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第二章 本章スタート
第二話 カーリスの実力
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テルパはカフェテラスに向かう時に、もう1度カーリスの情報を確認した。
カーリス・ドリーム・ドートリッシュ公爵令嬢。
父親は王家の盾の王国近衛騎士団の騎士団長のハインリヒだ。
「あのおっさんの娘だったのか。という事は、親子揃って頑固そうだね。」
テルパは闇の閃光の時代に王宮に呼ばれた際に、王国近衛騎士団のハインリヒには面識がある。
基本的に騎士団と冒険者の関係は非常に悪い為に、貴族から選出されている騎士団から見れば、貴族ではない平民や他国の者達である冒険者の事はあまり良く思っていない。
騎士団の中には冒険者の実力を認めている者達も中にはいるが、基本は騎士団よりも下の存在に見られる傾向がある。
そして団長のハインリヒも典型的な貴族既出なので、冒険者を快くは思っていなかった。
「ジョブがパラディンで聖騎士の加護持ちねぇ?」
パラディンは騎士系のジョブで最上位のジョブである。
しかも加護持ちとなると、戦場に出れば負け知らずで生還をするという力を持つのだが…?
それは実際に戦場で活躍している場合であって、学生で戦場をほとんど知らない者だとただの宝の持ち腐れであった。
「兄妹の中では剣術に長けていて、父親とは互角…ねぇ?」
加護持ちの場合にはそういう事はたまにあるが、兄妹や父親が大した事が無くて実力はそう高くないと取れなくもない。
普通に考えて戦場で戦って来た者と戦場を知らぬ者が互角とは考えにくい。
兄妹や父親が手加減をしていたか、本当に兄妹や父親のレベルが低いのか?
「なら、カーリスの相手は剣で良いでしょう。完膚なきまでに叩きのめしましょう!」
テルパはカフェテラスで1人で居るカーリスを見付けると声を掛けた。
「ちっ…先生もしつこいね!」
「あの書き込みはどういう事でしょうか?」
「先生とアタイでは勝負にならないから、優しさのつもりでやっただけなんだけどな。」
「そうですか…そうですよね、私とカーリスさんでは相手になりませんよね。」
「分かっているじゃないかせんせ…」
「戦場を碌に知らない子供が私に勝てる訳もありませんからね。カーリスさんは引き際を解っていらっしゃる。」
「なんだと…⁉」
「最近の騎士は実力を見抜けずに自分の方が強いと思っている人が多いですからね。貴女のお父様を見ていれば良く解ります。」
「面白い事を言うじゃないか!先生は余程自信があるんだな?」
「自信ではなく事実を述べただけですよ。貴女に比べたら、まだゴブリンの方が手強いでしょうし…」
カーリスは分かり易い程に挑発に引っ掛かってくれた。
天狗になっている上にプライドが高い…更にゴブリン以下とまで言われた日には、さすがのカーリスも黙ってはいられない。
「先生が痛い目に遭って学園を去るのが可哀想だと思って手を出さないでいたが、ここまで馬鹿にされるとアタイのプライドが許さない!」
「そして場所を指定してまた来ない気ですよね?これだから口ばっかで実力が無い人は…そんなに負けるのが怖いのですか?」
「上等だ!今すぐ叩きのめしてやるよ‼」
カーリスはテーブルに立て掛けてあった剣を取ると立ち上がった。
「さすがに此処でやったら被害が出ますからね。場所を移動しますね。」
テルパは転移魔法である場所に移動した。
そこはダンジョン80層にある古代王国跡の闘技場だった。
「中々お誂え向きの場所じゃねぇか!散々舐めた口を聞いたんだ、覚悟は出来ているよな?」
「はて?それは自分自身に言い聞かせた言葉でしょうか?」
「ぬかせ!」
カーリスは私に対して喉を目掛けて突いて来た…と思ったら軌道を変えて左から斬り掛かって来た。
テルパはそこへ剣を合わせてからカーリスの剣を下に向けていなすと、カーリスは体勢を崩して地面に手を付いた瞬間に首元に剣を当てた。
「口だけで呆気なかったですね。戦場ではこれで勝負が決まっていましたよ。」
「なら殺れよ!」
