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特別な気持ち②
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「杏奈先輩、最近、モテ期ですねぇ」
給湯室に逃げ込んでコーヒーを入れていると、後ろから芽衣ちゃんがそう声を掛けてきた。
「芽衣ちゃん…」
「なに浮かない顔してるんですか。せっかくモテてるのに」
悠真と別れて3ヵ月。さっきの橋田さんみたいなことは実は初めてではなく、あたしはなぜか急に男性から声を掛けられるようになった。
…当然、戸惑っている。今まで男性に誘われることなんて皆無だった訳だから、当たり前と言えば当たり前だ。
「橋田さんって、女性社員から結構人気あるんですよ」
「へ、へぇ…」
あまりよく知らないけど、橋田さんはリーダーシップがあって目立つタイプ。外見も整っているし、女性に人気があるのも理解できる。そんな人が何が良くてあたしなんかに声を掛けてくるのだろう。
「結局、男の人って、結婚とか考え始めたら、杏奈先輩みたいな人がいいんですよ」
「……?」
「家庭的で優しくて、癒してくれそうな人っていうか」
…あたしが男の人だったら、芽衣ちゃんみたいに可愛い子とか、美月さんみたいな美人な方が絶対いいけど。
「その顔は信じてませんね? 杏奈先輩、自己評価低いからなぁ…」
そう言って芽衣ちゃんが笑った。
「橋田さん格好良いのに、なんで断っちゃったんですか? 食事ぐらい行ってくればいいのに」
「な、なんでって…、仕事中にあんなこと言われても…」
「じゃあ、仕事中じゃなかったら、OKしてました?」
「いや…、それは…」
芽衣ちゃんの言葉に口籠る。今どき、男の人に誘われたら試しに食事に行くぐらいは何ともないことなのかもしれないけど、あたしにとってはハードルが高い。
だって、これであたしが橋田さんと食事に行ったら、少なからず期待させてしまうってことじゃないんだろうか。格好良くて素敵な人なのだろうけど、あたしは橋田さんと付き合う未来は想像できない。
「やっぱり付き合う気もないのに、食事には行けないよ…」
「でも杏奈先輩、西野さんとは定期的に食事に行ってるくせに」
「え…っ、に、西野さんは…、その…」
突然西野さんの名前を出してきた芽衣ちゃんに慌てる。芽衣ちゃんの言う通り、あれ以降、西野さんとは2週間に1回ぐらいのペースで食事に行っている。
でも、それとこれとは事情が違うというか…。いや、違うこともないような気も最近はするのだけど…
そんなあたしを芽衣ちゃんがニヤニヤと見ているのに気付いて、あたしは急に恥ずかしくなった。
「も、もう終わり…! ほら、仕事戻るよ…!」
「えぇー…? まだ話は終わってないですよぉ」
「いいの! コーヒーも淹れ終わったんだから…!」
そう言って強制的に会話を終えて、あたしたちは給湯室を出た。
給湯室に逃げ込んでコーヒーを入れていると、後ろから芽衣ちゃんがそう声を掛けてきた。
「芽衣ちゃん…」
「なに浮かない顔してるんですか。せっかくモテてるのに」
悠真と別れて3ヵ月。さっきの橋田さんみたいなことは実は初めてではなく、あたしはなぜか急に男性から声を掛けられるようになった。
…当然、戸惑っている。今まで男性に誘われることなんて皆無だった訳だから、当たり前と言えば当たり前だ。
「橋田さんって、女性社員から結構人気あるんですよ」
「へ、へぇ…」
あまりよく知らないけど、橋田さんはリーダーシップがあって目立つタイプ。外見も整っているし、女性に人気があるのも理解できる。そんな人が何が良くてあたしなんかに声を掛けてくるのだろう。
「結局、男の人って、結婚とか考え始めたら、杏奈先輩みたいな人がいいんですよ」
「……?」
「家庭的で優しくて、癒してくれそうな人っていうか」
…あたしが男の人だったら、芽衣ちゃんみたいに可愛い子とか、美月さんみたいな美人な方が絶対いいけど。
「その顔は信じてませんね? 杏奈先輩、自己評価低いからなぁ…」
そう言って芽衣ちゃんが笑った。
「橋田さん格好良いのに、なんで断っちゃったんですか? 食事ぐらい行ってくればいいのに」
「な、なんでって…、仕事中にあんなこと言われても…」
「じゃあ、仕事中じゃなかったら、OKしてました?」
「いや…、それは…」
芽衣ちゃんの言葉に口籠る。今どき、男の人に誘われたら試しに食事に行くぐらいは何ともないことなのかもしれないけど、あたしにとってはハードルが高い。
だって、これであたしが橋田さんと食事に行ったら、少なからず期待させてしまうってことじゃないんだろうか。格好良くて素敵な人なのだろうけど、あたしは橋田さんと付き合う未来は想像できない。
「やっぱり付き合う気もないのに、食事には行けないよ…」
「でも杏奈先輩、西野さんとは定期的に食事に行ってるくせに」
「え…っ、に、西野さんは…、その…」
突然西野さんの名前を出してきた芽衣ちゃんに慌てる。芽衣ちゃんの言う通り、あれ以降、西野さんとは2週間に1回ぐらいのペースで食事に行っている。
でも、それとこれとは事情が違うというか…。いや、違うこともないような気も最近はするのだけど…
そんなあたしを芽衣ちゃんがニヤニヤと見ているのに気付いて、あたしは急に恥ずかしくなった。
「も、もう終わり…! ほら、仕事戻るよ…!」
「えぇー…? まだ話は終わってないですよぉ」
「いいの! コーヒーも淹れ終わったんだから…!」
そう言って強制的に会話を終えて、あたしたちは給湯室を出た。
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