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〜5. 真紅の薔薇姫〜
初恋*
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幼い頃から、恋を知らずに生きてきた。アーサー皇子と私の婚約が決まったのは、私が5歳の時。まだ、恋など知るはずもない。
それ以来、私の頭を占めていたのは、アーサー皇子の妃になるのだという責任と使命。毎日、朝から晩まで費やしても足りぬほど学ぶことは山のようにあり、押し潰されそうな重圧を常に背負っていた。
恋など考える暇もなかった。そのような浮ついた感情では、とてもではないけれど、セントレア帝国を背負う妃になどなれないと思っていた。
婚約破棄により、その枷は全てなくなった。だからだろうか。人生で初めて、恋という感情に心が動いてしまったのは。
◇
「あぁ…ッ、だめ…っ、ハァ…、や…う…っ、んん…っ、殿下…ッ」
白い結婚だったはずが、予想外にそれは覆された。妃教育で学んだこと以外は何も知らぬ私は、殿下の腕の中で、与えられる快感を受け止めるのに精いっぱいだった。
「ほら、こうされるのが悦いのだろう?」
「ふぁ…ッ、やぁ…っ、それ、ダメ…っ」
自分のものとは思えぬ喘ぎ声に驚いた。殿下の甘い愛撫に、初めて気持ち悦いという感覚を知った。戸惑いと背徳感の中で硬くなった殿下自身を受け入れ、膣内を何度も擦られた。
自分を保つのに必死だった。端ない喘ぎ声は我慢するどころか大きくなるばかりで、身体を震わせ何度も達した。自分の身体であるはずなのに、閨の最中は感じるのも昇るのも、全て殿下に委ねられていた。
「で、殿下…ッ、あ…ッ、も、もう…っ♡」
身も心も、殿下に甘く支配されていくかのようだった。殿下の男根が奥深くを突くたび、それは私の身体に刻まれていく気がした。
白い結婚の方がマシだったかもしれない。私の心も身体も奪っておいて、それでも彼は、心の奥で他の相手を想っているのだから。
「殿下…っ」
あの夜、目を瞑って快感を追う殿下に、手を伸ばして頬に触れた。瞼の裏にリディア様の姿があるように思えたからだ。
瞼を開けた殿下の瞳は、私を見て、優しく微笑んだ。それを見て、少しほっとした。そのまま果てる間際まで、殿下は私を見つめていてくれた。
「…っく、ロザ…リア─…っ」
そう名を呼んで、私の一番深い場所で果てた殿下が、堪らなく愛しかった。殿下のすべてが私のものになればいいのに、そう思った。
恋とはもっと綺麗な感情だと思っていた。だけど、そこにあったのは、独占欲や嫉妬、焦燥…。腹の奥で渦巻くようなその気持ちは欲深く、決して綺麗なものではなかった。
こんな気持ちが自分の中で生まれるとは思ってもみなかった。だけど確かに、初めて抱いたその感情は、恋と呼ぶしかないものだった。
それ以来、私の頭を占めていたのは、アーサー皇子の妃になるのだという責任と使命。毎日、朝から晩まで費やしても足りぬほど学ぶことは山のようにあり、押し潰されそうな重圧を常に背負っていた。
恋など考える暇もなかった。そのような浮ついた感情では、とてもではないけれど、セントレア帝国を背負う妃になどなれないと思っていた。
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◇
「あぁ…ッ、だめ…っ、ハァ…、や…う…っ、んん…っ、殿下…ッ」
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白い結婚の方がマシだったかもしれない。私の心も身体も奪っておいて、それでも彼は、心の奥で他の相手を想っているのだから。
「殿下…っ」
あの夜、目を瞑って快感を追う殿下に、手を伸ばして頬に触れた。瞼の裏にリディア様の姿があるように思えたからだ。
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