公国第二王子の一途な鐘愛 〜白い結婚ではなかったのですか!?〜

緑野 蜜柑

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~2. 王位継承権~

第一王子

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サイラス殿下には10歳ほど歳の離れた弟君がいる。名はクラウス・ヴァン・レリック様。レリック公国の第一王子だ。

そう。弟君でありながら、彼が王位継承権第一位であり、将来、レリック公国はクラウス王子が継ぐことになっている。

といっても、彼はまだ15歳を迎えたばかり。レリック公国では25歳を過ぎなければ王位継承権を行使できない決まりになっているから、どんなに早くても、彼が君主となるのはあと10年は先ということになる。

弟君が生まれるまでは、サイラス殿下が王位継承権第一位だった。しかし、サイラス殿下の母君は側妃。クラウス殿下の母君は正妃。そのため、クラウス殿下は弟君ではあるものの、生まれた瞬間に王位継承権第一位となったのだ。

さて。現在のわたくしは、なぜか王宮内の庭園で、そんなクラウス殿下とお茶をするに至っている。



「兄上は、いつも勝手だ。今回の婚姻も、僕には事前に何の相談もなく、気付いたら全てが決まっていた」
「…そうなのですね」
「僕が聞かされた時には、もう一週間後に婚儀が迫っていたんだ。実の弟なのに報告が遅すぎるだろう…!」
「……」

当の本人であるわたくしも、知ったのは婚儀のわずか10日前。父上から話を聞かされたときには、すでに大半のことが決まった後だった。本人でさえこれなのだから、クラウス王子には比較的迅速に知らされたと言えるのではないだろうか。

「しかも、だよ?」

そう言って、クラウス王子がわたくしをジロリと見る。嫌な予感…

「相手はセントレア帝国の皇子に婚約破棄されたばかりの公爵令嬢だというじゃないか」
「…そうですわね、はい」

それについては本当に、申し訳ないというか何というか…。わたくしも、まさかわたくしを妻として貰ってくれる方がいるとは思ってはいなかったのだから、クラウス王子の言うことは、もっともだ。

棘のある会話とは対照的に、目の前の庭園では、美しい春の薔薇が風に揺れ、蝶たちがヒラヒラと優雅に舞っている。

なぜわたくしはこんなところで初対面も同然なクラウス王子に嫌味を言われているのだろう。こんなことなら大人しく自室にいれば良かった。

…いや、しかし、自室にいられなくて出てきたのだ。あのまま部屋にいたら、サイラス殿下が訪ねてきたのかもしれないのだから。



昨夜、サイラス殿下の舌での愛撫に気をってしまった後、わたくしは恥ずかしさと混乱で訳がわからなくなり、そのまま殿下の隙をついて部屋から逃げ出してしまった。

朝になり、殿下からお詫びの花──この前いただいたのと同じ薔薇 "ロゼ・ブランシュ" が届いたのだけど、「お会いしたくない」と我侭わがままを言って避け続け、今に至っている。

ねやの途中で逃げ出し、さらには殿下を避けるだなんて、不敬にもほどがある。ただ、殿下の前であんな恥ずかしい姿を晒してしまって、どんな顔をして会えば良いのか、全くわからないのだ。
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