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第一章

第九話 そして現実を知る

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 「やはりこうなりましたか!」

 「そんな、この子達が何故⁉」

 「これがこの子達の実力ですよ。ラウリス先生は彼等を過大評価し過ぎだったんです。」

 他の生徒達は、クラスで実力のあるラス君達を見て声を出せずにいた。

 さて、何があったのかを説明しましょう。

 ~~~~~ゴブリンの巣~~~~~

 入り口で見張りのゴブリンを始末したラス達は、ますます調子に乗り始めていた。

 「俺達がゴブリンなんか楽勝だと言っているのに、テルパ先生は分かって無いなぁ!」

 「この調子では、簡単に巣の中のゴブリンを全滅させられますね!」

 そう言ってラスの4人パーティーは、警戒もせずにゴブリンの巣の中に入って行った。

 ラスのパーティーは、赤の魔道士のラス、水の魔道士のクリア、剣士のフレッド、ヒーラーのアリスで構成されていた。

 そしてラスとフレッドの武器はロングソードでクリアとアリスの武器はスタッフだった。
 
 更に防具に関しては、厚手の服のみで大した鎧とかは身に付けてはおらず、盾も持ってない状態だった。

 彼ら曰く…魔物は先制攻撃で倒せば問題無しという考えだった。

 「何か臭いな…」

 「奥に進むにつれて鼻が曲がりそうな臭いがしますね。」

 メンバー達は鼻と口をハンカチで覆ってしまっていた。

 なので肝心の匂いが嗅ぎ取れなかったのだった。

 そして通路の岩陰から突然出て来たゴブリンに対して、ラスとフレッドは剣を抜こうとしたが壁に柄が当たって抜けずにいた。

 この2人は威力の高い攻撃は振り被った反動での一撃と思っていたので、何とか体制を変えながら剣を抜こうとしていた。

 だが、焦れば焦る程…剣は鞘に引っ掛かって抜く事が出来ずにいた。

 「ここは俺が魔法で!」

 ラスはファイアボールを唱えた…が、突然周囲が爆発したのだった。

 その爆発により、ゴブリンに火傷を負わせる事が出来たが、同時に自分達も爆発に巻き込まれて、その衝撃で耳がやられて聞こえなくなっていた。

 もしも鼻と口を布で覆わなければ、ガスの臭いに気付いた筈だったのだが…?
 
 そして彼らは次の攻撃に備えて、皆と言葉を交わそうとしていた…が、爆発により耳の鼓膜に影響が出ていて互いの声が全く聞こえなかった。

 互いの声が聞こえない…だけなら良かったのだが、その声は遠く離れたゴブリン達にも聞かれていた。

 さらにその話声で、男女2人ずつというのも知られてしまっていた。

 ゴブリン達は、岩陰の通路を通り抜けながらラス達の元に来て囲む様に襲って行った。

 ラスとフレッドの剣は結局抜く事が出来ずにゴブリンの棍棒の攻撃を防ぐ形になっていた。

 そしてクリアとアリスも杖を構えて応戦しようとしたが、ラスやフレッドと同様に狭い洞窟内で杖の向きを変えようとするたびに壁に引っ掛かり、魔法が発動出来ずにいた。

 そしてラス達は数で覆いこまれてから棍棒などで殴られて、クリアとアリスは杖を折られてから洞窟の奥へと連れ去られてしまったのだった。

 ラスとフレッドは追い掛けようとしたが、背後から殴られて地面に倒れると…具部リンたちに一斉に殴られて気を失う羽目になった。

 「やっぱり…こうなったか!」
 
 「テルパ先生、どうしました?」

 「ラス君のパーティーが全滅したので、殺される前に回収して来ます。」

 「そんな…あの子達が⁉」

 テルパは巣の洞窟に向かってから、巣の中に向かって睡眠魔法を展開した。

 そして洞窟内の全ての生き物を眠らせてから通路を進み、ラスとフレッドを回収。

 さらに奥に進んでから服を破かれて下着姿になっていたクリアとアリスを回収してから、転移魔法で結界の地点に移動した。

 ラス達の無残な姿を見て、ラウリス先生や他の生徒達は何も言えなかった。

 クラスの中でも上位の実力の者達が馬鹿にしていたゴブリン退治でこんな姿にされたのを目の当たりにしたからだった。

 テルパは用意していた毛布を4人に掛けると、目が覚めるまで待った。

 「私は信じられません!実力がある子の子達がこんな無様な姿になるなんて…」

 「実戦を知らなければ、どんなに実力があってもこんな物です。さて、彼等が目覚めたら反省会をしましょうか。」

 30分後、ラス達は全員目が覚めた。

 そして…反省会が始まるのだった。
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