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本編

最終話 前編

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 私は誰かに呼ばれる声がして目が覚めた。

 久々に深く寝入っていて…当たりを見ると以前まで見ていた風景とは少し違っていた。

 私は誰かに呼ばれた声を思い出して、地面周辺を探してみたけどそこには誰の姿も無かった。

 「あれぇ~? 気の所為だったのかなぁ?」

 もしかすると寝ている時に夢を見ていて…その時に誰かに呼ばれたのかと思ったのだけど、気の所為だと思って再び眠りに入ろうとした。

 『マーテルリア、眠るんじゃありません‼︎』

 「んあっ?」

 明らかに幻聴では無かった。

 私は再び地上を見たけど、やはり誰も発見出来なかった。

 『下ではありません、上ですよ。』

 そう言われて私は正面に目を向けると、そこには真っ白な法衣を着た金髪で光り輝く女性が立っていた。

 「………幽霊?」

 『誰が幽霊ですか! 私は女神リーチェです‼︎』

 「女神様!…というか、私の声が聞こえるのですか⁉︎」

 『貴女の声は聞こえております。』

 「あぁ…誰かとの会話なんて久しぶりです! ですが、私は今非常に眠いので…起きたら話をするという事でも良いですか?」

 『だから寝ないで下さいって言っているでしょ‼︎』

 女神リーチェは荒い息を吐きながら私を睨んでいた。

 まぁ…眠いけど、女神様からの話があるというのなら起きるしかないか…

 私は大きな欠伸をしながら眠気を飛ばした。

 『貴女は私に対して、随分良い度胸ですね…』

 「凄く眠くて…でも、女神様の話ならちゃんと聞かなければと思いまして。」

 『まぁ、良いでしょう…』

 女神リーチェは溜め息を吐きながら話し始めた。

 『まずは御礼をしなければなりませんね、マーテルリア…此度は魔界神帝グラシャラボレアスの討伐をありがとうございます。 彼がこの地から放たれたらどの様な厄災が地上を覆うかと…』

 「私はあくまでもグラシャラボレアスを弱体化させただけですよ。 倒したのは別の者達です。」

 『でも、貴女が自己犠牲である終焉の歌を発動しなければ…』

 「お陰で私は世界樹になりましたけどね。」

 私はカラカラと笑いながら話した。

 『そんな貴女に朗報です! 貴女はもう一度、人の姿に蘇らせてから人生を謳歌して差し上げましょう。』

 「人の姿に…って、世界樹はどうなるの? 世界樹が無くなれば、また瘴気が穴から溢れ出すのでは?」

 『それは…本来、貴女に聖女の印を移したダイアという者に身代わりになって貰います。』

 ダイア…ねぇ?

 あの子はまだ生きていたんだ?

 そう言えば…パケットの話でも処刑されたという話は聞かなかったわね?

 「でも、私の身体は世界樹そのもので…蘇らせるってどうやって?」

 『貴女の左側の枝に実がなっているでしょう? その実は世界樹の恩恵という実で、その実から本来のマーテルリアとしての肉体が生まれるのです。』

 確かに私の左側の枝には大きな実がなっていた。

 私が眠りに着く前は、私の身体にも実がなるんだ~と思っていて、どんな味がするんだろうと気にはなっていた。

 『言っておきますが…世界樹の恩恵は食べるものではありませんから、仮に食べれたとしても味なんかありませんよ。』

 「なら、この実は何に使われるの?」

 『世界樹の恩恵は、他の地の土地が枯れた場所を潤わせる力を秘めているのです。 ですが、今回は特例として貴女を蘇らせるために使いますが…』

 女神リーチェは私の身体に手をかざすと、強い光を発してから私の意識は別な場所に移された。

 そして落下する様な気分を味わった後に、地面に激突してから実が砕けて空を見上げた。

 それは世界樹だった時に比べて、空が遠くに感じた。

 「あらら…随分と空が遠い…って、なんで私は裸なの⁉︎」

 『貴女ねぇ…最初に気にするところはそこなの? 普通ならそこは喜ぶところじゃないの?』

 「まぁ、嬉しいと言えばそうなんだけど…流石に裸だと恥ずかしいわ!」

 『はぁ…仕方ないわねぇ。』

 女神リーチェは世界樹の葉を1枚取ると、私に向かって投げてよこした。

 私はその葉で身体を包むと、葉はドレスに変化した。

 「葉がドレスに…便利な能力ね!」

 『貴女に与える恩恵は、人の姿に蘇らせるだけじゃ無いわ。 私の力を幾つか渡してあげるから…それで残りの人生を謳歌しなさい。』

 女神リーチェは私に手をかざすと、頭の中に様々な魔法やスキルが入って来た。

 「これだけあったら…なんでも出来そうね!」

 『貴女にはそれだけの物を与える価値がありますからね。』

 女神リーチェはそう言い終わると空に上がっていく姿を見た。

 「ちょっと待って女神様! 私は深い眠りに入る前から何年の時が過ぎたの? 周りの景色が大分違うんだけど‼︎」

 『ごめんなさいね、私には時間の概念というのがなくてね…数十年の時が流れているというくらいしか分からないわ。』

 「数十年⁉︎」

 『後は自分の目で確認してね。』

 そういうと、女神リーチェはその場から消えて行った。

 …っていうか、何で今目覚めさせたの⁉︎

 もっと早く目覚めさせてくれても良かったんじゃないの⁉︎

 数十年も時が経っていたら、いや…本当に数十年で済んでいるのかな?

 私は急いでその場から離れて、ゼーヴェンス王国向かって歩き出した。
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