33 / 75
〜5. 真紅の薔薇姫〜
欲する心*
しおりを挟む
油断…していた。というより、当たり前のことを忘れていた。昼間はクラウス王子や使用人たちのお陰でサイラス殿下と二人きりになるのを避けられた。しかし、閨に誘われてしまえば、結局、このように二人きりになってしまうのだったと今更ながら気が付いた。
「…ロザリア」
「は、はい…!」
「なぜ、そんなに端っこに…」
ベッドに腰掛けた殿下が戸惑った表情で私を見る。隣に座ったつもりが、無意識にだいぶ距離を取っていたみたいだ。
「な、なんでもありませんわ…!」
そう答えて、おずおずと殿下のそばに座り直す。腰に回された手にグッと引き寄せられ、その力強さと温かい体温にドキッとした。
「やはり、今日は体調が優れないのではないか…?」
そう言いながら、殿下がコツンとおでこをぶつける。
「で、殿下…!?」
「熱はなさそうだが、無理をせず今夜は部屋に戻るか?」
「い、いえ…! 元気ですわ…!」
「しかし…」
殿下が心配そうに私の表情を覗く。至近距離で殿下に見つめられ、心臓が高鳴る。なぜだろう。元々、整った顔立ちだと思っていたはずなのに、今日は殿下が格段に格好良く見える気がする。
というか、先ほどから私はなんだかおかしい。殿下への気持ちを自覚したせいだろうか。これから抱かれるのだと思ったら、どう振舞えば良いのか分からなくなってしまった。
「す、少し…緊張しているのかもしれませんわ」
「…今更か?」
殿下が私を疑うような目で見る。そんな目で見ないで欲しい。全ては私の心を奪った殿下のせいであるのに。
「あの…、大丈夫…ですわ」
「いや、しかし…、貴女に無理をさせると、レイラに叱られるからな…」
そう言いながら、殿下が困ったような顔をする。レイラの名前が出た瞬間、このままでは本当に部屋に戻されてしまいそうな気がして、私は殿下の顔を引き寄せると強引に唇を重ねた。
「─…っ!」
殿下の身体がビクっと震える。構わず唇を押し付け、ペロ…と殿下の舌を舐める。いつも殿下から接吻をされるばかりで気が回っていなかったけれど、男性の唇も柔らかいのだなと思いながら。
「ロザ…リア…?」
「…抱いて…ください」
そう言いながら、私は自らの胸元のボタンに手を掛ける。端ないことをしている自覚はある。だけど、私がボタンを一つずつ外すたび、殿下の瞳が熱を帯びていくのがわかった。
はらり…と前が開ける。露わになった私の肌を見て、殿下がゴク…と唾を呑む。
「いいのか…? 貴女からこんなことをされたら、止まれないのだが…」
「勿論ですわ…」
そう微笑んで、私はもう一度、殿下と唇を重ねた。
「…ロザリア」
「は、はい…!」
「なぜ、そんなに端っこに…」
ベッドに腰掛けた殿下が戸惑った表情で私を見る。隣に座ったつもりが、無意識にだいぶ距離を取っていたみたいだ。
「な、なんでもありませんわ…!」
そう答えて、おずおずと殿下のそばに座り直す。腰に回された手にグッと引き寄せられ、その力強さと温かい体温にドキッとした。
「やはり、今日は体調が優れないのではないか…?」
そう言いながら、殿下がコツンとおでこをぶつける。
「で、殿下…!?」
「熱はなさそうだが、無理をせず今夜は部屋に戻るか?」
「い、いえ…! 元気ですわ…!」
「しかし…」
殿下が心配そうに私の表情を覗く。至近距離で殿下に見つめられ、心臓が高鳴る。なぜだろう。元々、整った顔立ちだと思っていたはずなのに、今日は殿下が格段に格好良く見える気がする。
というか、先ほどから私はなんだかおかしい。殿下への気持ちを自覚したせいだろうか。これから抱かれるのだと思ったら、どう振舞えば良いのか分からなくなってしまった。
「す、少し…緊張しているのかもしれませんわ」
「…今更か?」
殿下が私を疑うような目で見る。そんな目で見ないで欲しい。全ては私の心を奪った殿下のせいであるのに。
「あの…、大丈夫…ですわ」
「いや、しかし…、貴女に無理をさせると、レイラに叱られるからな…」
そう言いながら、殿下が困ったような顔をする。レイラの名前が出た瞬間、このままでは本当に部屋に戻されてしまいそうな気がして、私は殿下の顔を引き寄せると強引に唇を重ねた。
「─…っ!」
殿下の身体がビクっと震える。構わず唇を押し付け、ペロ…と殿下の舌を舐める。いつも殿下から接吻をされるばかりで気が回っていなかったけれど、男性の唇も柔らかいのだなと思いながら。
「ロザ…リア…?」
「…抱いて…ください」
そう言いながら、私は自らの胸元のボタンに手を掛ける。端ないことをしている自覚はある。だけど、私がボタンを一つずつ外すたび、殿下の瞳が熱を帯びていくのがわかった。
はらり…と前が開ける。露わになった私の肌を見て、殿下がゴク…と唾を呑む。
「いいのか…? 貴女からこんなことをされたら、止まれないのだが…」
「勿論ですわ…」
そう微笑んで、私はもう一度、殿下と唇を重ねた。
0
お気に入りに追加
80
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。

