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第25話 子ども探偵団の捜索
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「で、抜け出したはいいけど、どこ探す?」
美桜はあちこちをキョロキョロしながら優太に問いかけた。
「校内の怪しそうな所は綾小路さんが探したから校外だよな。校庭の裏側をぐるっと回ろう」
優太は西側の花壇沿いを歩き出した。
「と言っても、堂々と置いてあるとは思えないよ? 優太君」
「木を隠すなら森の中、というじゃないか」
「木の葉を隠すなら森の中、じゃなかった?」
「美桜、お前細かいな。どっちでもいいよ」
「案外、畑などに分散させてさりげなく置いてありそう」
美桜が閃いたように言うが、優太は否定した。
「いや、今まで通る途中の花壇や畑を見ながら歩いているが、そんなものはなかった。その仮説はボツだな」
そんなやり取りをしているうちにちょうど北校舎の真裏に来た。ここにも花壇があり、吉田先生が作業を続けていた。
「あら、坂本君に池内さん。サッカー教室じゃないの?」
吉田先生は作業の手を止めて、にこやかに二人に話しかけた。
「今、休憩中なんです。なでしこ代表さんと話したかったけど、男子が群がって無理っぽいから諦めて校舎内を散歩してます」
美桜がハキハキと答える。
「まあ、それで坂本君とデートしているのね。ふふふ」
吉田先生は笑ったが優太は内心どぎまぎしていた。
美桜は気づいたのかどうか、クールなまま先生に質問をする。
「先生はずっとお手入れを?」
「ええ、休日じゃないとゆっくり出来ない作業してたの。枯れている百合の花を取り除いたり、他にも皆の朝顔もチェックして虫除けスプレー撒いたりしてね。春アサツキもそろそろ刈り取って夏アサツキを植えないと」
「……本当にこの街はアサツキが特産なんだな。給食には毎回何かしらのアサツキメニューがあるし、学校にまで植えてあるのには驚いたっけ」
「あ、そっか。優太君は去年東京から引っ越してきたのだっけ。私は当たり前に育ったから、変な感じはしなかった」
「そう! 池内さんの言うとおり浅葱の町はアサツキの街でもあるのよ。そうそう、アサツキ植える前に肥料も追加しないと」
「先生! その肥料って……!」
「吉田先生は農家とか花屋になった方が良かったんじゃね?」
美桜が言いかけるのを遮るように優太がツッコミを入れると、吉田先生は唸るように考え始めた。いきなり核心をついてはまずいような気がしたのだ。
「そうかもねえ。でも子どもに勉強を教えるのも好きだし。でも、栽培委員会やってるし、そのうち園芸部も作りたいわね。この肥料も河田先生が差し入れてくれたのよ」
「!!……。むしろ、あれだよ。農業高校の先生なら一石二鳥だったんじゃない?」
優太は核心を突きたいのをこらえ、雑談を続ける。
「まあ、そうすれば確かに良かった! なんで思いつかなかったのかしら!」
スコップ片手に頭を抱える吉田先生は本当に天然な人のようだ。
(こうして話すと天然だし、盗みをする悪い人には見えない。となると、容疑者は肥料を差し入れた河田先生か、それとも吉田先生もグルなのか……)
優太は思考を巡らせるがいろいろグルグル考えが混乱して整理がつかない。
「優太君、そろそろ休憩終わりだから戻ろうよ」
「あれ? もう? 吉田先生、今、何分?」
吉田先生は腕時計を見ながら答えた。
「今、四時十二分ね」
「やべぇ! 十分までだった! 美桜、戻るぞ!」
「待ってよ、優太君」
優太がものすごい勢いで走り出したのを、美桜は慌てて追いかけた。
せっかくの探索タイムも空振りだったのも悔しいが、二人揃って遅刻はまた皆に冷やかされる。慌てて皆の所へ戻ったが、ちょっと間に合わなかったようだ。
「はーい、皆戻ったかな? あれ? 優太君と美桜ちゃんは?」
すみれはキョロキョロと見回すが二人の姿が無い。
「きっとデートだょー」
「ヒュー」
「ちょっとでも二人きりになりたいのかぁ」
子供たちが冷やかすが、すみれは二人が肥料の探索をしているのは知っている。探しすぎて遅刻しているのかもしれない。こちらが探しに行くべきか。
と、思ったところに二人が息を切って現れた。
「す、すみません。裏庭で吉田先生とおしゃべりしてて、お、遅れました」
「よぉっ! お二人さんデートかい」
「お熱~い」
「青春だなあ」
「っるせーな! 吉田先生と喋っただけだよ!」
「ちょっと、男子! うるさいよ!」
「はいはい、皆揃ったから再開するよ!」
すみれがザワつく子ども達を宥めたが、以前の皆の美桜に対する態度が変わっていることにも気づいた。
(以前は美桜ちゃんを嘲笑していたけど、今は恋絡みの冷やかしなんだね。マシになってきたのかな。友達が一人でもできると変わるものだね)
淡々とドリブル練習している二人を見ながらすみれはしみじみとしていた。
しかし、表情からして探索は失敗したらしい。何かしら手がかりを得たならもうちょっと明るくなりそうだが、あの淡々とした練習ぶりからそんな感じはしない。
