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本編
18、会いたくなかった
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さて、王宮で騒ぎとなった「召喚人行方不明事件」から一週間程が経った。
あの日、雨も上がり昼までに王宮へ帰ってこれた俺たちは、沢山の人たちから心配され叱られた。最近は魔物の狂暴性が上がり、森はとても危険だったらしい。
そんなところへ無断で入った俺は勿論、連れ戻すのに一日かかった騎士さんも叱られた。その日の午後はは二人で仲良く正座の刑に処されてしまった。足が死ぬかと思った。
共に正座した仲と言うことで、俺は騎士さんのことを親しみを込めて「赤目さん」と呼ぶことにした。頑として名前を呼ばないという意思を伝えるためでもあるが。
この一週間で知ったことは、変化魔法の弱点と俺の魔力量である。
あの日、勝手に魔法が解けたのは原因がある。
まずおさらいとして、変化魔法は一度使用すると自分で解くかそれ用の魔道具を使われないと、半永久的に変化したままの状態が保たれる。魔力消費は発動した時のみで、使用中の消費はゼロ。
では、何故あの時解けていたのか。俺が突然気絶する直前のことを思い出してみよう。
身体強化を使い森の奥まで入り込んだ俺は、大量の魔物に襲われた。それを蹴散らすために、風魔法を使いまくっていた。
はい、身体強化と風魔法に注目。この二つ、魔力使いますね。つまり、俺の気絶の原因は魔法の使いすぎによる魔力切れ。で、なんでこれで変化が解けるかって話。
ぶっ倒れる程だと命の危険がある場合もあるため、回復のために体を正常な状態にする必要があるのだそう。その為、変化魔法を使っている人は魔力切れに注意しなければならないらしい。
ルーファスさんにそのことを聞くと、魔力切れを起こすほど魔法を使うとは思っていなかったらしい。だから教えなかったんだとか。
ちなみに、変化魔法を解かずにずっと使っていると、そのうち体の構造が変わってしまい戻れなくなるらしい。こわ。
また魔力切れで倒れないよう、ルーファスさんと俺の魔力量を計り、拡張の練習を始めた。一週間でも結構増えないもんだ。
そんなこんなの今日。赤目さんと訓練をしていた俺のところへ、慌てた様子のラナさんが飛び込んできた。
「大変ですリンドウ様!今、急遽勇者様が帰って参りました」
「え」
「なに!?」
俺より過剰に反応する赤目さん。いや、ちょ、俺より先に話を聞きに行くんじゃねぇ!ちょっと待てや!!
「勇者は今何処に?」
「陛下に呼ばれて王の間へ。ただ、何かを探している様子でしたので、もしやと…」
「ふむ。お前を探している可能性があるぞ」
「そうです、リンドウ様。貴女が会いたくないと言うのなら、私は全力でお守りします」
「書庫にいたらどうだ?あそこは以外と要り組んでいるし、ルーファスと共にいれば見つかることはないと思うが…」
「そうですね、そうしましょう。さ、リンドウ様。こちらへ」
「いや、君らめっちゃ俺抜きで話進めんじゃん」
ちょっとぐらい意見言わせてよ。というか、何でラナさんはこんなに勇者のことを気にしてんだろう。確かに勇者が来たら教えてって言ったけどさ。俺、ラナさんに何も話してないぞ?
ラナさんに腕を引かれ、赤目さんに背中を押されて書庫へ向かおうと歩き出す。
そして、庭を横切ろうとしたとき─
「あー!!しおちゃんいたぁー!!!」
上から聞こえたふわふわとした声に引き留められた。
思わず声の出所を見上げれば、王宮の二階から庭へと飛び降りた男が一人。背丈はルーファスさん程だが、赤目さんに負けず劣らずの体格。羊のようにふわふわなくせっ毛は薄い茶色で、覗く目は日本人特有の黒色だった。
顔はやっぱり知らない奴の気がするし、見たことがあるような気もする。が、先程の呼び声で気付いたし察した。
どうやら俺は、くじ運がすこぶる悪かったらしい。
「一年と三ヶ月ぶりかなぁ?久しぶり、しおちゃん」
「Go!house!!!」
「なんで英語?しかもハウスなんて犬みたいな扱い方…あぁ、いいねぇ…僕はしおちゃんの犬だからしおちゃんの腕の中にGohouseしちゃu」
「テメェの帰る場所は土の下で十分だクソドM!!」
「ありがとうございますっ!!!」
飛び付いてきた奴を咄嗟に回し蹴りで蹴り飛ばす。そして即刻赤目さんの背後に隠れる。ヤバい。何がヤバいって主に俺の精神面がヤバい。
何で最も最悪なパターンなのか。神はそんなに俺が嫌いか、ちくしょう。
「お、おい…あれはなんだ?お前の言ってた奴……じゃなさそうだな?」
「無理無理無理なんならあれより無理。精神的に無理。生理的に受け付けない無理」
「しおちゃんってばつれないなぁ。感動の再会だよ?もっと喜んでよ」
「最悪の再会だよちくしょうが!!!二度と会いたくなかったのに!!」
「えー?僕はこの一年と三ヶ月間、ずっと君に会いたかったのに。ほら、一年で僕結構頑張ったんだよ?この三ヶ月間も魔物退治頑張ったし。ちょっとは誉めてよ~」
「ヨクガンバッタナ」
「片言~」
ジリジリと寄ってくる奴に、赤目さんを盾に後退する俺。板挟みになっている赤目さんは、明らかに困惑している。ごめん。
「らなさんこの人ユウシャデスカ?」
「は、はい。こちら、勇者様です…やはりお知り合いでしたか?」
「悔しいことに知り合いでした。関係を全て消し去りたい部類の」
「消し去って新しくやり直そうってこと?いいね!僕も君との関係をやり直したいよ!」
「次は関り合いのない関係を俺は望む」
「次は主と奴隷の関係かな?勿論、主はしおちゃんで!」
「お前みたいなドM、死んでもいらない」
「いいねぇ!その目!!もっと蔑んで!!」
「おい、コイツに話は通じているのか?」
残念だが赤目さん。これに話は通じない。と言うか、主に俺の話を聞いてくれない。
あれ同様、俺の元友人であるこの男。何がどうなってこうなったのか、昔は普通だったのに突然ドMカミングアウトされ、あれとコイツのSMに巻き込まれてしまった。
それが嫌で関係を切ったと言うのに…
「何で俺を巻き込んだのがお前なんだよ、みゃーの!!」
「運命的だよね、しおちゃん♡」
今世紀で二番目に会いたくなかったです。
あの日、雨も上がり昼までに王宮へ帰ってこれた俺たちは、沢山の人たちから心配され叱られた。最近は魔物の狂暴性が上がり、森はとても危険だったらしい。
そんなところへ無断で入った俺は勿論、連れ戻すのに一日かかった騎士さんも叱られた。その日の午後はは二人で仲良く正座の刑に処されてしまった。足が死ぬかと思った。
共に正座した仲と言うことで、俺は騎士さんのことを親しみを込めて「赤目さん」と呼ぶことにした。頑として名前を呼ばないという意思を伝えるためでもあるが。
この一週間で知ったことは、変化魔法の弱点と俺の魔力量である。
あの日、勝手に魔法が解けたのは原因がある。
まずおさらいとして、変化魔法は一度使用すると自分で解くかそれ用の魔道具を使われないと、半永久的に変化したままの状態が保たれる。魔力消費は発動した時のみで、使用中の消費はゼロ。
では、何故あの時解けていたのか。俺が突然気絶する直前のことを思い出してみよう。
身体強化を使い森の奥まで入り込んだ俺は、大量の魔物に襲われた。それを蹴散らすために、風魔法を使いまくっていた。
はい、身体強化と風魔法に注目。この二つ、魔力使いますね。つまり、俺の気絶の原因は魔法の使いすぎによる魔力切れ。で、なんでこれで変化が解けるかって話。
ぶっ倒れる程だと命の危険がある場合もあるため、回復のために体を正常な状態にする必要があるのだそう。その為、変化魔法を使っている人は魔力切れに注意しなければならないらしい。
ルーファスさんにそのことを聞くと、魔力切れを起こすほど魔法を使うとは思っていなかったらしい。だから教えなかったんだとか。
ちなみに、変化魔法を解かずにずっと使っていると、そのうち体の構造が変わってしまい戻れなくなるらしい。こわ。
また魔力切れで倒れないよう、ルーファスさんと俺の魔力量を計り、拡張の練習を始めた。一週間でも結構増えないもんだ。
そんなこんなの今日。赤目さんと訓練をしていた俺のところへ、慌てた様子のラナさんが飛び込んできた。
「大変ですリンドウ様!今、急遽勇者様が帰って参りました」
「え」
「なに!?」
俺より過剰に反応する赤目さん。いや、ちょ、俺より先に話を聞きに行くんじゃねぇ!ちょっと待てや!!