《完結》愛する人と結婚するだけが愛じゃない
ぜらいす黒糖
恋愛
オリビアはジェームズとこのまま結婚するだろうと思っていた。
ある日、可愛がっていた後輩のマリアから「先輩と別れて下さい」とオリビアは言われた。
ジェームズに確かめようと部屋に行くと、そこにはジェームズとマリアがベッドで抱き合っていた。
ショックのあまり部屋を飛び出したオリビアだったが、気がつくと走る馬車の前を歩いていた。

1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。
尾道小町
恋愛
登場人物紹介
ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢
17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。
ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。
シェーン・ロングベルク公爵 25歳
結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。
ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳
優秀でシェーンに、こき使われている。
コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳
ヴィヴィアンの幼馴染み。
アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳
シェーンの元婚約者。
ルーク・ダルシュール侯爵25歳
嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。
ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。
ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。
この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。
ジュリアン・スチール公爵令嬢18歳デビット王太子殿下の婚約者。
ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳
私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。
一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。
正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

婚約者を追いかけるのはやめました
カレイ
恋愛
公爵令嬢クレアは婚約者に振り向いて欲しかった。だから頑張って可愛くなれるように努力した。
しかし、きつい縦巻きロール、ゴリゴリに巻いた髪、匂いの強い香水、婚約者に愛されたいがためにやったことは、全て侍女たちが嘘をついてクロアにやらせていることだった。
でも前世の記憶を取り戻した今は違う。髪もメイクもそのままで十分。今さら手のひら返しをしてきた婚約者にももう興味ありません。

愛人をつくればと夫に言われたので。
まめまめ
恋愛
"氷の宝石”と呼ばれる美しい侯爵家嫡男シルヴェスターに嫁いだメルヴィーナは3年間夫と寝室が別なことに悩んでいる。
初夜で彼女の背中の傷跡に触れた夫は、それ以降別室で寝ているのだ。
仮面夫婦として過ごす中、ついには夫の愛人が選んだ宝石を誕生日プレゼントに渡される始末。
傷つきながらも何とか気丈に振る舞う彼女に、シルヴェスターはとどめの一言を突き刺す。
「君も愛人をつくればいい。」
…ええ!もう分かりました!私だって愛人の一人や二人!
あなたのことなんてちっとも愛しておりません!
横暴で冷たい夫と結婚して以降散々な目に遭うメルヴィーナは素敵な愛人をゲットできるのか!?それとも…?なすれ違い恋愛小説です。
※感想欄では読者様がせっかく気を遣ってネタバレ抑えてくれているのに、作者がネタバレ返信しているので閲覧注意でお願いします…

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる