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10.敵
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ドウマン達がやられた経緯を聞き、その顛末を知り全員が沈黙する。赤竜に仲間をやられた。しかし赤竜に人員を割けば、スカルという巨悪が大きくなる。
『赤竜がスカルを潰すってなら、ボクらは動かないってことも出来るじゃないか』
ヒザシの提案は最もだ。悪と巨悪が戦ってくれれば、彼らは漁夫の利を狙える。誰もが頷き決まりそうな時。
「それはダメだ。仲間をやられて許せないし、悪の存在はもっての外だが、悪人達の争いは必ず被害が大きくなる」
ジョーは言った。彼はこの組織の誰よりも正義感が強く、そしてもっとも超能力者のことを考えている。
ジョーの野望は超能力者全員の人権確保。そのために人のために行動し、悪い印象を与えたくないだ。それを理解している仲間達はジョーの意見にも賛同する。
『……。では、こうしよう。私たちは彼らのぶつかりに、横槍を入れる形で一般市民を影から守ることにしましょう』
スカル本拠地。廃墟のビルの最上階。今にも切れそうなライトが、点滅しながらかろうじて部屋に明かりを与える。目に傷を負う男と、坊主頭の男。
「手下共がかなりやられた」
「ほっとけ。所詮は変えのきく駒の一つに過ぎない。オレたち囚人は捕まっちゃいけない。でも悪いことはやめられない。そのための駒だ」
彼ら二人は囚人。牢屋にある時、エムと名乗る男が現れ、サイキッグローブを囚人に与えて脱獄した超能力者脱獄囚だ。手下に盗ませたワインを飲み、窓を開け外を眺める。心地よい風が髪を揺らす。
「ここに攻めてくるようなら、容赦なく殺そう」
目の傷の男の名はサスケ。坊主は暴弦。サスケは五十五人を刺殺した。暴弦は酔った勢いで、一緒に呑んでいた友人三人を素手で殴り殺した。他にも共に脱獄した囚人が三人。計五人がスカルのリーダーだ。
赤竜では次の作戦が考えられていた。
『阿部、この先はどうする』
『………手を出すなと言っても、彼らは正義を名乗っている以上、争い事を止めに来るはず。今回出向いたのは、正義がどう行動するか見たかった。……スカルと赤竜は全面衝突しよう。なるべく一般人に被害が出る形で戦い、正義にも無理やり参加してもらう』
『一般人を巻き込むのか?前は傷つかない保証があったが、この作戦では難しくないか?』
『戦川さんの言いたいことはわかります。ただ作戦が上手く行けば、二つの組織を壊すことが出来ると踏んでいます』
戦川は悩む。正義だけなら一般人に犠牲は出ないが、スカルは極悪人故に殺すことも躊躇わないだろう。答えを決めあぐねている。
『戦川ちん悩むなら別な方法をやろうよ。アタシが出て一人殺す。そうすれば標的はアタシに向き、しんいっちゃんに頼んで逃げるよ』
『あみさん、この作戦は一対一が得意なボク達がスカルと戦い、スカルはボク達と戦いながら一般人にも攻撃し、それをかばうのに正義の味方が動く状況を作るんです』
青柳は首を傾げる。不敵な笑みをし、蝋燭に火を灯す。
『なんのために?スカルを倒して、消耗したアタシ達を、一般市民を守るのに疲労した正義を?必要ないわ』
青柳が指を回すと、火がみるみるうちに大きくなる。一気に蝋燭がなくなり、その炎は青柳の手に戻る。
『スカル全員、本拠地ごとアタシが壊す。そしたら赤竜と正義の一騎打ちでしょ。誰が相手でもアタシは負けない』
真一は組織の目的を考えていた。
赤竜の目的はなんだろう。エムに恨みがあるようにも思えるが、他の組織と大きく抗争になる理由が見当たらない。戦川さんがリーダーなら過去になにかあるのか。または、別な人がリーダーで、そのリーダーの指示で戦うのか?
スカルの目的は?これは多分だけど殺戮とか、強盗とか悪いことだろうな。だって犯罪者だし。しかし、その数を増やす理由はなんだろう?
