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〜5. 真紅の薔薇姫〜
真紅の薔薇姫
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「あら…、ロザリア義姉様…?」
三人での茶会を終え、両殿下が執務に戻られた後、私はレイラと共に王城内の図書館へと足を運んだ。目ぼしい数冊の書物を選び自室へ戻ろうとしたところで、リディア嬢に会った。
「あ…、ごきげんよう、リディア様…」
「ごきげんよう、義姉様。お会いできて、嬉しいですわ」
そう言って、愛らしい顔が綻ぶ。こんな場所で会うとは思っていなかった。
「…義姉様は、随分と難しい御本を選んでいらっしゃるのですね」
「え…! あ…っ、ええ、レリック公国のことを、色々と勉強したくて…!」
「ふふ。さすがですわ」
そう言って微笑むリディア嬢に、私も微笑みを返す。次から読みたい本はカモフラージュ用の書物の間に紛れ込ませようと思いながら。
「リディア様は、今日は王城へ何かご用でも…?」
話題を変えたくて、そうリディア嬢へ尋ねる。クラウス王子と婚礼前の "婚約者" という立場の彼女は王城にはまだ自室がない。普段は城下の邸宅に住んでいて、用事があるときに登城するようだった。
「ええ、所用で。クラウス殿下のお部屋も訪ねたのですが、席を外しておられたので時間潰しにこちらへ」
「そ、そうだったのですね…」
それは彼がちょうど私の部屋でお茶を飲んでいた時間帯だったのかもしれない。だとしたら、申し訳ないことをした。
「あの、ロザリア義姉様…、もしお時間がありましたら、少しお話いたしませんか?」
「え…?」
「私、ロザリア義姉様とずっと話してみたかったのですわ」
無邪気にそう笑う彼女に、断る理由も見つけられず、私は「ええ」と笑顔で頷いた。
◇
「ここ、私のお気に入りの場所なんです。この時期は薔薇が綺麗で…」
図書館の一番奥。西日が柔らかく差す窓辺でリディア嬢がそう微笑んだ。この場所は、王族の蔵書が収められた特別なスペース。レイラには先ほど選んだ書物を預け、先に部屋へと下がらせた。
彼女の言う通り、窓の外の庭園では真紅の薔薇が見頃を迎えていた。彼女のフワフワとしたブロンドの髪が、窓から差す陽の光に透けて輝いている。
まるで絵画のようだった。書物に囲まれた静寂な窓辺から、真紅の薔薇を眺める彼女の姿は、見惚れるほど美しかった。
三人での茶会を終え、両殿下が執務に戻られた後、私はレイラと共に王城内の図書館へと足を運んだ。目ぼしい数冊の書物を選び自室へ戻ろうとしたところで、リディア嬢に会った。
「あ…、ごきげんよう、リディア様…」
「ごきげんよう、義姉様。お会いできて、嬉しいですわ」
そう言って、愛らしい顔が綻ぶ。こんな場所で会うとは思っていなかった。
「…義姉様は、随分と難しい御本を選んでいらっしゃるのですね」
「え…! あ…っ、ええ、レリック公国のことを、色々と勉強したくて…!」
「ふふ。さすがですわ」
そう言って微笑むリディア嬢に、私も微笑みを返す。次から読みたい本はカモフラージュ用の書物の間に紛れ込ませようと思いながら。
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「そ、そうだったのですね…」
それは彼がちょうど私の部屋でお茶を飲んでいた時間帯だったのかもしれない。だとしたら、申し訳ないことをした。
「あの、ロザリア義姉様…、もしお時間がありましたら、少しお話いたしませんか?」
「え…?」
「私、ロザリア義姉様とずっと話してみたかったのですわ」
無邪気にそう笑う彼女に、断る理由も見つけられず、私は「ええ」と笑顔で頷いた。
◇
「ここ、私のお気に入りの場所なんです。この時期は薔薇が綺麗で…」
図書館の一番奥。西日が柔らかく差す窓辺でリディア嬢がそう微笑んだ。この場所は、王族の蔵書が収められた特別なスペース。レイラには先ほど選んだ書物を預け、先に部屋へと下がらせた。
彼女の言う通り、窓の外の庭園では真紅の薔薇が見頃を迎えていた。彼女のフワフワとしたブロンドの髪が、窓から差す陽の光に透けて輝いている。
まるで絵画のようだった。書物に囲まれた静寂な窓辺から、真紅の薔薇を眺める彼女の姿は、見惚れるほど美しかった。
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