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本編
16、止まない雨はないとか嘘だ
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ふっ、と意識が浮上する。とても爽やかな目覚めかと思いきや、どうやら俺の願いは天に通じていなかったらしい。
そんなに時間が経ってないのか、それとも俺が寝すぎて早く起きてしまっただけなのか。はたまた、この騎士は睡眠不足だったのか。
今もまだ、俺は赤目の騎士さんに抱き枕にされていた。なんで起きてないんだ。
寝る前より拘束は緩い気もするが、なんか体重がかかってて普通に重い。動けない。
今が一体何時なのかわからないが、雨はどうやら未だに止んでいないらしい。本当に今何時だろう。
俺の疑問に答えられるであろう人物は人を抱き枕に呑気に寝ているし、外を見ようにもお陰で身動きが取れない。洞穴の中は常に暗いため、時間感覚が狂ってくる。本格的にヤバいのでは。
「ねぇ、ちょっと。赤目の騎士さんや。そろそろ起きたりしませんか」
「………」
「…シカバネじゃないんだから、返事ぐらいしたっていいと思うんだ、俺」
「………ぐぅ…」
「寝息で返事すんな~~??起きろ、馬鹿!!」
「…ぐっ……ぅあ?な、なん…?」
堪らなく腹を殴ってやれば、ようやく起きてくれた騎士さん。でもまだぼんやりとしている。また寝られても困るので、ここはちゃんと起きてもらおう。
「おはようございます、騎士さん。人を抱き枕にしてとる睡眠は良質なものになりましたか?」
「…へ、ん?だきまく……っっ!!!っぁいって!!」
ようやく俺に気づいてくれた騎士さんが飛び起きる。そして、こんな狭いところで飛び起きるもんだから、天井におもいっきり頭をぶつけた。痛そう。
頭を抱えて踞る騎士さんの横で、俺はゆっくりと起き上がる。ほら、ゆっくり起きればぶつけないんだよ…?ちょっとザマァとは思ったけど。
「…貴様、今何か失礼なこと考えなかったか?」
「そんなことござぁせんよ」
「何だその喋り方」
くっ…騎士さんの癖に鋭いな……騎士だから鋭いのか?いや、そんなことはないな。うん。
一人で頷いていれば、洞穴の中がゆっくりと明るくなっていく。どうやら、騎士さんがまたあの光の玉を出したらしい。
さて、これでようやく正体が分かった。俺の下に敷かれていた、やけに柔らかく毛布みたいにふわふわなやつ。
うす緑の毛がふわふわと生えてるでかい葉っぱ。うん、葉っぱ。騎士さんが収まるぐらいでかい葉っぱ。
なにコレ。
「ん…あぁ、それか。それは……葉っぱだ」
いや、アンタも知らないんかい。
「これ、どっから持ってきたの?」
「いや、魔法で出した。俺は土も持っているからな。生やして敷いた。俺に抱えられたままだと体を痛めると思って…」
「その割りには人を抱き枕にしてたけどな。苦しかったんですが」
「…それは、すまん」
おや、随分と素直。いつもなら「お前が丁度良い大きさだったのが悪い」とか言ってきそうなのに。
調子狂うなぁ、と思っていれば、気遣わしげにこちらを見てくる騎士さんと目が合う。なんだよ。言いたいことあるならハッキリ言ったらどうなんだ、本当。
「………」
「…………」
「………………」
「…………む……」
「はい目ぇ反らしたー!騎士さんの負けー!」
「なっ!?またそれか!?」
「目を反らした方が負け。喧嘩の常識」
「だから何なんだその常識は!!」
よし、いつものノリになってきた。そうそう。騎士さんはそんな感じでツッコミしてくれないと。調子狂っちゃうよ。
「負けたんだから、言いたいことぐらいハッキリ言ったらどうなんだよ」
「負けたら言うのか?勝ったら言うとかじゃなく?」
「負けたんだから言うこと聞く。ほれ、さっさと言いなよ。今なら文句でも何でも聞いてやるぞ」
「何故そんなに偉そうなんだ、貴様」
勝ったからだよ、負け犬くん。勝ったやつは大体偉いんだ。分かれ。そしてハッキリ言えこら。
しばらく黙りを決め込んでいた騎士さんだったが、ジトッと睨めば観念したのかようやく口を開いた。
「…その、よく眠れたか?」
「………はい?」
「あぁ、いや、違うな…夢見というか…その…」
とても言い迷っていて、何を言いたいのかさっぱりである。夢見?えぇまぁ、誰かさんに抱き締められていたわりには特に何も見ませんでしたよ。普通に寝て起きた感じだけど。
首を傾げている俺に気づいたのか、何やら覚悟した様にこちらを見据えて来た。お?やっとハッキリ言ってくれるのか?