「いえいえ、この程度ではやりませんよ。貴女を完膚なきまでに叩きのめそうと思っていますから。」
「調子に乗るな‼」
カーリスは私の頭に向けて斬り掛かって来た。
だがその攻撃を剣で躱すと、一歩踏み込んでから体の向きを変えようとして…柄がカーリスの顔を殴ってしまった。
「あ、ごめんなさい!止めるつもりが当たってしまいました。」
「態とだろ?」
「そうです、態とですよ。あれだけの口を叩いた癖に、この程度の攻撃も躱す事が出来ない何て…それで良く私に痛い目を遭わすとか言えたものですね?」
「くっ…!」
カーリスは再び振り被って強撃を入れて来た…が、私は剣で弾いた。
すかさずカーリスの首に刀身を当てた。
そしてカーリスは再び斬り掛かって来たが、全て弾かれて首に心臓に…という感じで全ての急所に刀身を当てた。
「いい加減、実力の差に気付いてくれませんか?これで貴女は何度死にました?」
「まだだ!アタイの本気の剣を見せてやる‼」
「おや?とっくに本気だと思っていましたけど?」
「抜かせ‼奥義!紅蓮蝶の舞‼」
多彩な方向からの高速剣で私目掛けて攻撃を仕掛けて来た…が、それ等の剣を合わす事も無く全て躱してから首に刀身を当てた。
「何で…この技を躱せるんだ⁉この技は親父でさえ躱せなかったのに…」
「それは親心で正面から受けていただけで、本来なら躱せたでしょうね。それにこの技ですが、動いている的に当てる様に訓練はしましたか?軌道から察するに、動いていない標的に対しての攻撃に見えましたが?」
カーリスは地面に剣を差して膝をついて頭を垂れていた。
言葉通りに完膚なきまでに叩きのめした…というか、少しやり過ぎた。
このままそっとしておこうかとも思ったのだったが、そうも言っていられない状況になったのだった。
「あら?さすがに少し騒ぎ過ぎましたか!」
「あぁ?」
闘技場にデュラハンとシャドウナイトが10体現れた。
「な…何だよアイツ等は⁉」
「ここは学園内の闘技場ではなく、私が作ったダンジョンの闘技場だったのですよ。だけど少し騒ぎすぎて魔物達に見付かってしまったようです。」
「こんな奴等…」
「デュラハンとシャドウナイトの9匹を引き受けますので、1匹はカーリスさんにお願いします。パラディンなのですから、1匹位は倒せるでしょ?」
テルパは敵を引き付ける挑発スキルでデュラハンとシャドウナイトを引き付けて場所を変えた。
カーリスは目の前にいるシャドウナイト相手に剣を構えた。
「アタイは今ムシャクシャしているんだ!八つ当たりに付き合って貰うぞ‼」
カーリスは攻撃を仕掛ける…がシャドウナイトはカーリスの剣を簡単に弾いた。
カーリスは何度も攻撃を仕掛けるが、シャドウナイトに掠る事どころか攻撃を当てる事が出来なかった。
シャドウナイトは反撃として、剣先でカーリスの体を剣先で軽く斬って行った。
致命傷にはならないが、動く度に傷口から血が流れていた。
カーリスは追い込まれる度に剣の鋭さが増して行った…が、それでもシャドウナイトに攻撃を一切当てる事が出来なかった。
「パラディンで加護持ちでもその程度ですか?」
「先生⁉先生が引き受けた魔物達はどうしたんですか⁉」
「倒したに決まっているじゃないですか。あの程度は敵ではありませんから…」
「くっ…先生、見てないで助けるという事はしないんですか!」
「危なくなったら助けますよ。ですがまだ余裕がありそうではないですか!頑張って倒してみてくださいね。」
結構…無茶振りを振った。
此処はダンジョンの80階層で、敵の強さはレベル80と同程度…カーリスが如何に優れたジョブで加護持ちであっても、本当の死闘を知らない者に勝てる訳が無かった。
カーリスは何度もシャドウナイトに斬り掛かるが、その攻撃は全て避けられた。そして反撃で手の甲の腱を斬られると、剣を落として拾い上げる事が出来なくなっていた。
カーリスは地面に落ちた剣を何度も触れて持ち上げようとするが、手に力が入らずに拾い上げる事が出来なかった。
そしてシャドウナイトはカーリスの剣を踏み付けながら、カーリスを蹴り飛ばした。
カーリスは吹っ飛んで行き、すぐに体勢を起こしたが…手元に武器が無いのであたふたと左右を確認しているだけだった。