「勇者は今何処に?」
「陛下に呼ばれて王の間へ。ただ、何かを探している様子でしたので、もしやと…」
「ふむ。お前を探している可能性があるぞ」
「そうです、リンドウ様。貴女が会いたくないと言うのなら、私は全力でお守りします」
「書庫にいたらどうだ?あそこは以外と要り組んでいるし、ルーファスと共にいれば見つかることはないと思うが…」
「そうですね、そうしましょう。さ、リンドウ様。こちらへ」
「いや、君らめっちゃ俺抜きで話進めんじゃん」
ちょっとぐらい意見言わせてよ。というか、何でラナさんはこんなに勇者のことを気にしてんだろう。確かに勇者が来たら教えてって言ったけどさ。俺、ラナさんに何も話してないぞ?
ラナさんに腕を引かれ、赤目さんに背中を押されて書庫へ向かおうと歩き出す。
そして、庭を横切ろうとしたとき─
「あー!!しおちゃんいたぁー!!!」
上から聞こえたふわふわとした声に引き留められた。
思わず声の出所を見上げれば、王宮の二階から庭へと飛び降りた男が一人。背丈はルーファスさん程だが、赤目さんに負けず劣らずの体格。羊のようにふわふわなくせっ毛は薄い茶色で、覗く目は日本人特有の黒色だった。
顔はやっぱり知らない奴の気がするし、見たことがあるような気もする。が、先程の呼び声で気付いたし察した。
どうやら俺は、くじ運がすこぶる悪かったらしい。
「一年と三ヶ月ぶりかなぁ?久しぶり、しおちゃん」
「Go!house!!!」
「なんで英語?しかもハウスなんて犬みたいな扱い方…あぁ、いいねぇ…僕はしおちゃんの犬だからしおちゃんの腕の中にGohouseしちゃu」
「テメェの帰る場所は土の下で十分だクソドM!!」
「ありがとうございますっ!!!」
飛び付いてきた奴を咄嗟に回し蹴りで蹴り飛ばす。そして即刻赤目さんの背後に隠れる。ヤバい。何がヤバいって主に俺の精神面がヤバい。
何で最も最悪なパターンなのか。神はそんなに俺が嫌いか、ちくしょう。
「お、おい…あれはなんだ?お前の言ってた奴……じゃなさそうだな?」
「無理無理無理なんならあれより無理。精神的に無理。生理的に受け付けない無理」
「しおちゃんってばつれないなぁ。感動の再会だよ?もっと喜んでよ」
「最悪の再会だよちくしょうが!!!二度と会いたくなかったのに!!」
「えー?僕はこの一年と三ヶ月間、ずっと君に会いたかったのに。ほら、一年で僕結構頑張ったんだよ?この三ヶ月間も魔物退治頑張ったし。ちょっとは誉めてよ~」
「ヨクガンバッタナ」
「片言~」
ジリジリと寄ってくる奴に、赤目さんを盾に後退する俺。板挟みになっている赤目さんは、明らかに困惑している。ごめん。
「らなさんこの人ユウシャデスカ?」
「は、はい。こちら、勇者様です…やはりお知り合いでしたか?」
「悔しいことに知り合いでした。関係を全て消し去りたい部類の」
「消し去って新しくやり直そうってこと?いいね!僕も君との関係をやり直したいよ!」
「次は関り合いのない関係を俺は望む」
「次は主と奴隷の関係かな?勿論、主はしおちゃんで!」
「お前みたいなドM、死んでもいらない」
「いいねぇ!その目!!もっと蔑んで!!」
「おい、コイツに話は通じているのか?」
残念だが赤目さん。これに話は通じない。と言うか、主に俺の話を聞いてくれない。
あれ同様、俺の元友人であるこの男。何がどうなってこうなったのか、昔は普通だったのに突然ドMカミングアウトされ、あれとコイツのSMに巻き込まれてしまった。
それが嫌で関係を切ったと言うのに…
「何で俺を巻き込んだのがお前なんだよ、みゃーの!!」
「運命的だよね、しおちゃん♡」
今世紀で二番目に会いたくなかったです。
応援ありがとうございます!
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