「悪夢は見なかったか?」
「あー、うん?うん。普通だったけど、え、何?」
「いや、ならいいんだ。俺も寝てしまって、また魘されていたことに気付かず寝ていたのかもしれないと思って…」
どういうこと?俺の夢事情に興味がおありで??いや多分違うな。また魘されてってことは、あー…そういや一回目に起きたとき夢見最悪だった記憶があるな。あれか。
と言うことは、つまり何だ?今のは、騎士さんなりに俺を心配しての発言ってことか?
「何、俺の夢見が心配だったの?」
「あぁ。泣くぐらい酷い悪夢を見ていたみたいで…また見てはいないかと……あ」
はい、今失言したな??何故その事実を俺に教えた。そんなら墓まで持ってけよ。夢で泣くって子供みたいな事実は墓場まで持ってけよ!!!
「いや、すまない。その、不躾ついでにずっと内容が気になっていたので、覚えているようなら聞いていいか?」
「開き直ったなテメェ!!気になったからって簡単に聞いていいもんだと思ったのか!?」
「そんなことはない!ただ、お前が寝ている間にずっと考えていたんだが、いくら悩んでも上手い聞き出しかたが分からなくてな…」
「だからいっそのこと真っ正面から聞き出そうと?」
「その通りだ」
「真っ直ぐかテメェは。何だ?アンタも脳みそ筋肉なのか??それで聞き出せると思ったら大間違いだぞこらぁ」
もうどんな反応をすれば良いのか分からない。悪夢で泣いたなんて事実に羞恥で悶えそうだし、その内容を聞かれて驚いているし、開き直られて怒りすら感じている。どうしろと。
「というか、何がそんなに気になるんだ。生意気なクソガキが泣くぐらいの夢だからさぞ怖かったんだろう、とかって馬鹿にしたいのか?」
「違う!!そんなんじゃない!!」
「ミ"ッ……き、急に叫ぶな」
「む、すまん…」
いつにもまして真剣な表情で否定された。どうやらひねくれた理由じゃないらしい。じゃあなんだ?まさか心配だったから、が知りたい理由って訳じゃあ…
違うよな?という意を込めて、騎士さんをジッと見る。数秒見つめ合い、察しの良い騎士さんにはどうやら伝わったらしい。頷かれた。
マジで?心配だからって人の悪夢聞き出そうとする?嘘でしょ?何でだよ。
「何がそんなに気になるの。泣いたから?」
「それもあるが…それだけじゃない」
「じゃあもう一つの理由教えてよ。じゃなきゃ教える必要を感じられない」
「む…それは、いや、しかし…」
え、そんなに言い難いこと?何だよ、気になるじゃんか。泣いたより酷いことってある?いいや、ないね。断言できる。あるとするなら変な寝言とかぐらいだろ。
さっさとしろよと睨む。別に言いたくないならいいんだよ?俺も内容言わないだけだから。
さぁ、どうする?と悩む騎士さんを他人事のように眺めていた俺は、次に来た言葉に思わず固まってしまった。
「お前が死にたいと思う理由が知りたい」
え、そんなぶっ込んだこと聞く?
