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一年の終わり
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「ねぇ、及川くん…」
昼休み、購買のパンを片手に当然のごとく私の机の前にやって来た及川くん。私はお弁当を開きながら、そう言えば大事なことを聞き忘れていたなと思い出した。
「少し前の土曜日に、女の子とデートしてたの、私見ちゃったんだけど…」
「え…っ!ゲホ…ッ」
「わっ、大丈夫…!?」
私の言葉に及川くんは明らかに動揺して、飲み始めたばかりのコーヒー牛乳にむせていた。
「お前、それどういうことだよ」
少し遅れて購買から帰ってきた鈴木くんが、会話に混じりつつ横の席に座る。
「いや、あの…、何見たの楓音ちゃん…」
「手を繋いで仲良さそうな及川くんと女の子…」
「お前…最悪。早野のこと任せられん」
そう言うと鈴木くんはガードするように私の前に腕を出した。
「ご、誤解だって…!あれは色々あって…」
そう言って必死に弁解した及川くん。どうやら彼女は、及川くんが好きで私に嫌がらせをしてしまった子のようで。
及川くんに諭されて、嫌がらせもやめ、沢山謝ったそうなのだけど、最後に一度だけ、どうしてもデートをしてほしいとお願いしたのだそうな。
「それでデートって…、しないだろ普通…」
鈴木くんが呆れ顔で及川くんを責める。
「あの時、こんな奴のために変な良心出すんじゃなかった。早野、今からでも俺にしといた方がいいんじゃないの」
そう言って鈴木くんは笑った。
放課後。
学校から続く並木道を及川くんと歩く。
見上げると、硬かった桜のつぼみが柔らかみを帯び、先端から少しピンク色を覗かせている。
その下で、当たり前のように繋がれた手が、何とも言えず嬉しい。
「及川くん、もうすぐ3年生だね」
「だね。楓音ちゃんと同じクラスになれるかな」
「うーん…、理系の及川くんとは、なれないんじゃないかな。まぁ、でも受験生だしね、クラスとか関係なく、ちゃんと勉強しないと!」
「うわ…、相変わらず真面目…。でも、たまにはゲームしようよ。勝ち逃げはズルい」
「そう簡単には負けないけど?」
「いいよ、その方が燃える。楓音ちゃん、もう俺の彼女だからね。これからはキスぐらいじゃ済まないよ」
「え…?」
その言葉の意味をすぐに理解できない私に及川くんは苦笑して、そのまま抱き寄せて、おでこに優しいキスをした。
昼休み、購買のパンを片手に当然のごとく私の机の前にやって来た及川くん。私はお弁当を開きながら、そう言えば大事なことを聞き忘れていたなと思い出した。
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「え…っ!ゲホ…ッ」
「わっ、大丈夫…!?」
私の言葉に及川くんは明らかに動揺して、飲み始めたばかりのコーヒー牛乳にむせていた。
「お前、それどういうことだよ」
少し遅れて購買から帰ってきた鈴木くんが、会話に混じりつつ横の席に座る。
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「それでデートって…、しないだろ普通…」
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「そう簡単には負けないけど?」
「いいよ、その方が燃える。楓音ちゃん、もう俺の彼女だからね。これからはキスぐらいじゃ済まないよ」
「え…?」
その言葉の意味をすぐに理解できない私に及川くんは苦笑して、そのまま抱き寄せて、おでこに優しいキスをした。
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