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~6. 公国の戦略~
首筋の痕
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「ん…」
陽の光に目を覚ます。ゴツゴツとした感触に視線を上げると、サイラス殿下が柔らかく微笑んだ。
「起きたか?」
「え、ええ…、おはよう…ございます…」
昨夜はあのまま殿下の腕の中で眠ってしまったみたいだ。
「お、起こしてくだされば、良かったのに…」
「穏やかに眠る貴女が綺麗で見惚れていた」
そう言いながら、殿下は私のおでこに触れるだけのキスをする。肌に触れる体温に昨夜の行為が蘇る。なんだか随分と大胆なことをしてしまったような気がする…
「身体は大丈夫か?」
「え、えぇ…」
殿下の手が私を労わるように頬を包む。少し怠さは残るけれど、身体に痛みはなさそうだ。殿下が満たしていた感覚がまだ残っている。多幸感と呼べるような感情が私の心を占めている。
殿下の指が髪を撫で、そのまま首元へ触れる。その瞬間、殿下は少し複雑な顔をした。
「殿下…?」
「あー…、これはまた叱られるかもしれないな、レイラに…」
「え…?」
「いや…、陽の光の下で見ると、だいぶくっきりと…、その、歯型がだな…」
「─…っ!」
その言葉に、昨夜、首筋に歯を立てられたことを思い出す。そんなにはっきりと痕が残っているのだろうか…
「痛くないか?」
「え、えぇ…」
「これは何の言い訳もできないな…。大人しく叱られるとするか…」
そう言った殿下は、観念したように苦笑した。
「う、嬉しかった…ですわ…!」
「え…?」
「あ…っ、い、いえ…、その…」
思わず口から出てしまった言葉に慌てる。噛まれて嬉しいなど、何を言っているのだ。
「貴女は…、まったく…」
「え…? わ…っ!?」
身体をグッと引き寄せられ、殿下に抱き締められる。直接触れた肌から、殿下の心臓の音が大きく鳴っているのを感じる。
「で、殿下…?」
「…そんなことを言われたら、欲が出る」
「あ、あの…?」
「…いや、何でもない。そろそろ支度をしないとな」
そう身体を離した殿下は、いつもの穏やかな笑顔に戻っていた。
◇
「そうだ、ロザリア」
寝着を羽織り、髪を軽く整えた私に殿下がそう声を掛ける。
「後で執務室に来られるか?」
「…?」
「少し話したいことがあってな。今日は一日執務室にいるから、いつ来てくれても構わない」
「えぇ、わかりましたわ」
改まって話とは一体なんだろう。今、ここで話すのでは駄目なのだろうか。不思議に思う私を余所に、殿下は自身の支度を整えていた。
陽の光に目を覚ます。ゴツゴツとした感触に視線を上げると、サイラス殿下が柔らかく微笑んだ。
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「え、ええ…、おはよう…ございます…」
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そう言いながら、殿下は私のおでこに触れるだけのキスをする。肌に触れる体温に昨夜の行為が蘇る。なんだか随分と大胆なことをしてしまったような気がする…
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「え、えぇ…」
殿下の手が私を労わるように頬を包む。少し怠さは残るけれど、身体に痛みはなさそうだ。殿下が満たしていた感覚がまだ残っている。多幸感と呼べるような感情が私の心を占めている。
殿下の指が髪を撫で、そのまま首元へ触れる。その瞬間、殿下は少し複雑な顔をした。
「殿下…?」
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「え…?」
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「─…っ!」
その言葉に、昨夜、首筋に歯を立てられたことを思い出す。そんなにはっきりと痕が残っているのだろうか…
「痛くないか?」
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「う、嬉しかった…ですわ…!」
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思わず口から出てしまった言葉に慌てる。噛まれて嬉しいなど、何を言っているのだ。
「貴女は…、まったく…」
「え…? わ…っ!?」
身体をグッと引き寄せられ、殿下に抱き締められる。直接触れた肌から、殿下の心臓の音が大きく鳴っているのを感じる。
「で、殿下…?」
「…そんなことを言われたら、欲が出る」
「あ、あの…?」
「…いや、何でもない。そろそろ支度をしないとな」
そう身体を離した殿下は、いつもの穏やかな笑顔に戻っていた。
◇
「そうだ、ロザリア」
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「後で執務室に来られるか?」
「…?」
「少し話したいことがあってな。今日は一日執務室にいるから、いつ来てくれても構わない」
「えぇ、わかりましたわ」
改まって話とは一体なんだろう。今、ここで話すのでは駄目なのだろうか。不思議に思う私を余所に、殿下は自身の支度を整えていた。
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