【完結】定期試験ゲーム 〜俺が勝ったら彼女になって〜

緑野 蜜柑

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番外編:幸せそうなあいつら

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休み時間、うちのクラスに顔を出した及川は、そのまま一直線に早野の席へ向かい、ちょっかいを出している。

早野の表情を見ていると、良かったなと思う。
あの笑顔が、俺はたまらなく、好きなんだ。

-

「来週の学年末試験、勝負しようぜ」

テストの一週間前、駅で待ち伏せして及川に声をかけた。

早野も及川も、お互いに想い合っているのはわかっていた。早野が勝っても負けても、付き合うに決まっていた。

それでいいと思った。早野は及川を好きで、及川は軽そうだけど、誰よりも早野を大事に思ってる。だから早野の背中を押したんだ。

だけど及川にただくれてやるのも面白くないから、最後に小さな意地悪をしてやった。

「不戦勝なんかじゃなくてさ、俺ちゃんと及川に勝って、早野と付き合いたいんだ」

わざと、早野が俺を選んだかのような言い方をした。

「付き合わせたくなかったら、俺が鈴木くんに勝てばいいわけだ。いいね」

「じゃあ、決まりだな」

その結果、及川が二位、俺は三位。
2点差の(僅差だが!)、敗北だった。


「あのさ、鈴木くん。楓音ちゃんが鈴木くんを好きなら、付き合えばいいと思うんだ」

結果が出た後、勝ったくせに及川はそう言った。

「俺との勝負なんかどうでもいいんだ。ちゃんと幸せにしてあげてほしい。なんか鈴木くんならさ、楓音ちゃんを任せられると思うんだよね、俺」

「及川…?」

「何よりも大事にしてくれるでしょ、鈴木くんなら。俺こう見えて鈴木くんのこと結構信頼してるんだ」

同じだと思った。同じように俺は及川になら早野を任せられると思ったんだ。こいつなら早野のことを一番大切にしてくれる、そう思ったのは間違ってなかった。

早野を幸せにするのが俺じゃなかったのは悔しいけれど、及川だからこそ、こんなにも今、気持ちがすっきりしているのだろう。


「あ、鈴木くん!」

帰り際、下駄箱で早野に会った。

「お、鈴木くん!」

下駄箱の裏から及川も顔を出す。

「予備校までの時間、及川くんと駅前のパン屋さんに行こうと思うんだけど、鈴木くんも一緒にどう?」

天使のような笑顔で早野が言う。

「せっかく付き合いたてなのに、俺が行ったら邪魔だろ」

呆れながらそう言うと

「そんなことないよ。俺、鈴木くんと話すの結構好きだし。楓音ちゃんの予備校も鈴木くんと一緒に行ってくれた方が安心だしね」

と、及川が笑う。どうやら最近の俺は、この二人にだいぶ好かれているらしい。(二人とも俺が早野に失恋したことをちゃんとわかっているんだろうか)

及川の横で嬉しそうな早野。
もちろん早野の方がずっと好きだけど、最近は及川のことも好きだなと思う。

そして、この二人がずっと幸せならいいなと思うんだ。
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