シンノシ

三日月

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11.戦川自由【竜の心臓】

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 スカル本拠地から少し離れた路地裏。

 真一は透明化し、スカルメンバーの周辺で聞き耳を立てる。彼らは超能力者だが、他組織共通のテレパシー会話をほぼしないらしく、口でぺちゃくちゃと世間話やら、スカルの内情やらかなり話す。

 聞き耳の成果でサスケと呼ばれる、スカルのリーダーの居場所がわかった。本拠地の上階を座標して瞬間移動する。

 赤い絨毯の部屋に移動した。

「………」

 サスケはなんとなく気配のする方を見たが、何もなかったので本に目をやる。フーと、一呼吸し安心する真一。ある程度逃げられる距離を取り、テレパシーを使う。

『あ、あー、聞こえますか?』
「誰だ!…
『誰だお前は』
『はじめまして、新田真一って言います』

 サスケはキョロキョロしながら真一の居場所を探す。もちろん見つけられない。すでに真一の空間能力は、並大抵の超能力者を凌駕している。

 見つけられない。それならばと、サイコスキンを広めに作り、簡単には攻撃できない様にする。真一は無駄なことをと言わんばかりの笑み。攻撃する気など皆無。

『真一、用はなんだ』
『実は僕たち、あ、僕は赤竜って組織にいるんですけど、僕たち正義の超能力者集団と対立してるんです。もちろんスカルとも』
『ああお前が特攻隊長なんだな』
『違います』

 サスケは床を抉るようにサイコウェーブを放つ。真一は瞬間移動で天井に張り付く。ビビりながら会話を続ける。

『僕はスカルに協力してほしいんです。正義を倒してください。あなたの仲間は正義にやられてます』
『誰の指図も受ける気はねんだよ』

 荒れ狂うようにサスケは、超能力を暴発させ部屋を破壊する。

『殺すぞガキ!俺は気に入らなければ殺す!好きでも殺す!悪行の限りを尽くして世界を楽しく楽にしてやる!自由な悪が俺だ!』

 スカルにある武器が辺りを破壊していく。ナイフが真一に向けて放たれ、逃げるように瞬間移動する。

「やばいな、凄くおっかない」

 冷や汗かきながら、大急ぎで赤竜基地に戻る。実際に走ったわけじゃないが、殺されかかったことで息を切らしてる。そんな真一の前に不思議そうな顔の戦川が立つ。

『どした?マラソンでもしたのか?』

 いやいやと、安堵の表情の真一。スカルでおきたことを話す。

 そうか、とゆっくり話を聞いた戦川。おもむろに立ち上がり、伏せてある写真立てを真一に渡す。

 真一の「誰?」という問いに一言だけ。「娘」と答えた。

「娘は犯罪者に殺されかけて、生死の境を彷徨ったんだ。それをエムが助けてくれた」
「ごめん」

 謝罪はスカルと手を組もうとしたこと。戦川は少し笑う。

「お前なりに仲間ことを考えたんだろ」

 真一が自身の部屋に戻るのを確認し、戦川は部屋の椅子に腰掛ける。





 その日は紅葉シーズンが終わり、肌寒く感じる日で娘の外出に上着を羽織るように言った。俺のォ娘の名前は「戦川白百合」。

 白百合は帰ってこなかった。帰らない日はたまにあった。いつものことだと心配しなかった。

 それから一週間。

 一ヶ月。

 三ヶ月。

 音沙汰なく、連絡もつかない。警察にも連絡したが、一切情報がない。

 俺ァ幸いにも、仕事が驚くほど上手くいっていて金はあった。ありとあらゆる手段をとった。

 半年。

 俺ァ白百合のことしか考えられなくなってきた。

何があった。

どこに行った。

なんで。

何で。

「なんであの日すぐに探さなかった」

 暗闇の孤独な部屋で大声を張り上げた。

「必ず助ける」
『急がなければな』

 その時誰かが俺のォ心に話しかけてきた。きっと自分の中の天使と、悪魔とか言うやつだと思った。

「急いでる、でもどうしようもない」
『どうしようもない?なんでだ』
「警察も探偵も、裏の奴らの手も借りた。でも一切見つからなかった。もうわからないんだ」
『もし見つけられるなら、助けられるならどうする?』
「助けたい、助ける。たとえ全てを犠牲にしても」

 その声の主はエムだった。エムから超能力を授かった。俺ァ白百合を助け、エムに心底感謝した。

『良かったな』
「助かった。ありがとう」
『感謝はいらない。これからお前は手足となり、使命を命令を遂行しろ』

 自由に生きた俺ァ、エムという飼い主のもとで雁字搦めの竜となった。
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