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第一章

第十二話 テストプレイヤー

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 「私のクマちゃ~ん!」

 「ワシのロンベリー産の74年物~~~!」

 「僕のマンドラ子~~~!!!」

 「エリザベッス、今迎えに行くよ~~~!!」

 「ふむ、やはり…講師達の大事な物が絡んでいるとやる気が違うな!」

 元冒険者以外の考えが甘く、実戦を知らないで机上の空論で物を語る講師達に完成したダンジョンの実験台になって貰った。

 初めは学園長からの指示で講師達にダンジョンに入って体験して欲しいと伝えたのだが?

 何かと文句を言って行きたがろうとしなかったので…予め講師達の部屋に入って鑑定魔法で講師達が大事にしている品を拝借して、地下20層に置いて来たのだった。

 その事を伝えてから、3日以内に取って来なければ自然消滅をする…と脅しをかけた。

 自分の隣では、学園長や元冒険者の方々が少し呆れていたのは言うまでもない。

 「テルパ君、少しやり過ぎの様な気がしますが?」

 「大丈夫ですよ、たかが地下20層ですから!まぁ、実戦をあまり知らない人達には酷かもしれませんが、レベル20弱の魔物に対抗出来ない様じゃ英雄学園の講師は務まらないでしょう。」

 「あのテルパ先生、私は元冒険者でダンジョン経験者ですが…このダンジョンはどの程度の難易度のダンジョンなのでしょうか?」

 「1層降りる毎にレベルが+1追加されますので、地下1層ではレベル1も魔物が…2層ならレベル2の魔物が…という感じになっています。」

 「これ、100層まであるのですよね?」

 「はい、なので100層はレベル100の魔物が徘徊しています。それ以外にも…」

 「それ以外にも?」

 「階層によっては壁を採掘すると鉱石が採れますし、他の階層では薬草や薬品による素材が回収出来たりします。」

 「救済処置とかはあるのですか?」

 「このダンジョンは1層毎にボス部屋があり、ボスを倒さないと下の階層には行けませんが…ボス部屋の前にはセーフティゾーンと回復の泉があります。更に+10階層毎に地上に転移出来る転移陣がありますので戻るのには便利ですし、地下50階層までは死ぬ様な怪我を負ったり、全滅したりした場合は地上に強制的に戻ります。」

 「なんだか、アビスゲートの虚構の煉獄に似ていますね?」

 「あのダンジョンを作ったのも自分ですから。あそこに比べれば、このダンジョンは遥かに優しいダンジョンですよ。」

 「アビスゲートがテルパ先生が作ったとは!私が冒険者時代に挑みましたが、地下3層より下には行けませんでしたね。」

 自分の作ったアビスゲートは、Cランク以上の冒険者なら誰でも入れる。

 だけど実際には、Cランク程度では良くて2層が限度だろう。

 それ位に難易度が高いダンジョンだったのだった。

 「テルパ先生、彼等は無事に達成して戻って来れるのですか?」

 「大丈夫じゃないですか?」

 「その根拠は?」

 「3日以内に地下20層まで辿り着かないと、彼等の大事な物が消滅すると話してありますし…互いに協力をすれば問題はないかと?」

 「戻って来た時に偉い剣幕で怒鳴り込んできそうな気もしますが…」

 「それも平気です。地下10層までは迷宮型ですが…地下11層からはフィールドダンジョンにしてあって…研究者や魔道士の講師の方々には魅力的な素材や薬草が数多く配置してあります。地下20層に辿り着いて大事な物を回収した後に、また行きたいという欲求が湧いてくるでしょうから、自分に構っている暇はないと思いますよ。」

 「見事な飴と鞭ですね。ですが、これなら生徒達にも使用出来るので安心ですね。」

 「はい、講師達の後には生徒達にも開放しますよ。ただ…甘く見ていると痛い目を見る事になりますけどね。」

 「それはどういう意味ですか?」

 「演習場にあった疑似魔物とは違って、ダンジョン内の魔物は人を見たら真っ先に襲って来るように設定していますからね。疑似魔物はこちらが攻撃しない限り抵抗はしないという甘ったるい物みたいですが…」

 「本格的なダンジョンと思った方が良いという事ですか?」

 「そうではないと、生徒達も本気に取り組みはしないでしょうからね。」

 その後…3日以内に地下20層まで辿り着き、講師達は自分の大事な物を取り戻す事が出来た。

 ただ、研究に役立ちそうな素材があるという事でまた入り込もうとしていたみたいだが、学園長が授業のない時間帯ならと許可を出した。

 結果的に講師達もやる気を起こす事が出来たのだが?

 それ以下の階層に行くと、もっと希少な素材があるという話はしない方が良いだろうな。

 とりあえずは成功という事で、生徒達にも開放する事にしよう。

 まずはゴブリン討伐で失敗した彼等に入らせてみようかねぇ?
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