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~7. 婚姻の理由~
婚姻の理由
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「北方諸国との会談はいかがでしたか?」
選び終わった数冊の本を抱えながら、ルバートがそう聞く。
「あぁ。会談自体は滞りなかったが、帰り際に軽い嫌味を言われたよ」
「嫌味…ですか?」
「ロザリアとの婚姻に関してな。僕が "策士" だと」
その言葉に、ルバートが小さく笑った。
「サイラス殿下がどれだけロザリア妃殿下に懸想なさっているか、見せたいぐらいですね」
「…やめてくれ」
ルバートの言葉に、頬を掻く。公の場では取り繕えていると思うが、使用人たちの前ではそんなにもダダ洩れているのだろうか…
「ですが、サイラス殿下…」
「ん…?」
「ロザリア妃殿下にも、本当のことは何も伝えず、このまま協力を仰ぐのですか…?」
ルバートが少し心配そうな顔をして、そう聞いた。
「あぁ。わざわざ言う必要もないからな」
「しかし、ロザリア妃殿下は、クレディア公爵家との繋がりを持つために結婚させられたと思われるのではないでしょうか…?」
「…だろうな」
ある意味、それは事実だ。セントレア帝国への輸出には、ロザリアの父親であるクレディア公爵が立ち上げたクレディア商会と手を組むのが最も理想的だ。ロザリアがいれば、それが叶う。だからこそ、先程の男も "策士" だなどと言ったのだ。
実際、レリック公国の王家は最初からそのつもりで、彼女を僕の妻に迎えることを承諾している。というよりも、それがレリック公国にとって大きな "利" になると、説得したのは自分だ。
彼女は賢い。直接言葉にするまでもなく、すぐにこの事実に気づくだろう。
「ロザリア妃殿下は、ショックを受けられるのでは…?」
「…?」
ルバートの問いに首を傾げる。元々、彼女自身はこの婚姻がなぜ為されたのか、疑問に思っていたことだろう。彼女の性格を考えれば、理由がわかることで、むしろスッキリするのではないだろうか。
「その…、最近のロザリア妃殿下は、サイラス殿下に惹かれているように、お見受けするので…」
ルバートのその言葉に苦笑した。
「それはルバートの願望がそう見せているだけだろう?」
ルバートを始め、我が家の使用人たちは、僕のことを過剰なほどに慕ってくれている。有り難いことではあるが、その言葉を真に受けるほど、冷静さを欠いてはいない。
「た、確かに僕がそう願っているのは事実ですが、それだけでは…!」
「ルバートの気持ちは嬉しいが、こんなにすぐ彼女の心を手に入れられるほど、世の中は甘くないさ」
そう笑ってルバートの肩をポンポンと叩くと、僕は執務へと戻った。
選び終わった数冊の本を抱えながら、ルバートがそう聞く。
「あぁ。会談自体は滞りなかったが、帰り際に軽い嫌味を言われたよ」
「嫌味…ですか?」
「ロザリアとの婚姻に関してな。僕が "策士" だと」
その言葉に、ルバートが小さく笑った。
「サイラス殿下がどれだけロザリア妃殿下に懸想なさっているか、見せたいぐらいですね」
「…やめてくれ」
ルバートの言葉に、頬を掻く。公の場では取り繕えていると思うが、使用人たちの前ではそんなにもダダ洩れているのだろうか…
「ですが、サイラス殿下…」
「ん…?」
「ロザリア妃殿下にも、本当のことは何も伝えず、このまま協力を仰ぐのですか…?」
ルバートが少し心配そうな顔をして、そう聞いた。
「あぁ。わざわざ言う必要もないからな」
「しかし、ロザリア妃殿下は、クレディア公爵家との繋がりを持つために結婚させられたと思われるのではないでしょうか…?」
「…だろうな」
ある意味、それは事実だ。セントレア帝国への輸出には、ロザリアの父親であるクレディア公爵が立ち上げたクレディア商会と手を組むのが最も理想的だ。ロザリアがいれば、それが叶う。だからこそ、先程の男も "策士" だなどと言ったのだ。
実際、レリック公国の王家は最初からそのつもりで、彼女を僕の妻に迎えることを承諾している。というよりも、それがレリック公国にとって大きな "利" になると、説得したのは自分だ。
彼女は賢い。直接言葉にするまでもなく、すぐにこの事実に気づくだろう。
「ロザリア妃殿下は、ショックを受けられるのでは…?」
「…?」
ルバートの問いに首を傾げる。元々、彼女自身はこの婚姻がなぜ為されたのか、疑問に思っていたことだろう。彼女の性格を考えれば、理由がわかることで、むしろスッキリするのではないだろうか。
「その…、最近のロザリア妃殿下は、サイラス殿下に惹かれているように、お見受けするので…」
ルバートのその言葉に苦笑した。
「それはルバートの願望がそう見せているだけだろう?」
ルバートを始め、我が家の使用人たちは、僕のことを過剰なほどに慕ってくれている。有り難いことではあるが、その言葉を真に受けるほど、冷静さを欠いてはいない。
「た、確かに僕がそう願っているのは事実ですが、それだけでは…!」
「ルバートの気持ちは嬉しいが、こんなにすぐ彼女の心を手に入れられるほど、世の中は甘くないさ」
そう笑ってルバートの肩をポンポンと叩くと、僕は執務へと戻った。
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