕が動かなくなったみたいで、座り込んで荒い息を吐いていた。

 「これが限界みたいですね?今日はこの辺にしておきますか?」

 「良いのん?」

 「えぇ、構いませんよ~ただし、明日のノルマも一万回ですが、今日出来なかった分が繰り越されるので…合計一万八千回になりますがそれでも良ければ。」

 4人は憎しみを込めた目で私を見た後に、立ち上がって素振りを再開した。

 そして全員…という訳ではないが、一万回を終えた者と九千回しか出来なかった者達に分かれて今日は終わった。

 まだまだ鍛錬は始まったばかり。

 全ての鍛錬を無事に終える事は出来るのかしらね?
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