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第3章 東雲学園編 九重流と文化祭
111 放課後、学園では
しおりを挟むその日、東雲学園の昼休み直後の授業は休講となった。
全生徒がセレモニーホールへと集い、壇上に目線が集まる。その視線は、大きく二つに分かれていた。
絶望と、安心。
それは東雲学園が二分されたような、異様な空気だった。
壇上には、勝ち誇った満流と絶望の面持ちの苗の姿があった。
2人の中間、ホールの舞台中央に立つ理事長の東雲志乃が小さな用紙を開く。
「選挙結果を発表します」
志乃の言葉に、全生徒が固唾を呑み、しん、と静まったホールに、志乃の声が響く。
「次期会長は、相模満流君です」
理事長の言葉は生徒全員が予測できたものだったが、それでも折り重なった小さなため息が、ホールの中を駆け巡った。
「ありがとうございます」
「……一年間、よろしくお願いします」
複雑な表情の志乃から握手を求められ、満流は笑顔でその手を取る。
「勿論です」
静かなホールで全生徒が見守る中、東雲学園の生徒会長が、決まったのだった。
光一が生徒会長の引き継ぎのため舞台袖から壇上に上がり、代わりに苗が去っていく。
光一と苗は、お互いを一瞥することもなくすれ違う。
苗は少し目を伏せて。光一は、前だけを見て。
2人の心の奥にどのような気持ちが渦巻いているのかは、誰にも察することはできなかった。
光一が『生徒会』と書かれた腕章を数枚、満流へと渡す。
生徒会のメンバーは普段は誰もつけていなかったが、それは『東雲学園のトップ』の証だった。
受け渡しの瞬間に、ホールの半分より少し多い量の拍手が鳴り、満流は満足そうに笑顔を作った。
拍手の中、満流は小声で光一へと話しかける。
「……九重会長、苗さんのこと、残念でしたね。ですが、これが結果です」
「苗は負けた。それが事実だ。お前よりも劣っていたから、負けた。それだけのこと」
「酷い言い様ですね」
「摂理だ。そして、お前もその摂理からは逃れられん」
「……どういうことです?」
満流は光一の言葉の意味がわからず眉をひそめるが、光一はそれ以上この話題を進めることはなく、満流の背を押し出す。
「さあ行け、相模。就任挨拶を皆待っているぞ」
「はい」
満流は、背に当たる有能な先輩の手の力に優しく押し出されるように、ステージの前へと進む。
生徒会長になり、前生徒会長とも友好がある。それは満流にとって何よりのステータスだった。
志乃が場所を開けたマイクスタンドの前に立つと、胸を張って口を開く。
「生徒会長となりました、純東雲生、高等部2年Aクラスの相模満流です。
みなさんが何よりも気にされている、苗さんの唱えた『生徒会軍務廃止』。それは今回の選挙において、学園の総意ではないと証明されました。
しかし、それでも一部の生徒から指摘を受けたことを踏まえ、透明化を目指します。今後も、東雲生であること、を第一に、より良い学生生活のため、邁進します」
薄暗いホールの中で、誰かが呟く。
「ほんとかよ……」
「聞こえるよ」
「こんな手を使うなんて、最低……」
「どんな手を使っても、会長となったのは相模だ。その事実は変わらんだろ。それに、証拠もないんだぜ?」
「はぁあ……今年一年、憂鬱な年になりそうだな」
満流はそのひそひそ声を、心の中で嘲った。
所詮、生徒会長戦にすら出る勇気のないものたち。上に立つ度胸もない、ただの愚図。そんなものたちの負け惜しみは、満流にとって愉快でしかなかった。
「今後の学生生活を豊かにするためのメンバーである、生徒会の役員発表は、例年通り明日、掲示板に張り出します」
満流は最前列にいる、元生徒会長候補の加藤にちらりと目線をやる。
彼の目に一瞬だけ映る加藤の顔には、笑みがこぼれていた。
「新たな生徒会の面々を、お楽しみに。以上です」
笑顔とともに颯爽と壇上から去る彼は、まさにこの世の春を感じていた。
満流は放課後、東雲学園の中を『生徒会』の腕章をつけながら自身の選挙事務所へと移動する。
様々な生徒から祝福を受け、遠巻きに向けられる敵意すら心地いい。
本来はすでに撤去しなければいけなかった選挙事務所は、『根回し』のために解体が遅れ、今日片付けることになっていた。
意気揚々と満流が多目的室へ足を運ぶと、そこにいたのは意外な人物だった。
「相模先輩。お話があります」
満流の視界に映ると同時に声をかけてきたのは、真也だった。
誰一人として選挙補佐の生徒はおらず、カーテンが締められたせいで薄暗く、表情が読み取りづらい。
満流は様々な可能性を考慮し、頭を回転させる。
真也がこの場にいるのは、今回の選挙について糾弾しに来たのだろう。では、なぜ、ここにいるのか。選挙補佐たちは何処にいるのか。録音の可能性も考え、満流は『生徒会長然』とした態度で彼に接する。
「なんだ、間宮くんか。今回は、いい勝負だった。苗さんのことは残念だったね」
「……そうですね、見事な一手でしたね。流石です」
(流石です?)
真也の言葉に、満流は眉をひそめる。
苗の味方であろう人間から発されるにしては、その言葉は『好意的』な言葉選びだ。
嫌味である可能性もあるが、彼の声はフラットなものだった。
「本当に、苗先輩じゃあ、返しようのない一手でしたね」
満流の目が徐々に暗闇に馴染み、言葉を続ける真也の表情が薄ぼんやりと浮かび上がる。
その顔は、片方だけ頬が釣りあがり、薄く笑っていた。
(こいつ、どういうことだ?)
満流は表情に出さないものの、混乱した。
苗のそばで必死にパンフレットを配っていた姿、政見放送で熱心に語らう姿。
それらから想像できた『つまらないほど真面目な生徒』という満流の印象を大きくそれた笑顔。
邪悪な笑顔だった。
この手の顔は彼がよく見てきた顔だ。
欲にまみれた、満流好みの『戦う者』の顔。
うっすらと歯を見せながら、真也は胸ポケットから細長い機械を取り出す。
「でも、これは予想できましたか? 先輩」
肩を揺らしながら真也の取り出した機械が何なのか、満流には直ぐに分かった。
しかし満流は発言を控え、敢えて聞く。
「何だそれは」
「レコーダー。これには、とある会話が録音されているんですよ」
満流は鼻で笑う。
レコーダー。会話。
おそらくは、満流が他候補たちと交わした『密談』を持ち出した脅しだろう。
(カマかけ、か。浅いな)
たしかに、密談はあった。苗を……『編入生』を生徒会長にしないために、他の候補たちに掛け合い、生徒会役員の座を確約して選挙から降りさせた。
しかし、満流も馬鹿ではない。密約は場所を厳選し、人払いも行なった。話中は補佐たちに周囲を見張らせ、誰も居なかったことも、レコーダーが設置されていないことも十分に確認した。
「ふん。そうか。で?」
目の前のレコーダーに会話が録音されている可能性など、皆無だ。
しかし、真也はニヤニヤと笑みを浮かべながら、満流に話しかけてくる。擦り寄るように、こちらの粗を探すように。
「……でしょうね。あの場には、誰もいなかったはずですもんね」
「話はそれで全部か? なら出て行ってくれ。忙しいのでね」
「あの場所に、本当に誰もいなかったんでしょうかね?」
「……何?」
何度も確認してくる真也の下卑た声に、流石の満流も訝しむ。
「確認しました? 本当に? ちゃんと?」
「いい加減にしろ」
「ちゃんと……『景色を幻影と疑って、体に衝撃を与えましたか?』」
真也が確認したのは、煙の異能の破り方。
それは、苗の兄である光一の異能だった。
政見放送前日に、二人で何か『作戦会議』に消えて行ったことを覚えていた満流は、一筋の汗を流す。
(まさか……いやしかし、相手はあの『九重会長』だ。ここは、一度下手に出てみるか)
「……何が目的だ」
満流の言葉に、真也は愉快そうに笑みを強める。もはやその顔は、満流ですら見たことのないほど『欲望に取り憑かれた』顔だった。
「目的? そんなの、分かりますよね?」
「……九重苗を、生徒会長にしろ、と?」
「ははは、今更、苗先輩を生徒会長に? ……そんなこと、どうでもいいんですよ、もう」
ぎらり、と真也の目が暗闇の中で光る。
「俺もです」
真也は、一歩、満流に近づく。
「俺も、欲しいだけですよ」
「何……?」
「女王捕獲。それだけじゃ足りないんです」
近づいたことで、より鮮明に真也の顔が浮かび上がる。
その顔は、まさしく以って『満流好み』の顔だった。
この男を、配下として扱ってみるのも悪く無い。
他人の前では『正義』ぶって、その心の奥に大きな獣を飼うこの男を、自分ならば制御できる。
苗では無理だった。でも、己であれば。
それは満流にとって、これ以上ない甘味だった。
「ほう……生徒会に興味があるのか。まあ、当然といえば当然だが……。
驚いたよ。君がそんな男だったとはな」
満流の言葉に、真也の笑みがより一層強くなる。
「俺は、俺ですよ。で、どこに座らせてくれます?」
満流は、顎に手を当てて考える。
「……そうだな。庶務でも構わんか? 生徒会参加、の肩書きは得られるぞ?
立候補取り消しの代わりに、副会長は加藤に、書記は池田に約束してしまったからな」
「へえ、そうだったんですか」
真也の言葉が、急に『少年』の声に戻る。
「……は?」
あまりの変容に、満流の肺から、気の抜けた音が漏れ出た。
「あ、これ、いま回ってますよ」
真也がレコーダーを指差す。
(言質を取られた!!)
「貴様ァ! それを寄越せ!」
満流は右手を前に出して、ほぼ反射的に異能を発現した。右手が黒く染まり、次の瞬間、満流の腕が真也に向かって伸びる。
「やです」
満流が真也の手からレコーダーを奪えると思った次の瞬間、満流の異能の腕は何かにぶつかり、異能物質の粉へと変わる。
「……っ! 何だこれは!」
急に異能が消滅した満流は、元に戻った右腕に驚きの声を上げる。
一瞬で自分の異能が一瞬で破壊されるほどの何か。それをこの少年が呼び出したのだ。
真也の周りには、真っ黒い棺が浮かんでいた。初めて見る異能に、満流は戸惑う。
「先輩、俺からレコーダーを奪うなんて無理ですよ。奪える人間がいたとしても、この世界に最大で12人しかいないんじゃないですかね。
さて……俺の本当のお願い、言っていいですか?」
真也の言葉に、満流は息を呑む。
「副会長の座に座るのは、加藤先輩じゃなくて苗先輩ですよ。苗先輩を副会長にしてください。会長じゃなくって」
「なっ」
「2人合わせて、生徒全体からの支持も得られて良いじゃないですか」
明るい声で告げてくる真也の急な変化に、満流は目を丸くする。
「は、はぁぁぁぁ……?」
「先輩の敗因は、頭が回りすぎることと……このレコーダーを奪うには、オーバードとして『劣っていたから』ですね」
『劣っていたから、負ける』。その言葉は、生徒会長就任の舞台上で満流が聞いた言葉だった。
「やはり、やはり……九重会長の差し金か! さっきまでのは、演技だったのか!? そんなバカな!」
満流には、編入生の一年生に、あそこまでの演技ができるとは思えなかった。
「差し金、は正確ではないな」
「そうですね、先輩」
不意に聞こえた第三者の声とともに、満流の視界が歪む。
ぐにゃり、と視界が曲がった先に見えたのは、先ほどまでの『強欲な』真也ではなかった。
「相模。差し金ではなく、協力、だ」
目の前に現れたのは、冷や汗をかきながら、それでも『してやった』と笑っている真也と、その背後に控える光一。
真也の欲に満ちた表情は演技などではなく、光一によって貼り付けられた『幻影』の表情だったのだ。
あまりの衝撃に、満流は膝をつく。
「九重……会長……そんな、幻影なんて……さっきまで、揺れてなかったのに」
真也があれほどの『大嘘』をついたのだ。最初は満流も疑った。しかしそれでも、真也の様子には何らおかしいところはなかった。幻影なら、最初の段階で見破れていた筈。
唖然とする満流に、光一が答えを告げる。
「そりゃそうだろう、間宮は言葉を削ることはあっても、一言も『嘘』は言っていなかったからな」
「なっ……」
満流は、自分の犯した『失態』に、頭を抱える。
言葉が少なくとも表情から察し、『高度な言葉の駆け引き』と思っていたやりとり。それは、ただただ真也が『真実を言わない』ためだけの、ものだった。
策に溺れた結果が、これだった。
「う、うそだ……うそだ、俺、そんな、そんなぁぁぁぁぁぁ……」
満流の春は、あっという間に終わりを告げた。
地面にへたり込む満流を見下しながら、光一はメガネをかちゃり、と上げる。
「相模、お前はやり過ぎた。お前は『九重』と『注目株の新入生』。もとより……2人の『兄』を敵に回したのだ」
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