「そろそろ助けてあげましょうかねぇ。それにしても、シャドウナイトの攻撃はイヤらしい攻撃をしますが…あんな風に設定したっけ?」
シャドウナイトはまるで弱者をいたぶる様に剣では攻撃せずに、拳で殴ったり足で蹴りを入れていた。
カーリスは殴られて蹴られる度に分かり易くダメージが表面に表れていた。
そして涙目になりながらも体を丸めて攻撃に耐えていた。
「カーリスさん、助けはいりますか?」
「見てないで助けてくれよ!」
「助ける為には条件があります。これから先生の言う事には絶対服従で、今後は真面目に授業に出ると約束をして下さればお助けしますよ。」
「分かったから助けてくれ!」
「あ、でも…カーリスさんは先生との約束を平気で破りましたよね?そんな人の話を真に受ける程、先生は馬鹿ではありませんよ。」
あの時の出来事を少々意地悪く仕返しをした。
「分かったから、早く助けて下さい!」
テルパはシャドウナイトの攻撃を魔法で拘束して止めた。
「貴女の口約束は信用出来ませんので、契約魔法を使用しますね。アグリメンス!」
「そんな物を使用しなくても約束は守る‼」
「拘束…解きますよ?」
「わ、分かった!アグリメンス‼」
互いの契約が完了し、テルパは剣でシャドウナイトを消滅させた。
「これで約束は果たされましたので、明日から宜しくお願いしますね!」
「アタイが手古摺っていた相手をあんな一瞬で…」
「先生は色々な場所で死ぬ様な位の経験をしていますからね。ヒール!」
カーリスの怪我を完全回復させると、カーリスは立ち上がって落ちていた剣を拾った。
「これからアタイは先生の授業に出てやるよ。だが、それは先生に従う訳ではない!このダンジョンは先生が作ったダンジョンだって言ったよな?」
「はい、このダンジョンは先生が演習場の疑似魔物の装置を廃棄して作ったダンジョンです。」
「ならアタイの目標は、強くなってアタイに恥を欠かせたあの魔物を倒す為だ!先生の授業を受ければ、アタイは強くなるんだろ?」
「それはカーリスさん次第ですが、私は貴方が強くなれる様に指導はしていきますよ。」
「なら、アイツを倒せるまで先生に従うよ。」
「目標が低いですが…まぁ、最初はそれ位で良いでしょ。では戻りましょうか!」
テルパは転移魔法を使用すると、カフェテラスに戻って来た。
「授業は明日から開始致しますので、ちゃんと来るのですよ!」
「契約魔法を使ったんだから行くよ。明日から宜しくな!」
カーリスはカフェテラスを出て自室に戻って行った様だ。
「これでまずは1人…残りの4人もこう楽に事が運ぶと良いのですが…?」
テルパの懸念した通り、他の4人はこんなに簡単には行かなかった。
残り4人…5人そろって授業が出来る様になるのはいつになるのだろうか?
カーリス・ドリーム・ドートリッシュ公爵令嬢。
父親は王家の盾の王国近衛騎士団の騎士団長のハインリヒだ。
「あのおっさんの娘だったのか。という事は、親子揃って頑固そうだね。」
テルパは闇の閃光の時代に王宮に呼ばれた際に、王国近衛騎士団のハインリヒには面識がある。
基本的に騎士団と冒険者の関係は非常に悪い為に、貴族から選出されている騎士団から見れば、貴族ではない平民や他国の者達である冒険者の事はあまり良く思っていない。
騎士団の中には冒険者の実力を認めている者達も中にはいるが、基本は騎士団よりも下の存在に見られる傾向がある。
そして団長のハインリヒも典型的な貴族既出なので、冒険者を快くは思っていなかった。
「ジョブがパラディンで聖騎士の加護持ちねぇ?」
パラディンは騎士系のジョブで最上位のジョブである。
しかも加護持ちとなると、戦場に出れば負け知らずで生還をするという力を持つのだが…?
それは実際に戦場で活躍している場合であって、学生で戦場をほとんど知らない者だとただの宝の持ち腐れであった。
「兄妹の中では剣術に長けていて、父親とは互角…ねぇ?」
加護持ちの場合にはそういう事はたまにあるが、兄妹や父親が大した事が無くて実力はそう高くないと取れなくもない。
普通に考えて戦場で戦って来た者と戦場を知らぬ者が互角とは考えにくい。
兄妹や父親が手加減をしていたか、本当に兄妹や父親のレベルが低いのか?
「なら、カーリスの相手は剣で良いでしょう。完膚なきまでに叩きのめしましょう!」
テルパはカフェテラスで1人で居るカーリスを見付けると声を掛けた。
「ちっ…先生もしつこいね!」
「あの書き込みはどういう事でしょうか?」
「先生とアタイでは勝負にならないから、優しさのつもりでやっただけなんだけどな。」
「そうですか…そうですよね、私とカーリスさんでは相手になりませんよね。」
「分かっているじゃないかせんせ…」
「戦場を碌に知らない子供が私に勝てる訳もありませんからね。カーリスさんは引き際を解っていらっしゃる。」
「なんだと…⁉」
「最近の騎士は実力を見抜けずに自分の方が強いと思っている人が多いですからね。貴女のお父様を見ていれば良く解ります。」
「面白い事を言うじゃないか!先生は余程自信があるんだな?」
「自信ではなく事実を述べただけですよ。貴女に比べたら、まだゴブリンの方が手強いでしょうし…」
カーリスは分かり易い程に挑発に引っ掛かってくれた。
天狗になっている上にプライドが高い…更にゴブリン以下とまで言われた日には、さすがのカーリスも黙ってはいられない。
「先生が痛い目に遭って学園を去るのが可哀想だと思って手を出さないでいたが、ここまで馬鹿にされるとアタイのプライドが許さない!」
「そして場所を指定してまた来ない気ですよね?これだから口ばっかで実力が無い人は…そんなに負けるのが怖いのですか?」
「上等だ!今すぐ叩きのめしてやるよ‼」
カーリスはテーブルに立て掛けてあった剣を取ると立ち上がった。
「さすがに此処でやったら被害が出ますからね。場所を移動しますね。」
テルパは転移魔法である場所に移動した。
そこはダンジョン80層にある古代王国跡の闘技場だった。
「中々お誂え向きの場所じゃねぇか!散々舐めた口を聞いたんだ、覚悟は出来ているよな?」
「はて?それは自分自身に言い聞かせた言葉でしょうか?」
「ぬかせ!」
カーリスは私に対して喉を目掛けて突いて来た…と思ったら軌道を変えて左から斬り掛かって来た。
テルパはそこへ剣を合わせてからカーリスの剣を下に向けていなすと、カーリスは体勢を崩して地面に手を付いた瞬間に首元に剣を当てた。
「口だけで呆気なかったですね。戦場ではこれで勝負が決まっていましたよ。」
「なら殺れよ!」
「いえいえ、この程度ではやりませんよ。貴女を完膚なきまでに叩きのめそうと思っていますから。」
「調子に乗るな‼」
カーリスは私の頭に向けて斬り掛かって来た。
だがその攻撃を剣で躱すと、一歩踏み込んでから体の向きを変えようとして…柄がカーリスの顔を殴ってしまった。
「あ、ごめんなさい!止めるつもりが当たってしまいました。」
「態とだろ?」
「そうです、態とですよ。あれだけの口を叩いた癖に、この程度の攻撃も躱す事が出来ない何て…それで良く私に痛い目を遭わすとか言えたものですね?」
「くっ…!」
カーリスは再び振り被って強撃を入れて来た…が、私は剣で弾いた。
すかさずカーリスの首に刀身を当てた。
そしてカーリスは再び斬り掛かって来たが、全て弾かれて首に心臓に…という感じで全ての急所に刀身を当てた。
「いい加減、実力の差に気付いてくれませんか?これで貴女は何度死にました?」
「まだだ!アタイの本気の剣を見せてやる‼」
「おや?とっくに本気だと思っていましたけど?」
「抜かせ‼奥義!紅蓮蝶の舞‼」
多彩な方向からの高速剣で私目掛けて攻撃を仕掛けて来た…が、それ等の剣を合わす事も無く全て躱してから首に刀身を当てた。
「何で…この技を躱せるんだ⁉この技は親父でさえ躱せなかったのに…」
「それは親心で正面から受けていただけで、本来なら躱せたでしょうね。それにこの技ですが、動いている的に当てる様に訓練はしましたか?軌道から察するに、動いていない標的に対しての攻撃に見えましたが?」
カーリスは地面に剣を差して膝をついて頭を垂れていた。
言葉通りに完膚なきまでに叩きのめした…というか、少しやり過ぎた。
このままそっとしておこうかとも思ったのだったが、そうも言っていられない状況になったのだった。
「あら?さすがに少し騒ぎ過ぎましたか!」
「あぁ?」
闘技場にデュラハンとシャドウナイトが10体現れた。
「な…何だよアイツ等は⁉」
「ここは学園内の闘技場ではなく、私が作ったダンジョンの闘技場だったのですよ。だけど少し騒ぎすぎて魔物達に見付かってしまったようです。」
「こんな奴等…」
「デュラハンとシャドウナイトの9匹を引き受けますので、1匹はカーリスさんにお願いします。パラディンなのですから、1匹位は倒せるでしょ?」
テルパは敵を引き付ける挑発スキルでデュラハンとシャドウナイトを引き付けて場所を変えた。
