11 / 25
2-4
しおりを挟む
「ま、待って…っ、諦めちゃ、困る…!」
振られるのを覚悟した瞬間、檜山が慌てたようにそう言って、俺のシャツを掴んだ。胸ぐらを引っ張られて、キスができそうな距離で檜山と見つめ合う。
「──っ、ご、ごめん…!」
その距離に驚いた檜山は、すぐに我に返って俺のシャツを離した。先程までのクールな表情が一転して、頬どころか耳まで真っ赤になっている。
「え…、今、諦めちゃ困るって…」
「──…っ!」
俺は振られるところだったのではないのか。いや、でも意味がわからない。なら、なぜあんなに徹底的に俺は避けられていたのか。
「ごめん、意味わかんないんだけど…。なんで避けてたの、俺のこと…」
「わ、わかってる…! 落ち着くから、ちょっと、待って…」
そう言いながら、檜山が真っ赤になった顔を両手で隠す。いつもクールな檜山がこんなに取り乱しているのは珍しい。あの日の朝みたいだ。
◇
「こうなるのわかってたから、村瀬に会えなかったの…」
少し落ち着いた檜山が、顔を隠していた手を緩めて話し出す。
「あの日から、駄目なの、あたし。村瀬を見ると…」
「……?」
「い、色々思い出して、顔が熱くなって、平静を保てなくて…」
「え…」
「こんなんじゃ仕事になんないし、みんなにもあたしが村瀬が好きってバレる…」
そう言うと耐え切れなくなったのか、檜山はもう一度その赤い顔を両手で覆った。
俺が好きだと、確かに今、そう言った。
「さ、避けたりして…、ごめん…」
「いや…、つまり、俺は檜山と両思いってことで、いいの…?」
俺のその質問に、檜山が不思議そうに顔を上げる。
「なんで今更そんなこと聞くの…?」
キョトンとした顔でそう答える檜山。
お前が俺のことを紛らわしく避けたせいじゃないかと急にイラッとして、俺は檜山の頬を両手でムギュッと潰した。
◇
「檜山…」
名前を呼ぶと檜山の瞳がこちらを向く。丸いその瞳は、少し戸惑ったような、だけど、どこかあの夜みたいに甘い気配もする。
「はは。真っ赤で可愛い」
「バ、バカにしてる…?」
「してない。めちゃくちゃ可愛いと思ってる」
「可愛…っ!? そ、そう…」
髪の毛を落ち着かない様子で触りながら、恥ずかしそうに檜山が視線をずらす。
意味もわからず避けられて、諦める覚悟までしたけれど、蓋を開けてみれば俺を意識してここまで赤くなってくれているなんて、可愛すぎるし、嬉しくて堪らない。
檜山の頬に優しく包むように触れて、こちらを向かせ直す。
「はは。檜山のほっぺ熱い」
「あ、あんま見ないで…」
「ちなみに、檜山は俺を見ると、何を色々思い出しちゃうわけ」
「──…っ!?」
「あの夜の何を思い出してるのか、興味あるんだけど」
意地悪にそう聞くと、すでに赤い檜山の顔がさらに赤く染まった。一体何を思い出しているのか大いに気になるところだが、それはおいおい聞き出そう。
「ね、檜山…」
「な…に…?」
「俺と付き合って」
「う、うん…、それは勿論…」
そう答えた檜山は、恥じらいながら、少し嬉しそうな顔をして。それがたまらなく可愛かった。
「好きだよ、檜山…」
そう囁いて、俺は檜山と唇を近づけた。
振られるのを覚悟した瞬間、檜山が慌てたようにそう言って、俺のシャツを掴んだ。胸ぐらを引っ張られて、キスができそうな距離で檜山と見つめ合う。
「──っ、ご、ごめん…!」
その距離に驚いた檜山は、すぐに我に返って俺のシャツを離した。先程までのクールな表情が一転して、頬どころか耳まで真っ赤になっている。
「え…、今、諦めちゃ困るって…」
「──…っ!」
俺は振られるところだったのではないのか。いや、でも意味がわからない。なら、なぜあんなに徹底的に俺は避けられていたのか。
「ごめん、意味わかんないんだけど…。なんで避けてたの、俺のこと…」
「わ、わかってる…! 落ち着くから、ちょっと、待って…」
そう言いながら、檜山が真っ赤になった顔を両手で隠す。いつもクールな檜山がこんなに取り乱しているのは珍しい。あの日の朝みたいだ。
◇
「こうなるのわかってたから、村瀬に会えなかったの…」
少し落ち着いた檜山が、顔を隠していた手を緩めて話し出す。
「あの日から、駄目なの、あたし。村瀬を見ると…」
「……?」
「い、色々思い出して、顔が熱くなって、平静を保てなくて…」
「え…」
「こんなんじゃ仕事になんないし、みんなにもあたしが村瀬が好きってバレる…」
そう言うと耐え切れなくなったのか、檜山はもう一度その赤い顔を両手で覆った。
俺が好きだと、確かに今、そう言った。
「さ、避けたりして…、ごめん…」
「いや…、つまり、俺は檜山と両思いってことで、いいの…?」
俺のその質問に、檜山が不思議そうに顔を上げる。
「なんで今更そんなこと聞くの…?」
キョトンとした顔でそう答える檜山。
お前が俺のことを紛らわしく避けたせいじゃないかと急にイラッとして、俺は檜山の頬を両手でムギュッと潰した。
◇
「檜山…」
名前を呼ぶと檜山の瞳がこちらを向く。丸いその瞳は、少し戸惑ったような、だけど、どこかあの夜みたいに甘い気配もする。
「はは。真っ赤で可愛い」
「バ、バカにしてる…?」
「してない。めちゃくちゃ可愛いと思ってる」
「可愛…っ!? そ、そう…」
髪の毛を落ち着かない様子で触りながら、恥ずかしそうに檜山が視線をずらす。
意味もわからず避けられて、諦める覚悟までしたけれど、蓋を開けてみれば俺を意識してここまで赤くなってくれているなんて、可愛すぎるし、嬉しくて堪らない。
檜山の頬に優しく包むように触れて、こちらを向かせ直す。
「はは。檜山のほっぺ熱い」
「あ、あんま見ないで…」
「ちなみに、檜山は俺を見ると、何を色々思い出しちゃうわけ」
「──…っ!?」
「あの夜の何を思い出してるのか、興味あるんだけど」
意地悪にそう聞くと、すでに赤い檜山の顔がさらに赤く染まった。一体何を思い出しているのか大いに気になるところだが、それはおいおい聞き出そう。
「ね、檜山…」
「な…に…?」
「俺と付き合って」
「う、うん…、それは勿論…」
そう答えた檜山は、恥じらいながら、少し嬉しそうな顔をして。それがたまらなく可愛かった。
「好きだよ、檜山…」
そう囁いて、俺は檜山と唇を近づけた。
0
お気に入りに追加
61
あなたにおすすめの小説
じれったい夜の残像
ペコかな
恋愛
キャリアウーマンの美咲は、日々の忙しさに追われながらも、
ふとした瞬間に孤独を感じることが増えていた。
そんな彼女の前に、昔の恋人であり今は経営者として成功している涼介が突然現れる。
再会した涼介は、冷たく離れていったかつての面影とは違い、成熟しながらも情熱的な姿勢で美咲に接する。
再燃する恋心と、互いに抱える過去の傷が交錯する中で、
美咲は「じれったい」感情に翻弄される。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】



イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる