愛妻弁当

月詠嗣苑

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妊娠

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「啓ちゃん! はい、お弁当! お義母さんみたいに上手く作れないけど」

「いいよ。それよりも、寝てなくていい? つわり平気?」

「平気よ。ちゃんとおとなしくしてくれてるから。それよりも、連絡あった? お義母さんから」そう聞くと、啓一は悲しそうに首を振った。

「一応、現地の警察にも言ってはあるんだけどね。じゃ、行ってくるよ」

「うん。気をつけてね」

 ストレスフリーに排卵誘発剤が後を期したのか、結婚五年目で妊娠した私。先日やっと三ヶ月になった。


 汚れた食器を洗い、洗濯物を干し、部屋の掃除をすると、既に昼に近い。

「さて、今日は何にしようかな?」と冷蔵庫に保存しておいたおかずを取り出し、悩む。

「今日は、肉じゃがにしようかな?」まだまだ平らなお腹を摩り、レンジに入れ、スイッチを押す。

「今日はね、ばーばが来てくれるからね。いっぱいきみのお洋服買ってもらおうかなー? ふふっ」

 私の妊娠が、判ってからというもの、夫·啓一は、タバコや飲酒をキッパリとやめ、仕事を終えると真っ直ぐ帰ってくるようになったし、家事も手伝ってくれるようになった。

「ふふっ···。これもあなたのおかげね」レンジが、温め終了を知らせ、扉を開けると美味しそうな肉じゃがが湯気を立てた。

 トゥルルル···トゥルルル···電話が鳴り、急いで駆け寄るもタイミングが悪かったのか出る前に切れた。

「ま、いいわ。誰かわかんないし、用があったらまた掛けてくるだろうし」

 少し早めのお昼ご飯を食べてると、チャイムが鳴り···

「こんにちは!」

「いらっしゃーい! あ、え? パパも?!」お母さんの後ろから、お父さんが現れた。

「お父さん、丁度休みになったから、連れて来ちゃった」

「入るぞ」お父さんは、短くいい、勝手にスリッパを出しては、上がり込む。

「素直じゃないなぁ···」後ろから、お母さんと一緒に笑いながら言う。

 ふたりにお茶を出してから、そそくさとご飯を食べ、買い物に行った。


「来年の春か? 産まれるのは」

「そっ! パパ、名前考えてくれる? 一応、啓一さんも考えてるから···」

「どっちかしらねぇ? 男の子でも女の子でも着れるのを揃えないとね。まだ、見つからないの?」お母さんは、啓一さんのお母さんを心配してる。

「よりにもよって···」お父さんは、少し怒りながら言うのも無理はなく、スイスで好きな彼氏が出来て、その旅行先で義母がいなくなったと···

 初めてそれを聞かされた時は、驚いて言おうとしたけど、そのままにしておいた。

─パパ、ママ? ごめん。私もう犯罪者なんだ。

(そう言えたら、どれだけいいか? とも思うが、この幸せを壊したくない)

「こ、これなんかどうだ? か、可愛いし」お父さんが、ピンク色の産着を持ってきては、お母さんに睨まれて肩身を狭くしてる。

「もぉ、パパだめじゃん! まだ、どっちかわかんないし」

「俺は、女の子の気がするけどなぁ。美月可愛いし」真っ赤な顔をして、譲らずそれも買う事に···

「へへへっ···」

「あなたが甘やかすから」

「そういう母さんだって」

 カートに山積みになったベビーグッズ!これだけあれば、その分貯金に回せる!

 そう思った時、私の目の前を誰かが通り過ぎていった。

(嘘···なんで?)

「美月? どうかした?」

「どうした? 具合でも悪いか?」

「う、ううん。なんでもないわ···」

(そうよ。そんなことある訳ない! だって、あなたは···)


 少し疲れが出たのか、買い物から帰ると両親を返し、ソファに横になった。

「ふぅっ。やっぱ、疲れてたのね。洗濯物取り込まなきゃ」洗濯カゴを持ち、庭に出る。

 カタンッ···

 見覚えのある後ろ姿に、あの時着ていた服···

(お義母さん? まさか)その女性の後ろ姿をジッと見た。

「あ···」

「あ、ごめんなさい! 水道の検針なんですが···」

「いえ。どうぞ」別人だとしても、ガタガタと足が震えてくる。

(どうか、どうか。成仏して!)と頭の中で願いつつ、急いで洗濯物を取り込み、鍵とチェーンを掛け、玄関に蹲った。

 どれだけ、そうしていただろうか?玄関のチャイムを激しく鳴らす音で、後ずさる。

 ガチャガチャガチャッ···

「おーいっ! 美月ー! いるんだろー?」なんのことはない。夫だった。

「あ、ごめんなさーい!」と慌てて玄関を開けた。

「大丈夫か? 真っ青だぞ?」

「大丈夫よ。長く買い物してたから、疲れちゃった」

(突き通そう。幸せを守りたい!)

 この日の夕飯から後片付けは、啓一がやってくれ、何故かお風呂も···


「お前が妊娠したっていったらさ、もう周りがうるさいのなんの···」

「そう? 今日はね···」お湯に浸かって、互いに話をしあい、身体を洗って貰った。

「妊娠するとさ、いろいろ身体が変わるんだって。だから、今の内に···」啓一が、私の身体をジッと見ながら触ってくる。

「安定期まで···ダメ?」

「みたい。だから、今夜は···」だいぶ慣れた筈なのに、まだ勃起したペニスを触るのに躊躇する。

「いいよ。してくれればありがたいけど、我慢するから」

「でも、もう平気だよ?」そう言うと、

「疲れない程度にお願いします」と笑って頭を下げる。

「じゃ、出よう。ほら」啓一が、先に出て手を伸ばす。私は、その手を掴みゆっくりとバスタブを出て、身体を拭いてもらった。

「いつもしてくれればいいのにぃ」

「そら、いつもしてやりたいさ。けど、そしたら毎日しなきゃいかんくなる」お揃いのパジャマも義母が居なくなってから、啓一が買ってきてくれた。

「今なら堂々と着れる!」と笑いながら渡してくれた時は、凄く嬉しかった。

 パチン···部屋の灯りが消え、小さな豆灯りだけになった。

 いそいそと下腹部を顕にする夫。

 チュパッ···チュゥッ···まだまだ慣れないのがなんとなくわかる。

 だが、啓一は、気持ちいいと言うし、時々口の中に出してくる。飲み込めた時は、苦しい位に抱きしめてきた。

 アァッ···クッ···

「美月···」啓一の手が、パジャマの中に入り、乳房を弄る。

「その裏のとこ···」言われるままに、前の記憶を蘇らせ舌先で裏の筋のところを舐める。

「いいよ···アァッ···」

 ヂュルッヂュルッと口を窄め、音を出し動かしていく。

「アァッ···気持ちいい···美月」

「啓ちゃん? 抱いて···」口を離し、上から啓一に強請る。

「触られたら···ムズムズしちゃって。ゆっくりでいいから」驚いた顔をしていたが、少し笑って、私を押し倒して上にきた。

「ゆっくりやるから···美月」

 クチュクチュとした小さな私の音が、段々と大きくなって、ピチャピチャという音に変わり、啓一がゆっくりと挿ってきた。

 ぁあぁっ···

「啓ちゃん! 大好き」首に腕を回し、しがみつく。

「俺も好きだよ」

 パンッ···パンッ···パンッ···

「あん! 気持ちいい! あっ!」久し振りに夫を感じた。

 アァッ···

「いいよ。久し振りだから、かなり···クゥッ」

 ゆっくりと動かしているのに、気持ちよさは前よりも良く、

 あっ! あっ! んっ!

「身体···痺れそう」おかしな感じだった。

「あと少し···出···るぅっ! アァッ···」夫の額から、汗が落ちた。

「美月? 暫く我慢するから! でも、たまにはヤリたい」繋がったまま、笑みを浮かべ私を見た。

「愛してるわ···あなた」
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