30 / 75
〜5. 真紅の薔薇姫〜
真紅の薔薇姫
しおりを挟む
「あら…、ロザリア義姉様…?」
三人での茶会を終え、両殿下が執務に戻られた後、私はレイラと共に王城内の図書館へと足を運んだ。目ぼしい数冊の書物を選び自室へ戻ろうとしたところで、リディア嬢に会った。
「あ…、ごきげんよう、リディア様…」
「ごきげんよう、義姉様。お会いできて、嬉しいですわ」
そう言って、愛らしい顔が綻ぶ。こんな場所で会うとは思っていなかった。
「…義姉様は、随分と難しい御本を選んでいらっしゃるのですね」
「え…! あ…っ、ええ、レリック公国のことを、色々と勉強したくて…!」
「ふふ。さすがですわ」
そう言って微笑むリディア嬢に、私も微笑みを返す。次から読みたい本はカモフラージュ用の書物の間に紛れ込ませようと思いながら。
「リディア様は、今日は王城へ何かご用でも…?」
話題を変えたくて、そうリディア嬢へ尋ねる。クラウス王子と婚礼前の "婚約者" という立場の彼女は王城にはまだ自室がない。普段は城下の邸宅に住んでいて、用事があるときに登城するようだった。
「ええ、所用で。クラウス殿下のお部屋も訪ねたのですが、席を外しておられたので時間潰しにこちらへ」
「そ、そうだったのですね…」
それは彼がちょうど私の部屋でお茶を飲んでいた時間帯だったのかもしれない。だとしたら、申し訳ないことをした。
「あの、ロザリア義姉様…、もしお時間がありましたら、少しお話いたしませんか?」
「え…?」
「私、ロザリア義姉様とずっと話してみたかったのですわ」
無邪気にそう笑う彼女に、断る理由も見つけられず、私は「ええ」と笑顔で頷いた。
◇
「ここ、私のお気に入りの場所なんです。この時期は薔薇が綺麗で…」
図書館の一番奥。西日が柔らかく差す窓辺でリディア嬢がそう微笑んだ。この場所は、王族の蔵書が収められた特別なスペース。レイラには先ほど選んだ書物を預け、先に部屋へと下がらせた。
彼女の言う通り、窓の外の庭園では真紅の薔薇が見頃を迎えていた。彼女のフワフワとしたブロンドの髪が、窓から差す陽の光に透けて輝いている。
まるで絵画のようだった。書物に囲まれた静寂な窓辺から、真紅の薔薇を眺める彼女の姿は、見惚れるほど美しかった。
三人での茶会を終え、両殿下が執務に戻られた後、私はレイラと共に王城内の図書館へと足を運んだ。目ぼしい数冊の書物を選び自室へ戻ろうとしたところで、リディア嬢に会った。
「あ…、ごきげんよう、リディア様…」
「ごきげんよう、義姉様。お会いできて、嬉しいですわ」
そう言って、愛らしい顔が綻ぶ。こんな場所で会うとは思っていなかった。
「…義姉様は、随分と難しい御本を選んでいらっしゃるのですね」
「え…! あ…っ、ええ、レリック公国のことを、色々と勉強したくて…!」
「ふふ。さすがですわ」
そう言って微笑むリディア嬢に、私も微笑みを返す。次から読みたい本はカモフラージュ用の書物の間に紛れ込ませようと思いながら。
「リディア様は、今日は王城へ何かご用でも…?」
話題を変えたくて、そうリディア嬢へ尋ねる。クラウス王子と婚礼前の "婚約者" という立場の彼女は王城にはまだ自室がない。普段は城下の邸宅に住んでいて、用事があるときに登城するようだった。
「ええ、所用で。クラウス殿下のお部屋も訪ねたのですが、席を外しておられたので時間潰しにこちらへ」
「そ、そうだったのですね…」
それは彼がちょうど私の部屋でお茶を飲んでいた時間帯だったのかもしれない。だとしたら、申し訳ないことをした。
「あの、ロザリア義姉様…、もしお時間がありましたら、少しお話いたしませんか?」
「え…?」
「私、ロザリア義姉様とずっと話してみたかったのですわ」
無邪気にそう笑う彼女に、断る理由も見つけられず、私は「ええ」と笑顔で頷いた。
◇
「ここ、私のお気に入りの場所なんです。この時期は薔薇が綺麗で…」
図書館の一番奥。西日が柔らかく差す窓辺でリディア嬢がそう微笑んだ。この場所は、王族の蔵書が収められた特別なスペース。レイラには先ほど選んだ書物を預け、先に部屋へと下がらせた。
彼女の言う通り、窓の外の庭園では真紅の薔薇が見頃を迎えていた。彼女のフワフワとしたブロンドの髪が、窓から差す陽の光に透けて輝いている。
まるで絵画のようだった。書物に囲まれた静寂な窓辺から、真紅の薔薇を眺める彼女の姿は、見惚れるほど美しかった。
0
お気に入りに追加
80
あなたにおすすめの小説

《完結》愛する人と結婚するだけが愛じゃない
ぜらいす黒糖
恋愛
オリビアはジェームズとこのまま結婚するだろうと思っていた。
ある日、可愛がっていた後輩のマリアから「先輩と別れて下さい」とオリビアは言われた。
ジェームズに確かめようと部屋に行くと、そこにはジェームズとマリアがベッドで抱き合っていた。
ショックのあまり部屋を飛び出したオリビアだったが、気がつくと走る馬車の前を歩いていた。

美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛
らがまふぃん
恋愛
こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。※R6.5/18お気に入り登録300超に感謝!一話書いてみましたので是非是非!
*らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。 ※R7.2/22お気に入り登録500を超えておりましたことに感謝を込めて、一話お届けいたします。本当にありがとうございます。
届かぬ温もり
HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった·····
◆◇◆◇◆◇◆
すべてフィクションです。読んでくだり感謝いたします。
ゆっくり更新していきます。
誤字脱字も見つけ次第直していきます。
よろしくお願いします。

白い結婚はそちらが言い出したことですわ
来住野つかさ
恋愛
サリーは怒っていた。今日は幼馴染で喧嘩ばかりのスコットとの結婚式だったが、あろうことかバーティでスコットの友人たちが「白い結婚にするって言ってたよな?」「奥さんのこと色気ないとかさ」と騒ぎながら話している。スコットがその気なら喧嘩買うわよ! 白い結婚上等よ! 許せん! これから舌戦だ!!



この恋に終止符(ピリオド)を
キムラましゅろう
恋愛
好きだから終わりにする。
好きだからサヨナラだ。
彼の心に彼女がいるのを知っていても、どうしても側にいたくて見て見ぬふりをしてきた。
だけど……そろそろ潮時かな。
彼の大切なあの人がフリーになったのを知り、
わたしはこの恋に終止符(ピリオド)をうつ事を決めた。
重度の誤字脱字病患者の書くお話です。
誤字脱字にぶつかる度にご自身で「こうかな?」と脳内変換して頂く恐れがあります。予めご了承くださいませ。
完全ご都合主義、ノーリアリティノークオリティのお話です。
菩薩の如く広いお心でお読みくださいませ。
そして作者はモトサヤハピエン主義です。
そこのところもご理解頂き、合わないなと思われましたら回れ右をお勧めいたします。
小説家になろうさんでも投稿します。
傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。
石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。
そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。
新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。
初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、別サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる