公国第二王子の一途な鐘愛 〜白い結婚ではなかったのですか!?〜

緑野 蜜柑

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〜5. 真紅の薔薇姫〜

欲する心*

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油断…していた。というより、当たり前のことを忘れていた。昼間はクラウス王子や使用人たちのお陰でサイラス殿下と二人きりになるのを避けられた。しかし、閨に誘われてしまえば、結局、このように二人きりになってしまうのだったと今更ながら気が付いた。

「…ロザリア」
「は、はい…!」
「なぜ、そんなに端っこに…」

ベッドに腰掛けた殿下が戸惑った表情でわたくしを見る。隣に座ったつもりが、無意識にだいぶ距離を取っていたみたいだ。

「な、なんでもありませんわ…!」

そう答えて、おずおずと殿下のそばに座り直す。腰に回された手にグッと引き寄せられ、その力強さと温かい体温にドキッとした。

「やはり、今日は体調が優れないのではないか…?」

そう言いながら、殿下がコツンとおでこをぶつける。

「で、殿下…!?」
「熱はなさそうだが、無理をせず今夜は部屋に戻るか?」
「い、いえ…! 元気ですわ…!」
「しかし…」

殿下が心配そうにわたくしの表情を覗く。至近距離で殿下に見つめられ、心臓が高鳴る。なぜだろう。元々、整った顔立ちだと思っていたはずなのに、今日は殿下が格段に格好良く見える気がする。

というか、先ほどからわたくしはなんだかおかしい。殿下への気持ちを自覚したせいだろうか。これから抱かれるのだと思ったら、どう振舞えば良いのか分からなくなってしまった。

「す、少し…緊張しているのかもしれませんわ」
「…今更か?」

殿下がわたくしを疑うような目で見る。そんな目で見ないで欲しい。全てはわたくしの心を奪った殿下のせいであるのに。

「あの…、大丈夫…ですわ」
「いや、しかし…、貴女に無理をさせると、レイラに叱られるからな…」

そう言いながら、殿下が困ったような顔をする。レイラの名前が出た瞬間、このままでは本当に部屋に戻されてしまいそうな気がして、わたくしは殿下の顔を引き寄せると強引に唇を重ねた。

「─…っ!」

殿下の身体がビクっと震える。構わず唇を押し付け、ペロ…と殿下の舌を舐める。いつも殿下から接吻キスをされるばかりで気が回っていなかったけれど、男性の唇も柔らかいのだなと思いながら。

「ロザ…リア…?」
「…抱いて…ください」

そう言いながら、わたくしは自らの胸元のボタンに手を掛ける。はしたないことをしている自覚はある。だけど、わたくしがボタンを一つずつ外すたび、殿下の瞳が熱を帯びていくのがわかった。

はらり…と前がはだける。露わになったわたくしの肌を見て、殿下がゴク…と唾を呑む。

「いいのか…? 貴女からこんなことをされたら、止まれないのだが…」
「勿論ですわ…」

そう微笑んで、わたくしはもう一度、殿下と唇を重ねた。
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