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食事

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食堂の席に座るとミーナが食事を運んでくれる。

「ありがとう」

「うん!食事が終わったらそのまま置いて部屋に戻っていいからね!」

「わかった」

今日の晩御飯は…パンとホーンラビットの肉入りシチューか。
…ふむ、ホーンラビットはクセも無く食べやすい肉の一つだ。
これくらいの都市であれば食用兎を飼育している販売所があるのだろう。
市民は主にホーンラビットの肉を食べて動物性タンパク質をとっている。
三級国民やお金の無い二級国民はクセがあり身も硬いグリーンウルフ等の肉を食べて動物性タンパク質を体内に入れている。
グリーンウルフは雀の涙程の値段ではあるが冒険者は狩ったときに持ち帰ることがある。
自らが食べるわけではないが、三級国民等が餓死しないために安い肉を購入したがるので需要は高い。
パンに関してもそうだ…この宿のパンは良い。粗悪品の粉を使っていない…どうやら、粉引きをする風車番か水車番のどちらかと仲が良いのだろう。
風車番や水車番は麦の粉引きを担当する者たちのことだ。
この者たちと仲が悪いと粗悪品を渡されたり、ときには嫌がらせで砂を混ぜられることもある。
つまり、宿のパンを見ればその宿の人となりが分かる…と言われている。
…どうやら、当たりの宿屋だったようだ。
食事を終えると周りに気を配っていたミーナがユウキに話しかける。

「あれ?おかわりはいいの?」

「ん?おかわりはしてもいいのか?」

「もちろん!ウチはそこも含めて銀貨2枚!」

「なら、いただくよ」

「はーい!お父さん!おかわり!」

「おぅ!」

厨房の中から野太い声が聞こえた。
パンとシチューがユウキの目の前にすぐに出てきた。

「まだ足りなかったら声掛けてね!」

「ありがとう」

「いいえ!」

再びスプーンを手に取ると目の前にドカリと背中に両手斧を装備した男性が座る。

「相席…いいか?」

「どうぞどうぞ」

「すまねぇな…俺と座ろうとしてくれる奴なんかすくねぇからよ」

「数少ない1人に僕はなったってことですね。それはどうも…」

「ははは、今日はホーンラビットのシチューか…美味いだろ?」

「何故、貴方が得意気に話すんですか?」

「そりゃ、そのホーンラビットは俺たちが狩ってきたからな…美味いならそれだけ血抜きが上手くいったってことだ」

「貴方が…ホーンラビットを?」

…どう見てもホーンラビットを潰してしまうイメージしか湧かない。
本当に彼がホーンラビットを狩ったのだろうか…?

「いや、俺じゃねぇ」

「どっちだよ…」

「だから、言ったろ?俺だってな」

「あぁ、仲間に弓使いがいたのですか?」

「まぁ…うーん、違うっちゃ違うんだが…仲間…うーん、家族?みたいなもんかな?」

「尚更わからなくなりました…」

「うーんとな…孤児に戦い方、お金の手に入れ方を教えてやってるんだ」

「あぁ、なるほど。てことは、このホーンラビットは孤児の子供たちが狩った…と?」

「あぁ、血抜きもな」

「素晴らしい。調理前のホーンラビットを見た訳ではありませんが…少なくとも臭みはありませんでした。血抜きはちゃんとできていたと思いますよ?」

「そうか!?そいつは良かった!兄ちゃん良い奴だな…名前は?俺はブルドってんだ」

「ユウキです」

「ユウキ?そりゃ、勇者の名前…あぁ、なるほど。すまねぇな、俺はなんて呼んだらいい?」

「ユウキでもユウでも好きな風に呼んでください。ブルドさん」

「さんも敬語も付けなくていいぜ!ユウ!お前明日暇か?良ければ案内するが…?」

「あぁ、ありがとう。ブルド。明日は冒険者ギルドに行って冒険者登録をしようかと思ってる…」

「冒険者登録…登録したら一緒に狩りにでも行くか?」

「いや、やめておく。のんびりとやりたいからな」

「そうか、しばらくはここに泊まるんだろう?」

「そうだな…そうなると思う」

「わかった。一応俺はBランクの冒険者だ。なにかあれば声をかけてくれ、できるだけ力になろう」

「ありがとう」

ミーナがブルドに配膳をしたので丁度いいと思いチップを渡して食事をきりあげる。
ユウキは部屋に戻り、ベッドに横たわった。

「二度目の異世界…か…」

一度目のときに出会った者たちを思い出し、人族は姫以外もう生きていないことを知ったユウキは少し残念そうにため息をつき、目を閉じた。
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