上 下
8 / 60
本編

02、味方ゲットだぜ

しおりを挟む
「わっ私っ…あなた、が…傷付いてっ……このっ国が、嫌いになっ…、思って…私ともっ、関わり、たくなんかっ…ないって…うぇぇぇぇん…」

 どうやら、俺の四日間の果物&読書生活は随分とラナさんを追い詰めていたらしい。ホント、なんか、ごめんなさい。


 数分後、落ち着いたラナさんが顔を洗って戻ってきた。多分、化粧直しもしてきたと思う。流石に、仕事中に号泣はあれだもんね。
 一応整理をすると、どうやら俺が果物ばかり食べる上、人と関わらず本ばかり読むものだから「12歳で大人に甘えたいはずなのに、親と離れ離れにされて幼いこの子の心を歪めてしまった」という結論に至ったらしい。この城の侍女全員が。
 まさかそんなことになっていたとは…いや、あの、申し開きもありません。

 ただ、一つだけ俺は言いたいことがあるので、一応筆談で抗議をしてみる。
 俺は12歳ではない、と。
 本にはこの世界の成人年齢も書かれていた。16歳である。つまり、俺は余裕で成人している。
 18といっても信じてもらえないかもしれないが…いい加減、12歳扱いは嫌だ。

『心配かけたようでごめんなさい。それと、俺は18歳です』
「いえいえ、心配するのは当たり前…えっ、18!?嘘ぉ!?こんなに小さいのに!?」

 やっぱり驚かれたか。チビで悪かったな!

「あっ、ごめんなさい。つい…」

 ついってなんだ!ついって!!

「ほ、本当に18なんですか?」
『はい。先日18歳になりました』
「わ、私の一つ下…えぇ?でも、それなら確かにあの本を読めるのは納得ができるわ…そうなの…それじゃあ、小さい子扱いは随分と失礼だったわね…」
『そこまでは。元々俺の人種は若く見られがちですし、背も小さいですしね』
「ご、ごめんなさい…」

 しまった、嫌味のようになってしまった。むぅ…会話ってやっぱり難しいな。

「リンドウ様、数々の無礼をお許しください」

 って、え?待ってラナさん、頭を下げないで、跪かないで、やめて。そういう扱いは子供扱いよりメンタル削られる。
 手帳でそう伝えれば、渋々といった風に立ってくれた。よかった。
 別に俺は怒ってる訳じゃないし。黙ってたこっちも悪い。それに、これでも一応明るく話しかけてくるラナさんに救われてもいたのだ。

『子供扱いでも、ラナさんが話しかけてくれたおかげで暗くならずにすみました。感謝しているんです。ありがとうございます』

 頑張って笑顔を作り、手帳を見せる。そして、まぁ、本日二度目ですね。ラナさん号泣しました、はい。

 どうやらラナさんは涙脆いらしい。

 もう一度顔を洗って化粧直しをして戻ってきたラナさんに、少しだけお願いをする。あまり態度を変えて欲しくないと。
 極度な子供扱いは少々あれだったが、別に俺は勇者でもなんでもない。なんなら、子供という設定が剥がれた以上、余計にお荷物感が増した。ラナさんが畏まる必要はない。
 それと、魔法やスキルについての本や、他にも色々と知りたいことがあるので、明日あたりに書庫か何処かに連れてってほしいこと。
 その付き添いをラナさんに頼みたいこと。
 今のところ、まともに会っているのはラナさんのみ。俺を巻き込んでくれた勇者サマや王子王女にも会っていない。
 引きこもりは慣れない人間が非常に苦手なのである。初対面の人と一緒に書庫なんて無理行けない。
 同じ理由で、俺の侍女を変えないで欲しいこと。子供じゃなくなったため、一応男性と思われている以上ラナさんじゃなくなる可能性がある。
 なんなら、執事とかが来そうだ。さらに無理。

 と、色々言っていたら、ラナさんから衝撃の事実を聞かされる。
 初日、格好もそのままで寝た俺を着替えさせたのはラナさんで、その時に俺が女だと気づいていたのだと。

 おっと、タイトルどうした???(メタァ)


 話をよくよく聞けば、周りにその事は言っていないらしい。元々俺が男の格好していたし、今現在も用意された男物の服を普通に着ている。
 なので、不用意に周りに言わなかったらしい。ぐっじょぶラナさん。その判断は正解である。
 元々男勝りな俺は、女としてこの世界でいきるのは流石に辛そうだというのはちょっと察している。
 無理無理、女らしい言葉遣いとか行動とか。せっかく魔法とかあるなら、性別偽ってでも剣士とかやってみたいじゃん。冒険してみたいじゃん。もふもふはーれむ作りたいじゃん。
 欲を言うなら使い魔的なあれで梟が欲しいです。

 と、まぁ、こんな感じなので、ラナさんにはその事実を今まで通り黙っていて貰おう。
 

 色々と約束を決めていたら晩御飯の時間になっていたらしい。筆談できるようになったので、果物だけで言いと伝えると、少し悲しそうな顔をしてから「分かりました」と部屋を出ていくラナさん。
 ろくに動いてないからお腹空かないんだよ、わかってくれ。


 晩御飯(果物のみ)を食べ終わり、少しラナさんと会話を楽しむ。
 普通の友人のように接して欲しいと頼めば、気楽に会話してくれるようになった。
 ついでに、

「そう言えば、さっき喋ろうとしていたけど、もしかして声で性別がバレるから喋らないの?」

 と聞かれたので

『いや、普通に何日も喋らなかったから声が出なくなってた』

 と答えたら、笑われました。ラナさん…

 明日からは、書庫にいくのと同時に声を出すリハビリも始めることになりました。お世話になります。



しおりを挟む
感想 44

あなたにおすすめの小説

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。

火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。 王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。 そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。 エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。 それがこの国の終わりの始まりだった。

【書籍化確定、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

残念ながら、定員オーバーです!お望みなら、次期王妃の座を明け渡しますので、お好きにしてください

mios
恋愛
ここのところ、婚約者の第一王子に付き纏われている。 「ベアトリス、頼む!このとーりだ!」 大袈裟に頭を下げて、どうにか我儘を通そうとなさいますが、何度も言いますが、無理です! 男爵令嬢を側妃にすることはできません。愛妾もすでに埋まってますのよ。 どこに、捻じ込めると言うのですか! ※番外編少し長くなりそうなので、また別作品としてあげることにしました。読んでいただきありがとうございました。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】初めて嫁ぎ先に行ってみたら、私と同名の妻と嫡男がいました。さて、どうしましょうか?

との
恋愛
「なんかさぁ、おかしな噂聞いたんだけど」 結婚式の時から一度もあった事のない私の夫には、最近子供が産まれたらしい。 夫のストマック辺境伯から領地には来るなと言われていたアナベルだが、流石に放っておくわけにもいかず訪ねてみると、 えっ? アナベルって奥様がここに住んでる。 どう言う事? しかも私が毎月支援していたお金はどこに? ーーーーーー 完結、予約投稿済みです。 R15は、今回も念の為

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

だから言ったでしょう?

わらびもち
恋愛
ロザリンドの夫は職場で若い女性から手製の菓子を貰っている。 その行為がどれだけ妻を傷つけるのか、そしてどれだけ危険なのかを理解しない夫。 ロザリンドはそんな夫に失望したーーー。

婚約解消は君の方から

みなせ
恋愛
私、リオンは“真実の愛”を見つけてしまった。 しかし、私には産まれた時からの婚約者・ミアがいる。 私が愛するカレンに嫌がらせをするミアに、 嫌がらせをやめるよう呼び出したのに…… どうしてこうなったんだろう? 2020.2.17より、カレンの話を始めました。 小説家になろうさんにも掲載しています。

処理中です...