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オマケ
旅路─翡翠の僥倖3
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もふり、とパンケーキにフォークを刺す。小さく切り分けたそれに生クリームをつけて、一緒にフルーツも刺して口へと運ぶ。もふもふと咀嚼し、飲み込む。うむ、うまい。
飲み物はくどくなりすぎないよう、甘さ控えめの紅茶を頼んだ。目の前の人物は甘さMAXなバニラシェイクを頼んで飲んでいるが。ヤバイ、見てるだけで胸焼けしそう。
「…糖質考えなくていいとか、楽でいいな…」
「!シオン様もワタシと同じになりマスカ!?」
「ならないデス。そう言う意味じゃない」
「むぅ…残念デス…」
そう言ってしょんぼりと落ち込むのは、明るいサーモンピンクのボブヘアで、硝子のような緑の瞳をした少女。。名前は、ヨルカナルと言うらしい。気軽にヨルと呼んでくれと言われた。
彼女は何千年と前に造られたゴーレムだそうで、たまたまどっかのクソ緑が発見して再起動させ、主人として共に旅をしているらしい。
ゴーレムと言ったら明らかに土人形っぽい見た目だったり、知性や自我はないイメージが強かったが─と言うか、実際にそう言うものらしいが、彼女は特別製なんだと。
何でも、創造主が娘を生き返らせるために作ったらしい。だから見た目はその娘そっくりに造られ、性格何かは娘の脳みそを混ぜ込んだとか。
大分エグいとは思ったが、実際それでそっくりな性格と見た目のゴーレムが生まれている訳で。頭ヤバそうだけど腕は確かな人だったんだろうと予想する。
そして、そのヨルの対面でパンケーキを食べている俺リンドウは、店の外を確認しつつ自分の格好に目を落とした。
スタンダードなワンピースに、薄水色のショール。物凄く女子って感じの格好にプラスで、パタンパタンと椅子を叩く白い尻尾。自分では見えないが、頭には三角の耳もあるのだろう。
いや変装って種族ごとかい、と突っ込んだ俺は悪くない。
─二時間程前。
「んなとこに一人で居るとか、誰かに喰われたって知らねぇぞ」
「お、お前…!」
「例えば、オレとかに。なんて…」
「クソ緑!!!!」
「おう、食いぎみ一発目からクソとは言ってくれんじゃねぇかチビ紫」
路地で迷子になっていた俺に話しかけて来たのは、トラウマの張本人であるクソ緑こと宮迫緑翔だった。
体が一瞬すくんだが、すぐに逃げねばならないと言った恐怖や焦燥はない。あのトラウマは、どうやらある程度乗り越えられたようだ。
それでも必要以上に近づくのは怖くて、身構えたままクソ緑を睨む。そんな俺の様子を見て、奴は何だか気まずそうに頭を掻いた。
「あー、まぁ、何だ。取り敢えず元気そうでよかったわ」
「は??お前熱あんじゃねぇの??絶対四十度越えてるだろ」
「どういう意味だコラ」
「それとも今から槍でも降るのか!?」
「そんなに喧嘩してぇならハッキリ言えやゴルァ!!買ったるわこのチビ!!!」
怒らせてしまった。いやだってさ、アレがだよ?あの傍若無人なクズ野郎のクソ緑がだよ??「元気そうでよかった」って言ったぜ???天変地異が起きてもおかしくないだろ。
そう思っての発言だったが、確かに喧嘩売ってたわ。面倒だし、この喧嘩非売品にしよ。誰がクソ緑何かに買わせるか。
そう言ったら呆れられた。なんでじゃ。
昔のようなやり取りをしていれば、段々落ち着いてきた。まだ警戒はしているが、取り敢えず構えを解く。距離が二メートルぐらいあれば多分大丈夫だ。うん。
「何だこの微妙な距離」
「心の距離」
「思ったより近いな。もう、許してもらえねぇかと思ってた」
予想外にも程がある気弱な発言に、俺は目を見開く。てっきり、遠いとか言って勝手に近付いてくるかと思ってたから。
本気で熱があるのではと心配になってきたが、熱を測りに近づくのも負けた気がして嫌だ。しかし、自信が服を着て歩いてるような奴とは思えない発言は気になる…
「お前、何か失礼なこと考えてるだろ」
「ナンノコトカナ」
「チッ…オレだってなぁ、反省ぐらいすんだよ!!まさかここまで真に受けて怯えられるとか思わなかったんだ!!」
「はぁ?でも俺のこと、弟って思ってないんだろ?んなこと言われながら暗闇で押し倒されたら、誰だってトラウマになるわ!!」
「そらお前のことはちゃんと女だと思ってっからな!!いい加減、弟って言い訳通じねぇだろ!!お前今何歳!?」
「じゅうきゅう」
「別に性別変えたい願望ねぇんだろ?」
「ナメられたくないから男のふりするけど、今はそこまでじゃないかな」
「じゃあ妹でいいだろ!!」
「仲間外れよくない!!!」
「意味わからん!!!!」
二人してゼーハーと肩で息をする。全力で騒いでしまったが、人がくる気配はない。本当、ここ何処だ。
気づけば奴との距離は一メートルもないほど近づいていた。何なら胸ぐら掴むぐらいの勢いだった。危ね。
息を整えちょっと落ち着いたところで、俺はようやくあの日の行動の意味を知った。
曰く、あの日の数日前に売られて買った喧嘩が原因らしい。
確か、どっかの不良に喧嘩を売られ、人気の無いところに連れ込まれ、俺が殴る前に全速力でやって来たみゃーのとクソ緑がのしてしまったんだったか。
あれがどうあんな行動に繋がるのかと首を傾げると、深いため息を吐かれた。
「やっぱ気づいてなかったか…あん時お前、襲われかけてたんだぞ?いい加減、女って自覚持たせなきゃまずいと思ってだな…」
「襲われることなんて何回もあっただろ?何であれが原因なんだ?別にいつも通り喧嘩売られただけじゃ…」
「暴力以外の意味で襲われるっつったらどんな行為が思いつく?」
「………………あー……え?」
「気付くのが遅すぎんだよな~~」
暴力以外っつったら、まぁ、色々あるけど…コイツの反応を見るに、つまりそう言うことだと。成る程、うん。
「何かごめん」
「あの日のオレに謝ってくれ」
「ごめんって。自覚無かったのは自覚したよ。今」
「そして理由も聞かず逃げ回りやがったことについても謝れ。オレのやり方が悪かったことは認めるが、これでも傷付いたんだぞ」
「やり方が悪すぎたんでチャラだ」
「………しかたねぇな」
スッと片手を差し出された。仲直りしよう、ということだろう。トラウマと決別するためにも、俺はその手を握る。
そして、何処からともなく現れた台に肘を付けた。
「テメェ身体強化使ってやがるな!?」
「使わなきゃ俺がお前に腕相撲で勝てる訳ねぇだろうが!!」
「くっそオレも使ってんのに互角かよ!!」
「俺の身体強化ナメんじゃねえ~!!」
「これじゃあ勝負になんねぇだろうがよ!!やめだ!別のにしよう」
「賛成だ。何する?」
「勝負サイコロー。ほいっ…………棒倒し」
「ぼうたおし」
「三勝したら勝ちな」
「いいだろう。絶対負かす」
このあと普通に三連敗して負けた。何でだ。
飲み物はくどくなりすぎないよう、甘さ控えめの紅茶を頼んだ。目の前の人物は甘さMAXなバニラシェイクを頼んで飲んでいるが。ヤバイ、見てるだけで胸焼けしそう。
「…糖質考えなくていいとか、楽でいいな…」
「!シオン様もワタシと同じになりマスカ!?」
「ならないデス。そう言う意味じゃない」
「むぅ…残念デス…」
そう言ってしょんぼりと落ち込むのは、明るいサーモンピンクのボブヘアで、硝子のような緑の瞳をした少女。。名前は、ヨルカナルと言うらしい。気軽にヨルと呼んでくれと言われた。
彼女は何千年と前に造られたゴーレムだそうで、たまたまどっかのクソ緑が発見して再起動させ、主人として共に旅をしているらしい。
ゴーレムと言ったら明らかに土人形っぽい見た目だったり、知性や自我はないイメージが強かったが─と言うか、実際にそう言うものらしいが、彼女は特別製なんだと。
何でも、創造主が娘を生き返らせるために作ったらしい。だから見た目はその娘そっくりに造られ、性格何かは娘の脳みそを混ぜ込んだとか。
大分エグいとは思ったが、実際それでそっくりな性格と見た目のゴーレムが生まれている訳で。頭ヤバそうだけど腕は確かな人だったんだろうと予想する。
そして、そのヨルの対面でパンケーキを食べている俺リンドウは、店の外を確認しつつ自分の格好に目を落とした。
スタンダードなワンピースに、薄水色のショール。物凄く女子って感じの格好にプラスで、パタンパタンと椅子を叩く白い尻尾。自分では見えないが、頭には三角の耳もあるのだろう。
いや変装って種族ごとかい、と突っ込んだ俺は悪くない。
─二時間程前。
「んなとこに一人で居るとか、誰かに喰われたって知らねぇぞ」
「お、お前…!」
「例えば、オレとかに。なんて…」
「クソ緑!!!!」
「おう、食いぎみ一発目からクソとは言ってくれんじゃねぇかチビ紫」
路地で迷子になっていた俺に話しかけて来たのは、トラウマの張本人であるクソ緑こと宮迫緑翔だった。
体が一瞬すくんだが、すぐに逃げねばならないと言った恐怖や焦燥はない。あのトラウマは、どうやらある程度乗り越えられたようだ。
それでも必要以上に近づくのは怖くて、身構えたままクソ緑を睨む。そんな俺の様子を見て、奴は何だか気まずそうに頭を掻いた。
「あー、まぁ、何だ。取り敢えず元気そうでよかったわ」
「は??お前熱あんじゃねぇの??絶対四十度越えてるだろ」
「どういう意味だコラ」
「それとも今から槍でも降るのか!?」
「そんなに喧嘩してぇならハッキリ言えやゴルァ!!買ったるわこのチビ!!!」
怒らせてしまった。いやだってさ、アレがだよ?あの傍若無人なクズ野郎のクソ緑がだよ??「元気そうでよかった」って言ったぜ???天変地異が起きてもおかしくないだろ。
そう思っての発言だったが、確かに喧嘩売ってたわ。面倒だし、この喧嘩非売品にしよ。誰がクソ緑何かに買わせるか。
そう言ったら呆れられた。なんでじゃ。
昔のようなやり取りをしていれば、段々落ち着いてきた。まだ警戒はしているが、取り敢えず構えを解く。距離が二メートルぐらいあれば多分大丈夫だ。うん。
「何だこの微妙な距離」
「心の距離」
「思ったより近いな。もう、許してもらえねぇかと思ってた」
予想外にも程がある気弱な発言に、俺は目を見開く。てっきり、遠いとか言って勝手に近付いてくるかと思ってたから。
本気で熱があるのではと心配になってきたが、熱を測りに近づくのも負けた気がして嫌だ。しかし、自信が服を着て歩いてるような奴とは思えない発言は気になる…
「お前、何か失礼なこと考えてるだろ」
「ナンノコトカナ」
「チッ…オレだってなぁ、反省ぐらいすんだよ!!まさかここまで真に受けて怯えられるとか思わなかったんだ!!」
「はぁ?でも俺のこと、弟って思ってないんだろ?んなこと言われながら暗闇で押し倒されたら、誰だってトラウマになるわ!!」
「そらお前のことはちゃんと女だと思ってっからな!!いい加減、弟って言い訳通じねぇだろ!!お前今何歳!?」
「じゅうきゅう」
「別に性別変えたい願望ねぇんだろ?」
「ナメられたくないから男のふりするけど、今はそこまでじゃないかな」
「じゃあ妹でいいだろ!!」
「仲間外れよくない!!!」
「意味わからん!!!!」
二人してゼーハーと肩で息をする。全力で騒いでしまったが、人がくる気配はない。本当、ここ何処だ。
気づけば奴との距離は一メートルもないほど近づいていた。何なら胸ぐら掴むぐらいの勢いだった。危ね。
息を整えちょっと落ち着いたところで、俺はようやくあの日の行動の意味を知った。
曰く、あの日の数日前に売られて買った喧嘩が原因らしい。
確か、どっかの不良に喧嘩を売られ、人気の無いところに連れ込まれ、俺が殴る前に全速力でやって来たみゃーのとクソ緑がのしてしまったんだったか。
あれがどうあんな行動に繋がるのかと首を傾げると、深いため息を吐かれた。
「やっぱ気づいてなかったか…あん時お前、襲われかけてたんだぞ?いい加減、女って自覚持たせなきゃまずいと思ってだな…」
「襲われることなんて何回もあっただろ?何であれが原因なんだ?別にいつも通り喧嘩売られただけじゃ…」
「暴力以外の意味で襲われるっつったらどんな行為が思いつく?」
「………………あー……え?」
「気付くのが遅すぎんだよな~~」
暴力以外っつったら、まぁ、色々あるけど…コイツの反応を見るに、つまりそう言うことだと。成る程、うん。
「何かごめん」
「あの日のオレに謝ってくれ」
「ごめんって。自覚無かったのは自覚したよ。今」
「そして理由も聞かず逃げ回りやがったことについても謝れ。オレのやり方が悪かったことは認めるが、これでも傷付いたんだぞ」
「やり方が悪すぎたんでチャラだ」
「………しかたねぇな」
スッと片手を差し出された。仲直りしよう、ということだろう。トラウマと決別するためにも、俺はその手を握る。
そして、何処からともなく現れた台に肘を付けた。
「テメェ身体強化使ってやがるな!?」
「使わなきゃ俺がお前に腕相撲で勝てる訳ねぇだろうが!!」
「くっそオレも使ってんのに互角かよ!!」
「俺の身体強化ナメんじゃねえ~!!」
「これじゃあ勝負になんねぇだろうがよ!!やめだ!別のにしよう」
「賛成だ。何する?」
「勝負サイコロー。ほいっ…………棒倒し」
「ぼうたおし」
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