カーリスは目の前にいるシャドウナイト相手に剣を構えた。
「アタイは今ムシャクシャしているんだ!八つ当たりに付き合って貰うぞ‼」
カーリスは攻撃を仕掛ける…がシャドウナイトはカーリスの剣を簡単に弾いた。
カーリスは何度も攻撃を仕掛けるが、シャドウナイトに掠る事どころか攻撃を当てる事が出来なかった。
シャドウナイトは反撃として、剣先でカーリスの体を剣先で軽く斬って行った。
致命傷にはならないが、動く度に傷口から血が流れていた。
カーリスは追い込まれる度に剣の鋭さが増して行った…が、それでもシャドウナイトに攻撃を一切当てる事が出来なかった。
「パラディンで加護持ちでもその程度ですか?」
「先生⁉先生が引き受けた魔物達はどうしたんですか⁉」
「倒したに決まっているじゃないですか。あの程度は敵ではありませんから…」
「くっ…先生、見てないで助けるという事はしないんですか!」
「危なくなったら助けますよ。ですがまだ余裕がありそうではないですか!頑張って倒してみてくださいね。」
結構…無茶振りを振った。
此処はダンジョンの80階層で、敵の強さはレベル80と同程度…カーリスが如何に優れたジョブで加護持ちであっても、本当の死闘を知らない者に勝てる訳が無かった。
カーリスは何度もシャドウナイトに斬り掛かるが、その攻撃は全て避けられた。そして反撃で手の甲の腱を斬られると、剣を落として拾い上げる事が出来なくなっていた。
カーリスは地面に落ちた剣を何度も触れて持ち上げようとするが、手に力が入らずに拾い上げる事が出来なかった。
そしてシャドウナイトはカーリスの剣を踏み付けながら、カーリスを蹴り飛ばした。
カーリスは吹っ飛んで行き、すぐに体勢を起こしたが…手元に武器が無いのであたふたと左右を確認しているだけだった。
「そろそろ助けてあげましょうかねぇ。それにしても、シャドウナイトの攻撃はイヤらしい攻撃をしますが…あんな風に設定したっけ?」
シャドウナイトはまるで弱者をいたぶる様に剣では攻撃せずに、拳で殴ったり足で蹴りを入れていた。
カーリスは殴られて蹴られる度に分かり易くダメージが表面に表れていた。
そして涙目になりながらも体を丸めて攻撃に耐えていた。
「カーリスさん、助けはいりますか?」
「見てないで助けてくれよ!」
「助ける為には条件があります。これから先生の言う事には絶対服従で、今後は真面目に授業に出ると約束をして下さればお助けしますよ。」
「分かったから助けてくれ!」
「あ、でも…カーリスさんは先生との約束を平気で破りましたよね?そんな人の話を真に受ける程、先生は馬鹿ではありませんよ。」
あの時の出来事を少々意地悪く仕返しをした。
「分かったから、早く助けて下さい!」
テルパはシャドウナイトの攻撃を魔法で拘束して止めた。
「貴女の口約束は信用出来ませんので、契約魔法を使用しますね。アグリメンス!」
「そんな物を使用しなくても約束は守る‼」
「拘束…解きますよ?」
「わ、分かった!アグリメンス‼」
互いの契約が完了し、テルパは剣でシャドウナイトを消滅させた。
「これで約束は果たされましたので、明日から宜しくお願いしますね!」
「アタイが手古摺っていた相手をあんな一瞬で…」
「先生は色々な場所で死ぬ様な位の経験をしていますからね。ヒール!」
カーリスの怪我を完全回復させると、カーリスは立ち上がって落ちていた剣を拾った。
「これからアタイは先生の授業に出てやるよ。だが、それは先生に従う訳ではない!このダンジョンは先生が作ったダンジョンだって言ったよな?」
「はい、このダンジョンは先生が演習場の疑似魔物の装置を廃棄して作ったダンジョンです。」
「ならアタイの目標は、強くなってアタイに恥を欠かせたあの魔物を倒す為だ!先生の授業を受ければ、アタイは強くなるんだろ?」
「それはカーリスさん次第ですが、私は貴方が強くなれる様に指導はしていきますよ。」
「なら、アイツを倒せるまで先生に従うよ。」
「目標が低いですが…まぁ、最初はそれ位で良いでしょ。では戻りましょうか!」
テルパは転移魔法を使用すると、カフェテラスに戻って来た。
「授業は明日から開始致しますので、ちゃんと来るのですよ!」
「契約魔法を使ったんだから行くよ。明日から宜しくな!」
カーリスはカフェテラスを出て自室に戻って行った様だ。
「これでまずは1人…残りの4人もこう楽に事が運ぶと良いのですが…?」
テルパの懸念した通り、他の4人はこんなに簡単には行かなかった。
残り4人…5人そろって授業が出来る様になるのはいつになるのだろうか?
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