公国第二王子の一途な鐘愛 〜白い結婚ではなかったのですか!?〜

緑野 蜜柑

文字の大きさ
上 下
26 / 75
~4. サイラスの回想~

独占欲*

しおりを挟む
「あのさ。令嬢じゃないんだから、兄上も俺もケーキなんかでは釣られないんだけど」

時は今に戻り、我が妻となったロザリアは、弟のクラウスの嫌味にニコニコと笑っている。

「あら、でも、サイラス殿下は甘い物お好きですし、召し上がりますわよね?」
「あ、あぁ。戴くが…」

ロザリアの問い掛けにそう答える。

「それにほら、中にはクラウス殿下のお好きな桃が入っていますのよ?」

…クラウスが桃を好きなことなど、いつの間に知ったのだろうか。

「まぁ…、兄上が食うなら、俺も食うけど…」

その言葉にロザリアは満面の笑みを見せる。面白くはない。ただ、レイラにお灸を据えられたばかり。この前のように暴走する訳にはいかない。



クラウスは10歳ほど歳が離れた異母弟だ。正妃を母親に持つ彼の方が王位継承権は上位で、クラウスがレリック公国の第一王子だ。

まだ15歳と若く少年らしさが残るが、第一王子として表に出るときの彼の振る舞いは完璧だ。爽やかで品の良い仮面を上手に被りながら、王子としての洞察や言動には微塵も隙がない。

第一王子であるクラウスの周りには色んな思惑の者が集う。そのことをクラウス自身もわかっているのだろう。彼は常に "模範的な王子" として振舞っている。

だから先日、クラウスがロザリアと庭園で二人で茶を飲んでいると部下から聞いたときは驚いた。しかも、駆けつけた時、クラウスはロザリアに対して嫌味を吐いていた。

それを見て、頭に血が昇った。嫌味の内容云々にではない。嫌味を吐くという行為、それはクラウスが、ごく親しい相手にだけ見せる一面だったからだ。

「クラウスとは、何の話を?」

あの後、部屋に連れ込んだロザリアのドレスを剥ぎ、身動きを封じて敏感な花蕾を弄びながら問い詰めた。

「や…う…っ、ですから…っ、お二人の、兄弟の話を…っ、あぁ…っ」

会ったばかりのロザリアにクラウスが心を許したのは予想外だった。理由はわからないが、クラウスが彼女を気に入ったのは明白だった。

そして、ロザリアの瞳にクラウスがどう映っているのかが気になった。万が一、恋心のような芽があるのなら、そんなものは早々に摘み潰さねばならない。

「貴女が笑っていたように見えたのは?」
「そ、それ…は…っ、気のせいですわ…、ひぁ…ッ!?」

怒りのあまり指先に力が入り、彼女の敏感な其処をグリっと引っ掻いた。気のせいなものか。クラウスと一緒にいた彼女の表情が、ほんの一瞬、柔らかく綻んだのを自分が見逃すはずもない。

「ああ…ッ! ん、やぁ…ッ♡、そ、それ…っ、ダメです…っ、殿下…!」

完全に嫉妬だった。可愛らしく啼く声も、快感に震える身体も、全て僕のものだ。クラウスは勿論、他の誰にも渡すつもりはない。

「あぁ"…ッ♡ だ、だめ…ッ、んん…っ、あぁあ…ん…っ♡ 殿下…ッ!」

熟した蕾を苛めても、蜜が溢れるナカを指で責め立てても、彼女は口を割らなかった。なぜ、クラウスは彼女に心を許し、あの時の微笑みはなんだったのか。

苛立ちと独占欲でどうしようもなくなった自身を、彼女の熱く震える蜜壺にぶち込んだ。欲に任せて何度も腰を打ち付け、強引に昇らせた。

やっと手に入れたのだ。貴女がその瞳に誰を映そうが関係ない。貴女の身体は全て、僕の支配下にあるのだと刻まねば気が済まなかった。

…もちろん、我に返った時にひどく後悔したのは言うまでもない。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛

らがまふぃん
恋愛
 こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。※R6.5/18お気に入り登録300超に感謝!一話書いてみましたので是非是非! *らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。 ※R7.2/22お気に入り登録500を超えておりましたことに感謝を込めて、一話お届けいたします。本当にありがとうございます。

届かぬ温もり

HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった····· ◆◇◆◇◆◇◆ すべてフィクションです。読んでくだり感謝いたします。 ゆっくり更新していきます。 誤字脱字も見つけ次第直していきます。 よろしくお願いします。

白い結婚はそちらが言い出したことですわ

来住野つかさ
恋愛
サリーは怒っていた。今日は幼馴染で喧嘩ばかりのスコットとの結婚式だったが、あろうことかバーティでスコットの友人たちが「白い結婚にするって言ってたよな?」「奥さんのこと色気ないとかさ」と騒ぎながら話している。スコットがその気なら喧嘩買うわよ! 白い結婚上等よ! 許せん! これから舌戦だ!!

側近女性は迷わない

中田カナ
恋愛
第二王子殿下の側近の中でただ1人の女性である私は、思いがけず自分の陰口を耳にしてしまった。 ※ 小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

【完結】脇役令嬢だって死にたくない

こな
恋愛
自分はただの、ヒロインとヒーローの恋愛を発展させるために呆気なく死ぬ脇役令嬢──そんな運命、納得できるわけがない。 ※ざまぁは後半

この恋に終止符(ピリオド)を

キムラましゅろう
恋愛
好きだから終わりにする。 好きだからサヨナラだ。 彼の心に彼女がいるのを知っていても、どうしても側にいたくて見て見ぬふりをしてきた。 だけど……そろそろ潮時かな。 彼の大切なあの人がフリーになったのを知り、 わたしはこの恋に終止符(ピリオド)をうつ事を決めた。 重度の誤字脱字病患者の書くお話です。 誤字脱字にぶつかる度にご自身で「こうかな?」と脳内変換して頂く恐れがあります。予めご了承くださいませ。 完全ご都合主義、ノーリアリティノークオリティのお話です。 菩薩の如く広いお心でお読みくださいませ。 そして作者はモトサヤハピエン主義です。 そこのところもご理解頂き、合わないなと思われましたら回れ右をお勧めいたします。 小説家になろうさんでも投稿します。

傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。

石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。 そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。 新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。 初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、別サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

「奇遇ですね。私の婚約者と同じ名前だ」

ねむたん
恋愛
侯爵家の令嬢リリエット・クラウゼヴィッツは、伯爵家の嫡男クラウディオ・ヴェステンベルクと婚約する。しかし、クラウディオは婚約に反発し、彼女に冷淡な態度を取り続ける。 学園に入学しても、彼は周囲とはそつなく交流しながら、リリエットにだけは冷たいままだった。そんな折、クラウディオの妹セシルの誘いで茶会に参加し、そこで新たな交流を楽しむ。そして、ある子爵子息が立ち上げた商会の服をまとい、いつもとは違う姿で社交界に出席することになる。 その夜会でクラウディオは彼女を別人と勘違いし、初めて優しく接する。

処理中です...