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本編

第十五話 ファステス王子 自分の頭の悪さを知る

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 ファステス王子は暇を持て余していた。

 本来の王子なら暇なんかあるわけがなく、山の様に積まれた勉強資料をこなさなければならないのに、全く手をつけていなかった。

 本人にやる気がなければそれは暇となる。

 そんな事よりもファステス王子は何としてもマーテルリアに会いに行ける方法がないかを探しているのだった。

 ファステス王子はある程度の権限は与えられてはいる…が、全てでは無い。

 北の区画から南の区画に行くのが面倒だから、城内を通って南の区画に行けないかどうかを命令した所…理由を尋ねられた。

 理由はマーテルリアに会いに行くと言ったら却下されたのだった。

 別に南の区画に行く事自体は問題は無い…が、理由がマーテルリアに会いに行くでは当然許可は降りなかった。

 そしてファステス王子は嘘を付いたのだが…?

 最初にマーテルリアに会いに行くと言われたから、他の適当な理由を付けて命令しても許可が降りなかった。

 そこでファステス王子は、自分よりも権限のある父親…国王陛下に頼む事にした。

 …が、当然却下された。

 ただし、1つだけの条件を除いて…?

 「婚約者に会いに行きたいからと言うのであれば、東か西の区画を抜けて行くになら別に構わんぞ!」

 「それが面倒なので、城から南の区画に行きたいのですが…」

 「それはならん! どうせ来年になれば会える訳だし、それまでは大人しく待っていろ‼︎」

 「くっ…!」

 そう言われて素直に引き下がるファステス王子では無い!

 だが、その場では従ったフリをして謁見の間から出て行った姿を見て国王陛下は言った。

 「今のお前に東も西の区画を通れるとは思えんがな…」

 ファステス王子は西の区画から通ってマーテルリアに会いに行く為に、通路を通っていると…奇妙な扉があった。

 そこにはドアノブがなく、扉に文字が刻まれていた。

 【問題! ゼーヴェンス王国の初代国王の名前を入力せよ‼︎】

 「は?」

 王族なら知っていても当然な問題…の筈が、ファステス王子は分からなかった。

 「初代国王の名前って…偉く長くてややこしい名前だった気がする? ハリハリベルソ…ちがうな、アリカリアオリ…?」

 ファステス王子は幾ら考えても名前が分からずに、パネルを適当に入力した。

 …が、適当に入力して正解に辿り着く訳もなく、2時間の格闘の末に…

 諦めて東の区画から向かおうとしていた。

 だが、東の区画にも同じ問題の扉があり、同じ問題が書かれていた。

 「此処もかよ! だからシラねぇっつーの‼︎」

 ファステス王子は答えが分からずに、扉が開いてから通り抜けようと考えていた。

 だが、いつまで待っても扉が開かれる事も無く…やっと開いて通り抜けたら、また別の扉が待っていた。

 【問題! 初代聖女の名前を入力せよ‼︎】

 「だから、知らねぇよ‼︎」

 ファステス王子は確かピエスの授業で習った気はするが、朧げに覚えていた程度だったので…正解に導ける訳もなく、部屋に戻る為に元の場所に戻った。

 …が?

 【問題! ゼーヴェンス王国の初代国王の名前を入力せよ‼︎】

 「げげっ⁉︎」

 この通路に窓は一切無いし、壁は分厚い大理石。

 壁を破壊する道具はないし、扉が開かない限り出る事も許されない。

 ファステス王子はすぐにでも部屋に戻りたくてパネルを何度も入力するが、正解に辿り着く事はなかった。

 腹が減り、尿意が襲って来て動く事ができず…そして扉は開く気配も無い。

 一分一秒を争う事態でも、正解に辿り着けなかったファステス王子は…漏らしてしまった。

 そしてピエスが騎士達を連れて扉を開いてファステス王子を迎えに来たのだが…?

 ファステス王子は手で顔を覆いながら地面に横になっていた。

 「王子、これで分かったでしょ? 勉強が如何に大事な事かを…」

 ファステス王子は無言で頷くと、そのまま騎士に抱えられて部屋へと戻って行った。

 その報告を聞いた国王陛下は、溜め息を吐きながら言った。

 「やはりあの馬鹿に通れる訳が無かったか…」

 ファステス王子は心を入れ替えて勉強に身を置く事になった。

 そしていつかまた挑戦して正解を導き出して…マーテルリアに会いに行くと‼︎
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