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~3. 深瞳の恋慕~
リディア嬢
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クラウス王子を訝しく思いながら見ていると、彼の隣に座るリディア嬢と目が合った。花のように可愛らしい顔が、私に向かってふわっと綻ぶ。
彼女は、リディア・レリック嬢。第一王子であるクラウス王子の婚約者だ。
◇
リディア嬢と私が初めて対面したのは、婚儀の前日だった。第一王子であるクラウス王子とともに、サイラス殿下が紹介してくれた。
「リディア・レリックと申します」
彼女がそう微笑んだ瞬間、その可愛らしさに心を奪われた。フワフワとしたブロンドの髪に、蒼翠玉のような澄んだ瞳。まるで人形のように愛らしかった。
それだけじゃない。彼女の仕草は細部まで神経が行き届いて美しい。帝国の妃教育を長年受けてきた私わたくしの目から見ても完璧だった。
名に "レリック" の家名が含まれている通り、彼女はレリック家の血を引く令嬢だった。クラウス王子とサイラス殿下の従姉妹なのだという。
レリック公国は独立してまだ100年ほどの若い国。そのせいか、王家は血族に重きを置いていた。
分家ではあるがレリック家の血を引き、しかも直系の王家と近い血筋。彼女もまた、生まれたその瞬間に、将来、この国の王妃になることが決まっていた。
私と同い歳の彼女は、クラウス王子よりも先に生まれている。そして、彼女が生まれたときの第一王子はサイラス殿下だった。
…そう。実は彼女は、クラウス王子が生まれるまで、サイラス殿下の婚約者だったと聞いている。
「ご婚約、おめでとうございます」
あの日、そう微笑んだリディア嬢は優しい瞳で真っ直ぐにサイラス殿下を見ていた。そして、その瞳に、サイラス殿下は当たり前のように優しく微笑み返した。
かつて婚約を結んでいた二人。二人の視線の間には、長年積み重ねてきた形容しがたい何かがある気がした。
あぁ、そうか…と、私は気付いてしまった。
リディア嬢こそが、サイラス殿下が想いを寄せる相手なのだということに…
彼女は、リディア・レリック嬢。第一王子であるクラウス王子の婚約者だ。
◇
リディア嬢と私が初めて対面したのは、婚儀の前日だった。第一王子であるクラウス王子とともに、サイラス殿下が紹介してくれた。
「リディア・レリックと申します」
彼女がそう微笑んだ瞬間、その可愛らしさに心を奪われた。フワフワとしたブロンドの髪に、蒼翠玉のような澄んだ瞳。まるで人形のように愛らしかった。
それだけじゃない。彼女の仕草は細部まで神経が行き届いて美しい。帝国の妃教育を長年受けてきた私わたくしの目から見ても完璧だった。
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