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第1章 転移編

029 閑話:友人への手紙、あるいは推薦状

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 12月吉日

 宛:東雲学園 理事長

 東雲しののめ志乃しの 様

 送:
 東雲学園 特別異能顧問
 世界異能者防疫連盟 異能解析部第三室長
 東日本異能研究所 異能解析室長

 津野崎真希



 来年度入学可能年齢のオーバード、間宮真也の追加情報と、推薦状をお送りいたします。

 学力、人格、健康状態等に問題ありません。

 その詳細につきましては、別紙を用意いたしましたのでお手隙でご覧ください。ここに特筆すべきことではありません。

 また、異能の概要につきましても、前回提出した推薦予定の手紙のものをご覧ください。

 そのような事を何度も記載する事は、あなたの最も嫌う、時間の浪費であると理解しています。

 今回の推薦状において、最も重要な点のみを申し上げます。

 先日、再度行われた異能実験において、私は1つの仮説を立てました。

 彼の異能の特筆点でもある、意思を持ったような防御行動についてです。

 異能は、複雑な行動や、速度を有するものほど強度が上がる傾向にあります。
 それ故に、彼をハイエンド足らしめる要素は、

 1、非常に複雑な立体自律防御の異能物質13点の生成と遠隔操作

 2、瞬間的な移動に見えるほどの生成速度

 である点かと考察されておりました。

 しかしながら、彼の異能物質に追跡用の化学塗料を塗布することで行われた追跡調査により、彼の異能物質は、生成速度の速さによって瞬間移動をしているように見えるのではなく、『実際に瞬間移動をしている』と結論付けられました。

 さらには、別の実験では、面白い考察を得ることができました。


 未来予知による防衛。


 重ねての実験により、異能者本人の『望まぬ未来』を先回りし、直前での防衛、破壊を行なっている可能性が示唆されたのです。

 実験内容につきましては冗長となりますので割愛いたしますが、気になるようでしたらご連絡ください。

 世界的にも権威ある東日本異能研究所の、異能解析室の面々が簡単に未来予知などという結論をつけたのでは無いことを全力でご説明します。


 以上2点の追加実験から、つまり間宮真也は

 1、異能物質を生み出し、遠隔操作する

 2、その異能物質の瞬間的な移送

 3、短時間的未来予知

 この3つを兼ね備えており、

 『マテリアル異能者でありキネシス異能者でありスペシャル異能者』である可能性があります。

 更には、この異能に関して間宮真也本人は、他のオーバードに見られる現象と同様に、まだ全貌を把握しておりません。

 よって、未だ成長を続ける余地があるとも言い換えられます。



 そしてなによりも、彼を東雲学園への『推薦予定』から『推薦』へと変更できた事が、最も重要な報告かもしれません。

 また併せて、新設部隊:アンノウンへの『推薦予定』も『推薦』へと変更とさせていただきます。

 追記:

 優秀なオーバードの獲得、おめでとうございます。今度何か食事でも奢ってくださいね、志乃さん。

 以上。
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