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本編

第十一話 ファステス王子 不満

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 ファステス王子殿下は不満を漏らしていた。

 8歳の誕生日にマーテルリアを婚約者に選んでからというのに全く会えない事に。

 「一体いつになったら俺に会いに来るんだ‼︎」

 この件の説明は12歳になる迄は会えないと事前に聞かされている筈なのに、ファステス王子はその事を軽く聞き流していた。

 「同じ王宮内にいるんだぞ! 何故奴は俺に会いに来ようとはしない⁉︎」

 ゼーヴェンス王国の城内は無駄に広い。

 中央に位置する城、その周りに4つの区画がある。

 東西南北で分けるとしたらファステスがいる場所は北の区画で、マーテルリアがいる場所は南の区画だった。

 北の区画から南の区画に行くには、特別な許可が無い限りは中央の城から通るわけには行かず…東西の区画を抜けて南の区画に行かなければならなかった。

 その距離が半端じゃない位に遠くて、歩きでも丸一日掛かる距離だった。

 …とは言っても直線距離というわけではない。

 ゼーヴェンス王国は元々は要塞都市で、区画の内部は色々入り組んでいて、迷路の様な作りをしていた。

 まぁ、侵入者が入って来ても城に簡単に行けないような作りになっていた訳で…

 今でこそ平和な世なので面倒な作りだったが、魔王の時代にはとても重宝していたらしかった。

 「本当に無駄に広いな、この区画は…」

 この城で雇用される条件は、ある程度の知識が高い者達が選ばれる。

 何故なら…知識が低い者達だとすぐに迷子になって迷惑が掛かるからだった。

 何故ファステス王子がマーテルリアから会いに来ない事に怒り心頭だったのかというと?

 知能の低いファステス王子では、途中に迷子になって南の区画まで辿り着けないからだった。

 だからマーテルリアが会いに来るのが当然で…ぶっちゃけ、会いに行くのが面倒だからであった。
 
 ファステス王子は今すぐにでもマーテルリアに会いたくて、こちらに来る様に命令書をしたためて騎士に命令して送る様に命じた。

 だがその手紙は途中で検査されて…マーテルリアの元に届く事はなかった。

 そしてその事を知らされていないファステス王子は、数日後に音沙汰がない事を知ってまた苛立つ事になっていた。

 「俺の呼び出しに応じないなんて…」

 だから、12歳まで会えないっつーの!

 ファステス王子は別の策を考えるのだった。
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