2 / 19
夏休みの変化
しおりを挟む
「なんか早野…、雰囲気変わったな」
予備校の夏期講習の授業が終わり、そう話しかけてきたのは、同じクラスの鈴木くん。
「そう…かな?」
「うん。メガネやめたのも、そのポニーテールも、すごく似合うと思う」
「あ…、ありがとう」
「じゃあ、また明日」
「うん、また明日ね」
及川くんと付き合い始めて3週間。強引に言いくるめられて、私の外見は着々と変身を遂げていた。
まず、メガネ禁止。
バイト代でコンタクトレンズを買ってくれた。
次に、三つ編み禁止。
夏は暑いからポニーテール推奨だそうだ。
そして、制服のひざ下丈のスカート禁止。
及川くん曰く、スカートの丈は、ひざより上にあればある程いいらしいが、そこはひざがやや見えるくらいで勘弁してもらった。
私の変わりぶりにお父さんは心配していたが、明るい性格のお母さんはなんだか嬉しそうだった。私の子だもの、オシャレすればいくらでも可愛くなるわよ、なんて言っていた。
「やっぱ、俺の目は正しかったな。楓音ちゃん、磨きがいあるわー」
私を見るや否や、満足そうに及川くんがそう言った。
夏休みに入ってから、予備校が終わると及川くんに会うのが日課になっている。
ラフなTシャツにジーンズ。
普段学校の男の子は制服姿ばっかりだから、こうして私服姿を見るのはなかなか新鮮だ。
それにしても、こんなシンプルな格好なのに、及川くんが着るとスタイルがいいせいかとてもオシャレに見える。
すれ違う女の子たちも及川くんのこと見てるし、こころなしか男の人までも、及川くんを羨むように見ている。
うーん…
並んでいる私、どう見られているんだろう。なんであんな子が?とか思われていたりするんだろうか。
期末試験が終わってからすぐに夏休みに突入してしまったから、及川くんと私が付き合う事態になっていることは、まだみんな知らない。けれど、休み明けに知られたら、とても大変なんじゃないかなと思う。
まぁ、それまで付き合っていればの話だけれど…
「あ…、楓音ちゃん、見てコレ」
「うん?」
「来週末、お祭りだって。花火やるっぽいよ」
「ほんとだ…」
「行こうか」
「ううん」
「コラ、おまえ彼女だろうが」
彼女…
果たして私は彼女と言っていいんだろうか…
及川くんのことが好きかと聞かれたら100%違うし、私はそこでYESと言えるほど身のほど知らずでもない。
「5時に迎えに行くから、浴衣着てきて」
「勝手に決めないでよ…」
「着てよ。せっかく可愛くなったんだから」
大きな手が私の頭を撫でて、嬉しそうな顔で笑う。
可愛くなったとか言って、そんな笑顔で説得してきて。私のこと好きでも何でもないくせに、何を考えているのだろう、この人は。
でも、浴衣か…
去年、お母さんが買ってくれたのが家にある。そんな可愛い柄、私に似合うわけないよって言って、まだ一度も袖を通していなかった。
「浴衣着たら、お母さん喜ぶかも…」
「じゃあ、決まりね。5時に家に迎えに行くから」
「うん。え、家? む、迎え…?」
「大丈夫。ちゃんと優等生な猫かぶって行くし」
「だ、大丈夫って…、え?」
「大丈夫、大丈夫」
その日、私がいくら抗議しても、及川くんは笑顔で大丈夫を繰り返し、私の抗議が受け入れられることはなかった。
予備校の夏期講習の授業が終わり、そう話しかけてきたのは、同じクラスの鈴木くん。
「そう…かな?」
「うん。メガネやめたのも、そのポニーテールも、すごく似合うと思う」
「あ…、ありがとう」
「じゃあ、また明日」
「うん、また明日ね」
及川くんと付き合い始めて3週間。強引に言いくるめられて、私の外見は着々と変身を遂げていた。
まず、メガネ禁止。
バイト代でコンタクトレンズを買ってくれた。
次に、三つ編み禁止。
夏は暑いからポニーテール推奨だそうだ。
そして、制服のひざ下丈のスカート禁止。
及川くん曰く、スカートの丈は、ひざより上にあればある程いいらしいが、そこはひざがやや見えるくらいで勘弁してもらった。
私の変わりぶりにお父さんは心配していたが、明るい性格のお母さんはなんだか嬉しそうだった。私の子だもの、オシャレすればいくらでも可愛くなるわよ、なんて言っていた。
「やっぱ、俺の目は正しかったな。楓音ちゃん、磨きがいあるわー」
私を見るや否や、満足そうに及川くんがそう言った。
夏休みに入ってから、予備校が終わると及川くんに会うのが日課になっている。
ラフなTシャツにジーンズ。
普段学校の男の子は制服姿ばっかりだから、こうして私服姿を見るのはなかなか新鮮だ。
それにしても、こんなシンプルな格好なのに、及川くんが着るとスタイルがいいせいかとてもオシャレに見える。
すれ違う女の子たちも及川くんのこと見てるし、こころなしか男の人までも、及川くんを羨むように見ている。
うーん…
並んでいる私、どう見られているんだろう。なんであんな子が?とか思われていたりするんだろうか。
期末試験が終わってからすぐに夏休みに突入してしまったから、及川くんと私が付き合う事態になっていることは、まだみんな知らない。けれど、休み明けに知られたら、とても大変なんじゃないかなと思う。
まぁ、それまで付き合っていればの話だけれど…
「あ…、楓音ちゃん、見てコレ」
「うん?」
「来週末、お祭りだって。花火やるっぽいよ」
「ほんとだ…」
「行こうか」
「ううん」
「コラ、おまえ彼女だろうが」
彼女…
果たして私は彼女と言っていいんだろうか…
及川くんのことが好きかと聞かれたら100%違うし、私はそこでYESと言えるほど身のほど知らずでもない。
「5時に迎えに行くから、浴衣着てきて」
「勝手に決めないでよ…」
「着てよ。せっかく可愛くなったんだから」
大きな手が私の頭を撫でて、嬉しそうな顔で笑う。
可愛くなったとか言って、そんな笑顔で説得してきて。私のこと好きでも何でもないくせに、何を考えているのだろう、この人は。
でも、浴衣か…
去年、お母さんが買ってくれたのが家にある。そんな可愛い柄、私に似合うわけないよって言って、まだ一度も袖を通していなかった。
「浴衣着たら、お母さん喜ぶかも…」
「じゃあ、決まりね。5時に家に迎えに行くから」
「うん。え、家? む、迎え…?」
「大丈夫。ちゃんと優等生な猫かぶって行くし」
「だ、大丈夫って…、え?」
「大丈夫、大丈夫」
その日、私がいくら抗議しても、及川くんは笑顔で大丈夫を繰り返し、私の抗議が受け入れられることはなかった。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~
菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。
だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。
車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。
あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

先輩に退部を命じられた僕を励ましてくれたアイドル級美少女の後輩マネージャーを成り行きで家に上げたら、なぜかその後も入り浸るようになった件
桜 偉村
恋愛
別にいいんじゃないんですか? 上手くならなくても——。
後輩マネージャーのその一言が、彼の人生を変えた。
全国常連の高校サッカー部の三軍に所属していた如月 巧(きさらぎ たくみ)は、自分の能力に限界を感じていた。
練習試合でも敗因となってしまった巧は、三軍キャプテンの武岡(たけおか)に退部を命じられて絶望する。
武岡にとって、巧はチームのお荷物であると同時に、アイドル級美少女マネージャーの白雪 香奈(しらゆき かな)と親しくしている目障りな存在だった。
だから、自信をなくしている巧を追い込んで退部させ、香奈と距離を置かせようとしたのだ。
そうすれば、香奈は自分のモノになると思っていたから。
武岡の思惑通り、巧はサッカー部を辞めようとしていた。
しかし、そこに香奈が現れる。
成り行きで香奈を家に上げた巧だが、なぜか彼女はその後も彼の家を訪れるようになって——。
「これは警告だよ」
「勘違いしないんでしょ?」
「僕がサッカーを続けられたのは、君のおかげだから」
「仲が良いだけの先輩に、あんなことまですると思ってたんですか?」
甘酸っぱくて、爽やかで、焦れったくて、クスッと笑えて……
オレンジジュース(のような青春)が好きな人必見の現代ラブコメ、ここに開幕!
※これより下では今後のストーリーの大まかな流れについて記載しています。
「話のなんとなくの流れや雰囲気を抑えておきたい」「ざまぁ展開がいつになるのか知りたい!」という方のみご一読ください。
【今後の大まかな流れ】
第1話、第2話でざまぁの伏線が作られます。
第1話はざまぁへの伏線というよりはラブコメ要素が強いので、「早くざまぁ展開見たい!」という方はサラッと読んでいただいて構いません!
本格的なざまぁが行われるのは第15話前後を予定しています。どうかお楽しみに!
また、特に第4話からは基本的にラブコメ展開が続きます。シリアス展開はないので、ほっこりしつつ甘さも補充できます!
※最初のざまぁが行われた後も基本はラブコメしつつ、ちょくちょくざまぁ要素も入れていこうかなと思っています。
少しでも「面白いな」「続きが気になる」と思った方は、ざっと内容を把握しつつ第20話、いえ第2話くらいまでお読みいただけると嬉しいです!
※基本は一途ですが、メインヒロイン以外との絡みも多少あります。
※本作品は小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる