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オマケ
旅路─翡翠の僥倖1
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その日は、新しい街へと到着したばかりであった。案の定一人行動をして迷った俺リンドウは、気付けば迷路のような路地へと入り込んでしまった。
余計に迷いに迷って、ようやくスキルで迎えを頼めることを思い出した俺は、そこらを飛んでいた鳥を捕まえて皆へと飛ばす。
さて、ここから動くと後で説教が長引くことを俺は経験上知っている。迎えが来るまで暇にはなるが、適当に壁にでも寄りかかって待つ他無いだろう。
願わくば、変に絡んでくるチンピラとかが居なければいいのだが──
「おい、そこのちっこいの」
早速絡まれたわ。誰が小さいだ、クソが。
イラッとしたが表情に出さないよう、声の聞こえた方を振り向く。もし喧嘩なら容赦なく顔面を殴ってやろうと思い、その顔を見た。
見て、体が固まる。
「……え?」
「んなとこに一人で居るとか、誰かに喰われたって知らねぇぞ」
「お、お前…!」
「例えば─オレとかに」
ガツンと、頭を強く殴られた気がした。
──────────
小鳥に案内され、要り組んだ路地を進む。
またしても勝手に彷徨き迷子になったリンドウは、しばらくしてからようやく遣いを送ってきた。どうせまたスキルのことを忘れていたのだろうと、変な輩に絡まれていないことを願いながら早足で進む。
先日、ようやく少しずつであるが俺に対して素直に気持ちを表してくれるようになったリンドウ。今まではこちらからだったスキンシップも、まるでお返しだと言わんばかりに彼方からしてくれるようにもなったのだ。
最近で言うなら、間違えて酒を酔うまで飲みデロデロに甘えてきたのが一番可愛かった。いつだか酔った時は、ポヤポヤとして聞いたことを素直に答えてくれるとそれはそれで可愛いものだったが。いくらか気持ちが通じあえたからだろうか。
そんなことを思い出しながら進んだ先で、ようやく案内係の鳥がある場所で止まり上空を旋回する。それは、何やら迷っているようにも見えた。
着いた場所には、リンドウのような漆黒の髪を持つ旅人風の男が一人。他に人影はなく、勿論リンドウも居なかった。
ゆっくりとこちらを振り返る男は、こちらに気付くとその鮮やかな緑色の瞳をキロリと向ける。瞬間、それはニィと細められた。
その顔付きは、何だか見たことのあるような気がした。
「こぉれはこれは、何処かの国の騎士サマじゃあないですかぁ。こんな路地裏で、何か探しものでも?」
「…人を、探している。ここら辺にいるはずなんだが、知らないか?」
「んー…そうだなぁ。見つかっちまったし、もったいねぇけどこれアンタにやるわ」
ニヤニヤとした表情を隠すことなく、男は笑いを含んだ声で喋る。どうやら俺の正体を知っているようで、何も読めない相手に警戒心が上がっていく。
やるよと投げられたものを咄嗟に受け取れば、それは澄んだ紫色の宝石だった。形は綺麗な球体で、質や形で高価な物だというのは分かる。
が、何故人を探していると言ったらこれを渡されたのか。意味が分からず男を睨めば、男はケタケタと笑った。
「彼奴のこと、アンタら何て呼んでんだっけ?確か…リンドウ、だったか?」
「…!貴様、リンドウを何処へやった!!」
その言葉に思わず剣へと手をかける。男は表情を崩さず、先程投げて寄越した宝石を指して笑う。
「それ」
「………は?」
「だから、それがお探しのリンドウちゃん。正確には、彼奴の右目」
「何を…右目?」
「記念に宝石にして取っとこうかと思ったけど、遺物としてアンタに譲ってやるよ」
残りは後でゆっくり喰うから。
その言葉が耳に届く前に、俺は剣を抜き斬りかかっていた。しかしそれは相手の手甲により難なく防がれ、余裕そうな笑みを向けられる。
「流石副団長サマ。いいねぇ、いいねぇ!やっぱり喧嘩は強ぇ奴とじゃねぇと盛り上がんねぇよなぁ!!」
「今すぐリンドウの居場所を吐け。さもなくば斬る」
「オレ、アンタが気に食わないんで絶対に教えない♡」
「………」
「あっははは!怖い怖い!いやだってさぁ、弟はアンタを認めたらしいけど、オレはまだ一ミリも認めてねぇからな?」
「弟…?まさか、貴様!!」
ニタリと、緑色の瞳が赤色を映した。
「どうも、うちの愚弟達がお世話になったようで。んじゃ、またな」
ガキン、と音を立てて剣が跳ね返される。勢いでよろけ、視線を戻した先には─
─既に、誰の姿もなかった。
「ちょっと騎士サマおちょくって来たわ」
「このブラックペッパーが」
「うるせぇ生意気ソルト。大体、ホントに何でお前あんなとこに居たんだ」
「……………」
「…え?もしかしてまだ方向音痴治ってねぇの…?」
「……悪いか」
「ウケルwwwww」
「しね!!!!!!」
余計に迷いに迷って、ようやくスキルで迎えを頼めることを思い出した俺は、そこらを飛んでいた鳥を捕まえて皆へと飛ばす。
さて、ここから動くと後で説教が長引くことを俺は経験上知っている。迎えが来るまで暇にはなるが、適当に壁にでも寄りかかって待つ他無いだろう。
願わくば、変に絡んでくるチンピラとかが居なければいいのだが──
「おい、そこのちっこいの」
早速絡まれたわ。誰が小さいだ、クソが。
イラッとしたが表情に出さないよう、声の聞こえた方を振り向く。もし喧嘩なら容赦なく顔面を殴ってやろうと思い、その顔を見た。
見て、体が固まる。
「……え?」
「んなとこに一人で居るとか、誰かに喰われたって知らねぇぞ」
「お、お前…!」
「例えば─オレとかに」
ガツンと、頭を強く殴られた気がした。
──────────
小鳥に案内され、要り組んだ路地を進む。
またしても勝手に彷徨き迷子になったリンドウは、しばらくしてからようやく遣いを送ってきた。どうせまたスキルのことを忘れていたのだろうと、変な輩に絡まれていないことを願いながら早足で進む。
先日、ようやく少しずつであるが俺に対して素直に気持ちを表してくれるようになったリンドウ。今まではこちらからだったスキンシップも、まるでお返しだと言わんばかりに彼方からしてくれるようにもなったのだ。
最近で言うなら、間違えて酒を酔うまで飲みデロデロに甘えてきたのが一番可愛かった。いつだか酔った時は、ポヤポヤとして聞いたことを素直に答えてくれるとそれはそれで可愛いものだったが。いくらか気持ちが通じあえたからだろうか。
そんなことを思い出しながら進んだ先で、ようやく案内係の鳥がある場所で止まり上空を旋回する。それは、何やら迷っているようにも見えた。
着いた場所には、リンドウのような漆黒の髪を持つ旅人風の男が一人。他に人影はなく、勿論リンドウも居なかった。
ゆっくりとこちらを振り返る男は、こちらに気付くとその鮮やかな緑色の瞳をキロリと向ける。瞬間、それはニィと細められた。
その顔付きは、何だか見たことのあるような気がした。
「こぉれはこれは、何処かの国の騎士サマじゃあないですかぁ。こんな路地裏で、何か探しものでも?」
「…人を、探している。ここら辺にいるはずなんだが、知らないか?」
「んー…そうだなぁ。見つかっちまったし、もったいねぇけどこれアンタにやるわ」
ニヤニヤとした表情を隠すことなく、男は笑いを含んだ声で喋る。どうやら俺の正体を知っているようで、何も読めない相手に警戒心が上がっていく。
やるよと投げられたものを咄嗟に受け取れば、それは澄んだ紫色の宝石だった。形は綺麗な球体で、質や形で高価な物だというのは分かる。
が、何故人を探していると言ったらこれを渡されたのか。意味が分からず男を睨めば、男はケタケタと笑った。
「彼奴のこと、アンタら何て呼んでんだっけ?確か…リンドウ、だったか?」
「…!貴様、リンドウを何処へやった!!」
その言葉に思わず剣へと手をかける。男は表情を崩さず、先程投げて寄越した宝石を指して笑う。
「それ」
「………は?」
「だから、それがお探しのリンドウちゃん。正確には、彼奴の右目」
「何を…右目?」
「記念に宝石にして取っとこうかと思ったけど、遺物としてアンタに譲ってやるよ」
残りは後でゆっくり喰うから。
その言葉が耳に届く前に、俺は剣を抜き斬りかかっていた。しかしそれは相手の手甲により難なく防がれ、余裕そうな笑みを向けられる。
「流石副団長サマ。いいねぇ、いいねぇ!やっぱり喧嘩は強ぇ奴とじゃねぇと盛り上がんねぇよなぁ!!」
「今すぐリンドウの居場所を吐け。さもなくば斬る」
「オレ、アンタが気に食わないんで絶対に教えない♡」
「………」
「あっははは!怖い怖い!いやだってさぁ、弟はアンタを認めたらしいけど、オレはまだ一ミリも認めてねぇからな?」
「弟…?まさか、貴様!!」
ニタリと、緑色の瞳が赤色を映した。
「どうも、うちの愚弟達がお世話になったようで。んじゃ、またな」
ガキン、と音を立てて剣が跳ね返される。勢いでよろけ、視線を戻した先には─
─既に、誰の姿もなかった。
「ちょっと騎士サマおちょくって来たわ」
「このブラックペッパーが」
「うるせぇ生意気ソルト。大体、ホントに何でお前あんなとこに居たんだ」
「……………」
「…え?もしかしてまだ方向音痴治ってねぇの…?」
「……悪いか」
「ウケルwwwww」
「しね!!!!!!」
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