(しかし、探索は空振りっぽそうだね。あとで細かく聞いてみるか)
美桜はあちこちをキョロキョロしながら優太に問いかけた。
「校内の怪しそうな所は綾小路さんが探したから校外だよな。校庭の裏側をぐるっと回ろう」
優太は西側の花壇沿いを歩き出した。
「と言っても、堂々と置いてあるとは思えないよ? 優太君」
「木を隠すなら森の中、というじゃないか」
「木の葉を隠すなら森の中、じゃなかった?」
「美桜、お前細かいな。どっちでもいいよ」
「案外、畑などに分散させてさりげなく置いてありそう」
美桜が閃いたように言うが、優太は否定した。
「いや、今まで通る途中の花壇や畑を見ながら歩いているが、そんなものはなかった。その仮説はボツだな」
そんなやり取りをしているうちにちょうど北校舎の真裏に来た。ここにも花壇があり、吉田先生が作業を続けていた。
「あら、坂本君に池内さん。サッカー教室じゃないの?」
吉田先生は作業の手を止めて、にこやかに二人に話しかけた。
「今、休憩中なんです。なでしこ代表さんと話したかったけど、男子が群がって無理っぽいから諦めて校舎内を散歩してます」
美桜がハキハキと答える。
「まあ、それで坂本君とデートしているのね。ふふふ」
吉田先生は笑ったが優太は内心どぎまぎしていた。
美桜は気づいたのかどうか、クールなまま先生に質問をする。
「先生はずっとお手入れを?」
「ええ、休日じゃないとゆっくり出来ない作業してたの。枯れている百合の花を取り除いたり、他にも皆の朝顔もチェックして虫除けスプレー撒いたりしてね。春アサツキもそろそろ刈り取って夏アサツキを植えないと」
「……本当にこの街はアサツキが特産なんだな。給食には毎回何かしらのアサツキメニューがあるし、学校にまで植えてあるのには驚いたっけ」
「あ、そっか。優太君は去年東京から引っ越してきたのだっけ。私は当たり前に育ったから、変な感じはしなかった」
「そう! 池内さんの言うとおり浅葱の町はアサツキの街でもあるのよ。そうそう、アサツキ植える前に肥料も追加しないと」
「先生! その肥料って……!」
「吉田先生は農家とか花屋になった方が良かったんじゃね?」
美桜が言いかけるのを遮るように優太がツッコミを入れると、吉田先生は唸るように考え始めた。いきなり核心をついてはまずいような気がしたのだ。
「そうかもねえ。でも子どもに勉強を教えるのも好きだし。でも、栽培委員会やってるし、そのうち園芸部も作りたいわね。この肥料も河田先生が差し入れてくれたのよ」
「!!……。むしろ、あれだよ。農業高校の先生なら一石二鳥だったんじゃない?」
優太は核心を突きたいのをこらえ、雑談を続ける。
「まあ、そうすれば確かに良かった! なんで思いつかなかったのかしら!」
スコップ片手に頭を抱える吉田先生は本当に天然な人のようだ。
(こうして話すと天然だし、盗みをする悪い人には見えない。となると、容疑者は肥料を差し入れた河田先生か、それとも吉田先生もグルなのか……)
優太は思考を巡らせるがいろいろグルグル考えが混乱して整理がつかない。
「優太君、そろそろ休憩終わりだから戻ろうよ」
「あれ? もう? 吉田先生、今、何分?」
吉田先生は腕時計を見ながら答えた。
「今、四時十二分ね」
「やべぇ! 十分までだった! 美桜、戻るぞ!」
「待ってよ、優太君」
優太がものすごい勢いで走り出したのを、美桜は慌てて追いかけた。
せっかくの探索タイムも空振りだったのも悔しいが、二人揃って遅刻はまた皆に冷やかされる。慌てて皆の所へ戻ったが、ちょっと間に合わなかったようだ。
「はーい、皆戻ったかな? あれ? 優太君と美桜ちゃんは?」
すみれはキョロキョロと見回すが二人の姿が無い。
「きっとデートだょー」
「ヒュー」
「ちょっとでも二人きりになりたいのかぁ」
子供たちが冷やかすが、すみれは二人が肥料の探索をしているのは知っている。探しすぎて遅刻しているのかもしれない。こちらが探しに行くべきか。
と、思ったところに二人が息を切って現れた。
「す、すみません。裏庭で吉田先生とおしゃべりしてて、お、遅れました」
「よぉっ! お二人さんデートかい」
「お熱~い」
「青春だなあ」
「っるせーな! 吉田先生と喋っただけだよ!」
「ちょっと、男子! うるさいよ!」
「はいはい、皆揃ったから再開するよ!」
すみれがザワつく子ども達を宥めたが、以前の皆の美桜に対する態度が変わっていることにも気づいた。
(以前は美桜ちゃんを嘲笑していたけど、今は恋絡みの冷やかしなんだね。マシになってきたのかな。友達が一人でもできると変わるものだね)
淡々とドリブル練習している二人を見ながらすみれはしみじみとしていた。
しかし、表情からして探索は失敗したらしい。何かしら手がかりを得たならもうちょっと明るくなりそうだが、あの淡々とした練習ぶりからそんな感じはしない。
(しかし、探索は空振りっぽそうだね。あとで細かく聞いてみるか)
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