正義は簡単だ。そのまま正義だろう。エムを探すことと、悪人を捕らえること。今回は悪人を捕える活動の方だな。赤竜もスカルも、善悪の二択では悪だろうし。
赤竜は他の組織と戦うことが目的だとして、スカルは悪いことが目的。正義は悪と戦う。僕のやりたいことは世界を見ること。この目的で一番邪魔な存在は正義だ。
『スカルと手を組んで、正義の奴らを一人残らず倒してもらおうか』
真一はその場から姿を消した。
『赤竜がスカルを潰すってなら、ボクらは動かないってことも出来るじゃないか』
ヒザシの提案は最もだ。悪と巨悪が戦ってくれれば、彼らは漁夫の利を狙える。誰もが頷き決まりそうな時。
「それはダメだ。仲間をやられて許せないし、悪の存在はもっての外だが、悪人達の争いは必ず被害が大きくなる」
ジョーは言った。彼はこの組織の誰よりも正義感が強く、そしてもっとも超能力者のことを考えている。
ジョーの野望は超能力者全員の人権確保。そのために人のために行動し、悪い印象を与えたくないだ。それを理解している仲間達はジョーの意見にも賛同する。
『……。では、こうしよう。私たちは彼らのぶつかりに、横槍を入れる形で一般市民を影から守ることにしましょう』
スカル本拠地。廃墟のビルの最上階。今にも切れそうなライトが、点滅しながらかろうじて部屋に明かりを与える。目に傷を負う男と、坊主頭の男。
「手下共がかなりやられた」
「ほっとけ。所詮は変えのきく駒の一つに過ぎない。オレたち囚人は捕まっちゃいけない。でも悪いことはやめられない。そのための駒だ」
彼ら二人は囚人。牢屋にある時、エムと名乗る男が現れ、サイキッグローブを囚人に与えて脱獄した超能力者脱獄囚だ。手下に盗ませたワインを飲み、窓を開け外を眺める。心地よい風が髪を揺らす。
「ここに攻めてくるようなら、容赦なく殺そう」
目の傷の男の名はサスケ。坊主は暴弦。サスケは五十五人を刺殺した。暴弦は酔った勢いで、一緒に呑んでいた友人三人を素手で殴り殺した。他にも共に脱獄した囚人が三人。計五人がスカルのリーダーだ。
赤竜では次の作戦が考えられていた。
『阿部、この先はどうする』
『………手を出すなと言っても、彼らは正義を名乗っている以上、争い事を止めに来るはず。今回出向いたのは、正義がどう行動するか見たかった。……スカルと赤竜は全面衝突しよう。なるべく一般人に被害が出る形で戦い、正義にも無理やり参加してもらう』
『一般人を巻き込むのか?前は傷つかない保証があったが、この作戦では難しくないか?』
『戦川さんの言いたいことはわかります。ただ作戦が上手く行けば、二つの組織を壊すことが出来ると踏んでいます』
戦川は悩む。正義だけなら一般人に犠牲は出ないが、スカルは極悪人故に殺すことも躊躇わないだろう。答えを決めあぐねている。
『戦川ちん悩むなら別な方法をやろうよ。アタシが出て一人殺す。そうすれば標的はアタシに向き、しんいっちゃんに頼んで逃げるよ』
『あみさん、この作戦は一対一が得意なボク達がスカルと戦い、スカルはボク達と戦いながら一般人にも攻撃し、それをかばうのに正義の味方が動く状況を作るんです』
青柳は首を傾げる。不敵な笑みをし、蝋燭に火を灯す。
『なんのために?スカルを倒して、消耗したアタシ達を、一般市民を守るのに疲労した正義を?必要ないわ』
青柳が指を回すと、火がみるみるうちに大きくなる。一気に蝋燭がなくなり、その炎は青柳の手に戻る。
『スカル全員、本拠地ごとアタシが壊す。そしたら赤竜と正義の一騎打ちでしょ。誰が相手でもアタシは負けない』
真一は組織の目的を考えていた。
赤竜の目的はなんだろう。エムに恨みがあるようにも思えるが、他の組織と大きく抗争になる理由が見当たらない。戦川さんがリーダーなら過去になにかあるのか。または、別な人がリーダーで、そのリーダーの指示で戦うのか?
スカルの目的は?これは多分だけど殺戮とか、強盗とか悪いことだろうな。だって犯罪者だし。しかし、その数を増やす理由はなんだろう?
正義は簡単だ。そのまま正義だろう。エムを探すことと、悪人を捕らえること。今回は悪人を捕える活動の方だな。赤竜もスカルも、善悪の二択では悪だろうし。
赤竜は他の組織と戦うことが目的だとして、スカルは悪いことが目的。正義は悪と戦う。僕のやりたいことは世界を見ること。この目的で一番邪魔な存在は正義だ。
『スカルと手を組んで、正義の奴らを一人残らず倒してもらおうか』
真一はその場から姿を消した。
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