公国第二王子の一途な鐘愛 〜白い結婚ではなかったのですか!?〜

緑野 蜜柑

文字の大きさ
上 下
30 / 75
〜5. 真紅の薔薇姫〜

真紅の薔薇姫

しおりを挟む
「あら…、ロザリア義姉おねえ様…?」

三人での茶会を終え、両殿下が執務に戻られた後、わたくしはレイラと共に王城内の図書館へと足を運んだ。目ぼしい数冊の書物を選び自室へ戻ろうとしたところで、リディア嬢に会った。

「あ…、ごきげんよう、リディア様…」
「ごきげんよう、義姉おねえ様。お会いできて、嬉しいですわ」

そう言って、愛らしい顔が綻ぶ。こんな場所で会うとは思っていなかった。

「…義姉おねえ様は、随分と難しい御本を選んでいらっしゃるのですね」
「え…! あ…っ、ええ、レリック公国のことを、色々と勉強したくて…!」
「ふふ。さすがですわ」

そう言って微笑むリディア嬢に、わたくしも微笑みを返す。次から読みたい本はカモフラージュ用の書物の間に紛れ込ませようと思いながら。

「リディア様は、今日は王城へ何かご用でも…?」

話題を変えたくて、そうリディア嬢へ尋ねる。クラウス王子と婚礼前の "婚約者" という立場の彼女は王城にはまだ自室がない。普段は城下の邸宅に住んでいて、用事があるときに登城するようだった。

「ええ、所用で。クラウス殿下のお部屋も訪ねたのですが、席を外しておられたので時間潰しにこちらへ」
「そ、そうだったのですね…」

それは彼がちょうどわたくしの部屋でお茶を飲んでいた時間帯だったのかもしれない。だとしたら、申し訳ないことをした。

「あの、ロザリア義姉おねえ様…、もしお時間がありましたら、少しお話いたしませんか?」
「え…?」
わたくし、ロザリア義姉おねえ様とずっと話してみたかったのですわ」

無邪気にそう笑う彼女に、断る理由も見つけられず、わたくしは「ええ」と笑顔で頷いた。



「ここ、わたくしのお気に入りの場所なんです。この時期は薔薇が綺麗で…」

図書館の一番奥。西日が柔らかく差す窓辺でリディア嬢がそう微笑んだ。この場所は、王族の蔵書が収められた特別なスペース。レイラには先ほど選んだ書物を預け、先に部屋へと下がらせた。

彼女の言う通り、窓の外の庭園では真紅の薔薇が見頃を迎えていた。彼女のフワフワとしたブロンドの髪が、窓から差す陽の光に透けて輝いている。

まるで絵画のようだった。書物に囲まれた静寂な窓辺から、真紅の薔薇を眺める彼女の姿は、見惚れるほど美しかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

あの……殿下。私って、確か女避けのための婚約者でしたよね?

待鳥園子
恋愛
幼馴染みで従兄弟の王太子から、女避けのための婚約者になって欲しいと頼まれていた令嬢。いよいよ自分の婚期を逃してしまうと焦り、そろそろ婚約解消したいと申し込む。 女避け要員だったはずなのにつれない王太子をずっと一途に好きな伯爵令嬢と、色々と我慢しすぎて良くわからなくなっている王太子のもだもだした恋愛事情。

美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛

らがまふぃん
恋愛
 こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。※R6.5/18お気に入り登録300超に感謝!一話書いてみましたので是非是非! *らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。 ※R7.2/22お気に入り登録500を超えておりましたことに感謝を込めて、一話お届けいたします。本当にありがとうございます。

死神令嬢は年上幼馴染からの淫らな手解きに甘く溶かされる

鈴屋埜猫
恋愛
男爵令嬢でありながら、時に寝食も忘れ日々、研究に没頭するレイネシア。そんな彼女にも婚約者がいたが、ある事件により白紙となる。 そんな中、訪ねてきた兄の親友ジルベールについ漏らした悩みを克服するため、彼に手解きを受けることに。 「ちゃんと教えて、君が嫌ならすぐ止める」 優しい声音と指先が、レイネシアの心を溶かしていくーーー

竜人のつがいへの執着は次元の壁を越える

たま
恋愛
次元を超えつがいに恋焦がれるストーカー竜人リュートさんと、うっかりリュートのいる異世界へ落っこちた女子高生結の絆されストーリー その後、ふとした喧嘩らか、自分達が壮大な計画の歯車の1つだったことを知る。 そして今、最後の歯車はまずは世界の幸せの為に動く!

届かぬ温もり

HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった····· ◆◇◆◇◆◇◆ すべてフィクションです。読んでくだり感謝いたします。 ゆっくり更新していきます。 誤字脱字も見つけ次第直していきます。 よろしくお願いします。

《完結》愛する人と結婚するだけが愛じゃない

ぜらいす黒糖
恋愛
オリビアはジェームズとこのまま結婚するだろうと思っていた。 ある日、可愛がっていた後輩のマリアから「先輩と別れて下さい」とオリビアは言われた。 ジェームズに確かめようと部屋に行くと、そこにはジェームズとマリアがベッドで抱き合っていた。 ショックのあまり部屋を飛び出したオリビアだったが、気がつくと走る馬車の前を歩いていた。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

領地経営で忙しい私に、第三王子が自由すぎる理由を教えてください

ねむたん
恋愛
領地経営に奔走する伯爵令嬢エリナ。毎日忙しく過ごす彼女の元に、突然ふらりと現れたのは、自由気ままな第三王子アレクシス。どうやら領地に興味を持ったらしいけれど、それを口実に毎日のように居座る彼に、エリナは振り回されっぱなし! 領地を守りたい令嬢と、なんとなく興味本位で動く王子。全く噛み合わない二人のやりとりは、笑いあり、すれ違いあり、ちょっぴりときめきも──? くすっと気軽に読める貴族ラブコメディ!

処理中です...