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【番外編】葛藤 -西野Side-
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ドサ…ッ
栗原さんの部屋。押し倒したベッドの上。二人分の体重にベッドが軋む。驚きと戸惑いが混じった顔で栗原さんが僕を見上げている。
「に、西野…さん…?」
茶色くて丸い瞳。可愛い。この先はまだ進むべきではないと思いながらも、心臓が高鳴った。
「…いいですか?」
気付けばそう聞いていた。僕の問いに栗原さんの視線が揺れる。付き合って2か月。まだ駄目だ。彼女の中の傷が癒えたとは思えない。気持ちが通じ合っただけで十分満足で、ゆっくり進もうと決めたじゃないか。
「はい…」
震える声で栗原さんが答えた。その瞳は、覚悟を決めたようにまっすぐ僕のことを見ていた。
「に、西野さんとなら…、大丈夫です」
頬を赤く染めて恥ずかしそうにそう言いながら、栗原さんが視線を伏せた。
いとしくて可愛すぎる。こんな風に言われたら堪らない。このまま欲に飲まれて、全て自分のものにしてもいいだろうか…
───
──
─
ピピピ…、ピピピ…
聞き慣れたアラームの音。ボーっと瞳を開き、時計を見る。6時45分。いつも通りの平日の朝だ。
「んん…」
身体を起こし、アラームを止めながらゆっくり目を覚ます。なんだか夢を見ていたような…
「……」
髪を掻きながら、つい先ほどまで見ていた夢の内容を思い出す。
栗原さんがいた気がする…。うん…、栗原さんの部屋にいて…、ベッドに押し倒して…
え…、押し倒して…?
「うわ…、なんて夢を見てるんだ…」
全てを思い出して、一気に顔が熱くなる。しっかり元気になっている下半身に幻滅する。
栗原さんと付き合い始めて2ヵ月。食事やデートを繰り返しながら、僕たちは順調に穏やかな関係を築いてきた。
身体の関係はまだない。色んなことがあった彼女と関係を進めるのは、慎重になりすぎるぐらいで丁度いい。傷つけたくない。僕たちのペースでゆっくり進めばいい。
そう思いつつ、きっと先程の夢が自分の本音だ。大切にしたいと言いながら、本当は彼女を早く自分のものにしたくて堪らないのだ。
自分の中にある衝動に怖くなる。それに支配されたら、あの男のように自分も栗原さんを傷付けるかもしれない。
" に、西野さんとなら…、大丈夫です "
夢の中で彼女が言った言葉が浮かんだ。栗原さんがいかにも言いそうなそれに、心がふわっと温かいものに包まれて、微笑する。
大丈夫だ。無理して受け入れようとしてくれていたら、絶対に気付ける。絶対に止まれる。自分の気持ちを押し殺して笑う君を、僕はずっと近くで見てきたのだから。
あの夢の中のように、僕の腕の中で、ただ恥じらう彼女を抱けたら、それは堪らなく幸せだろう。
そしてそれは、きっと遠くない未来に…
栗原さんの部屋。押し倒したベッドの上。二人分の体重にベッドが軋む。驚きと戸惑いが混じった顔で栗原さんが僕を見上げている。
「に、西野…さん…?」
茶色くて丸い瞳。可愛い。この先はまだ進むべきではないと思いながらも、心臓が高鳴った。
「…いいですか?」
気付けばそう聞いていた。僕の問いに栗原さんの視線が揺れる。付き合って2か月。まだ駄目だ。彼女の中の傷が癒えたとは思えない。気持ちが通じ合っただけで十分満足で、ゆっくり進もうと決めたじゃないか。
「はい…」
震える声で栗原さんが答えた。その瞳は、覚悟を決めたようにまっすぐ僕のことを見ていた。
「に、西野さんとなら…、大丈夫です」
頬を赤く染めて恥ずかしそうにそう言いながら、栗原さんが視線を伏せた。
いとしくて可愛すぎる。こんな風に言われたら堪らない。このまま欲に飲まれて、全て自分のものにしてもいいだろうか…
───
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ピピピ…、ピピピ…
聞き慣れたアラームの音。ボーっと瞳を開き、時計を見る。6時45分。いつも通りの平日の朝だ。
「んん…」
身体を起こし、アラームを止めながらゆっくり目を覚ます。なんだか夢を見ていたような…
「……」
髪を掻きながら、つい先ほどまで見ていた夢の内容を思い出す。
栗原さんがいた気がする…。うん…、栗原さんの部屋にいて…、ベッドに押し倒して…
え…、押し倒して…?
「うわ…、なんて夢を見てるんだ…」
全てを思い出して、一気に顔が熱くなる。しっかり元気になっている下半身に幻滅する。
栗原さんと付き合い始めて2ヵ月。食事やデートを繰り返しながら、僕たちは順調に穏やかな関係を築いてきた。
身体の関係はまだない。色んなことがあった彼女と関係を進めるのは、慎重になりすぎるぐらいで丁度いい。傷つけたくない。僕たちのペースでゆっくり進めばいい。
そう思いつつ、きっと先程の夢が自分の本音だ。大切にしたいと言いながら、本当は彼女を早く自分のものにしたくて堪らないのだ。
自分の中にある衝動に怖くなる。それに支配されたら、あの男のように自分も栗原さんを傷付けるかもしれない。
" に、西野さんとなら…、大丈夫です "
夢の中で彼女が言った言葉が浮かんだ。栗原さんがいかにも言いそうなそれに、心がふわっと温かいものに包まれて、微笑する。
大丈夫だ。無理して受け入れようとしてくれていたら、絶対に気付ける。絶対に止まれる。自分の気持ちを押し殺して笑う君を、僕はずっと近くで見てきたのだから。
あの夢の中のように、僕の腕の中で、ただ恥じらう彼女を抱けたら、それは堪らなく幸せだろう。
そしてそれは、きっと遠くない未来に…
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