混乱する頭に追い討ちをかけるように、雨の音が強くなった気がした。
そんなに時間が経ってないのか、それとも俺が寝すぎて早く起きてしまっただけなのか。はたまた、この騎士は睡眠不足だったのか。
今もまだ、俺は赤目の騎士さんに抱き枕にされていた。なんで起きてないんだ。
寝る前より拘束は緩い気もするが、なんか体重がかかってて普通に重い。動けない。
今が一体何時なのかわからないが、雨はどうやら未だに止んでいないらしい。本当に今何時だろう。
俺の疑問に答えられるであろう人物は人を抱き枕に呑気に寝ているし、外を見ようにもお陰で身動きが取れない。洞穴の中は常に暗いため、時間感覚が狂ってくる。本格的にヤバいのでは。
「ねぇ、ちょっと。赤目の騎士さんや。そろそろ起きたりしませんか」
「………」
「…シカバネじゃないんだから、返事ぐらいしたっていいと思うんだ、俺」
「………ぐぅ…」
「寝息で返事すんな~~??起きろ、馬鹿!!」
「…ぐっ……ぅあ?な、なん…?」
堪らなく腹を殴ってやれば、ようやく起きてくれた騎士さん。でもまだぼんやりとしている。また寝られても困るので、ここはちゃんと起きてもらおう。
「おはようございます、騎士さん。人を抱き枕にしてとる睡眠は良質なものになりましたか?」
「…へ、ん?だきまく……っっ!!!っぁいって!!」
ようやく俺に気づいてくれた騎士さんが飛び起きる。そして、こんな狭いところで飛び起きるもんだから、天井におもいっきり頭をぶつけた。痛そう。
頭を抱えて踞る騎士さんの横で、俺はゆっくりと起き上がる。ほら、ゆっくり起きればぶつけないんだよ…?ちょっとザマァとは思ったけど。
「…貴様、今何か失礼なこと考えなかったか?」
「そんなことござぁせんよ」
「何だその喋り方」
くっ…騎士さんの癖に鋭いな……騎士だから鋭いのか?いや、そんなことはないな。うん。
一人で頷いていれば、洞穴の中がゆっくりと明るくなっていく。どうやら、騎士さんがまたあの光の玉を出したらしい。
さて、これでようやく正体が分かった。俺の下に敷かれていた、やけに柔らかく毛布みたいにふわふわなやつ。
うす緑の毛がふわふわと生えてるでかい葉っぱ。うん、葉っぱ。騎士さんが収まるぐらいでかい葉っぱ。
なにコレ。
「ん…あぁ、それか。それは……葉っぱだ」
いや、アンタも知らないんかい。
「これ、どっから持ってきたの?」
「いや、魔法で出した。俺は土も持っているからな。生やして敷いた。俺に抱えられたままだと体を痛めると思って…」
「その割りには人を抱き枕にしてたけどな。苦しかったんですが」
「…それは、すまん」
おや、随分と素直。いつもなら「お前が丁度良い大きさだったのが悪い」とか言ってきそうなのに。
調子狂うなぁ、と思っていれば、気遣わしげにこちらを見てくる騎士さんと目が合う。なんだよ。言いたいことあるならハッキリ言ったらどうなんだ、本当。
「………」
「…………」
「………………」
「…………む……」
「はい目ぇ反らしたー!騎士さんの負けー!」
「なっ!?またそれか!?」
「目を反らした方が負け。喧嘩の常識」
「だから何なんだその常識は!!」
よし、いつものノリになってきた。そうそう。騎士さんはそんな感じでツッコミしてくれないと。調子狂っちゃうよ。
「負けたんだから、言いたいことぐらいハッキリ言ったらどうなんだよ」
「負けたら言うのか?勝ったら言うとかじゃなく?」
「負けたんだから言うこと聞く。ほれ、さっさと言いなよ。今なら文句でも何でも聞いてやるぞ」
「何故そんなに偉そうなんだ、貴様」
勝ったからだよ、負け犬くん。勝ったやつは大体偉いんだ。分かれ。そしてハッキリ言えこら。
しばらく黙りを決め込んでいた騎士さんだったが、ジトッと睨めば観念したのかようやく口を開いた。
「…その、よく眠れたか?」
「………はい?」
「あぁ、いや、違うな…夢見というか…その…」
とても言い迷っていて、何を言いたいのかさっぱりである。夢見?えぇまぁ、誰かさんに抱き締められていたわりには特に何も見ませんでしたよ。普通に寝て起きた感じだけど。
首を傾げている俺に気づいたのか、何やら覚悟した様にこちらを見据えて来た。お?やっとハッキリ言ってくれるのか?
「悪夢は見なかったか?」
「あー、うん?うん。普通だったけど、え、何?」
「いや、ならいいんだ。俺も寝てしまって、また魘されていたことに気付かず寝ていたのかもしれないと思って…」
どういうこと?俺の夢事情に興味がおありで??いや多分違うな。また魘されてってことは、あー…そういや一回目に起きたとき夢見最悪だった記憶があるな。あれか。
と言うことは、つまり何だ?今のは、騎士さんなりに俺を心配しての発言ってことか?
「何、俺の夢見が心配だったの?」
「あぁ。泣くぐらい酷い悪夢を見ていたみたいで…また見てはいないかと……あ」
はい、今失言したな??何故その事実を俺に教えた。そんなら墓まで持ってけよ。夢で泣くって子供みたいな事実は墓場まで持ってけよ!!!
「いや、すまない。その、不躾ついでにずっと内容が気になっていたので、覚えているようなら聞いていいか?」
「開き直ったなテメェ!!気になったからって簡単に聞いていいもんだと思ったのか!?」
「そんなことはない!ただ、お前が寝ている間にずっと考えていたんだが、いくら悩んでも上手い聞き出しかたが分からなくてな…」
「だからいっそのこと真っ正面から聞き出そうと?」
「その通りだ」
「真っ直ぐかテメェは。何だ?アンタも脳みそ筋肉なのか??それで聞き出せると思ったら大間違いだぞこらぁ」
もうどんな反応をすれば良いのか分からない。悪夢で泣いたなんて事実に羞恥で悶えそうだし、その内容を聞かれて驚いているし、開き直られて怒りすら感じている。どうしろと。
「というか、何がそんなに気になるんだ。生意気なクソガキが泣くぐらいの夢だからさぞ怖かったんだろう、とかって馬鹿にしたいのか?」
「違う!!そんなんじゃない!!」
「ミ"ッ……き、急に叫ぶな」
「む、すまん…」
いつにもまして真剣な表情で否定された。どうやらひねくれた理由じゃないらしい。じゃあなんだ?まさか心配だったから、が知りたい理由って訳じゃあ…
違うよな?という意を込めて、騎士さんをジッと見る。数秒見つめ合い、察しの良い騎士さんにはどうやら伝わったらしい。頷かれた。
マジで?心配だからって人の悪夢聞き出そうとする?嘘でしょ?何でだよ。
「何がそんなに気になるの。泣いたから?」
「それもあるが…それだけじゃない」
「じゃあもう一つの理由教えてよ。じゃなきゃ教える必要を感じられない」
「む…それは、いや、しかし…」
え、そんなに言い難いこと?何だよ、気になるじゃんか。泣いたより酷いことってある?いいや、ないね。断言できる。あるとするなら変な寝言とかぐらいだろ。
さっさとしろよと睨む。別に言いたくないならいいんだよ?俺も内容言わないだけだから。
さぁ、どうする?と悩む騎士さんを他人事のように眺めていた俺は、次に来た言葉に思わず固まってしまった。
「お前が死にたいと思う理由が知りたい」
え、そんなぶっ込んだこと聞く?
混乱する頭に追い討ちをかけるように、雨の音が強くなった気がした。
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