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失恋の理由②
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無意識のうちに、西野さんなら怒らないとでも思っていたのか。自分勝手な自分が恥ずかしくなる。
冷たい態度を取られて当然だ。昨日、西野さんが言った言葉はすべて正しかった。きつい言葉もあったけど、全部、あたしのことを心配して言ってくれたものだ。
" 西野さんは関係ないじゃないですか…!"
そう言って、突き放したのはあたしのほう。関係ないだなんて、どの口が言うのか。あんなに何度も迷惑を掛けておいて。
西野さんはいつも優しかった。泣いたり傷付いたりするあたしを気に掛けてくれて、元気の出る言葉をくれた。
ふいに西野さんの柔らかい笑顔が頭に浮かぶ。あんなふうに笑ってくれることはもうないかもしれない。全部壊したのはあたしだ。
◇
時計が18時を回り、帰りの身支度をしながら窓際の西野さんのデスクを見る。先程まで、いつもと変わらない様子で淡々と仕事をしていたのに、気づかないうちに西野さんは帰ったようだった。
「じゃあ、行きましょっか、先輩」
「え…?」
「え、じゃなくて。飲みに誘ったの杏奈先輩じゃないですか…」
すっかり忘れていたあたしを芽衣ちゃんが呆れ顔で見る。西野さんを怒らせてしまったことばかり考えていて、朝に芽衣ちゃんを飲みに誘ったことが頭から抜けていた。
「あは、そうだったね、行こ!」
「…その言い方は、忘れてましたね?」
「やだなぁ、覚えてたよ、ちゃんと!」
眉間にシワを寄せながらあたしを睨む芽衣ちゃんをなだめて、あたしたちはオフィスを後にした。
◇
「杏奈先輩、食べたいものあります?」
「んー、芽衣ちゃんは?」
芽衣ちゃんの質問にそう返しながら、外に出るエレベーターに乗り込む。
「飲めればなんでもいいですけど、静かなトコの方が先輩の話ゆっくり聞けそうですよね」
「そ、そんなに改まって聞いてもらうほど、面白い話はないんだけど…」
なんだか根掘り葉掘り聞きだされそうだなと思いながら、1階に着いたエレベーターを降りる。
「あれ…?」
横で小さくそう呟いた芽衣ちゃんを見て、なんだろう?と視線の先を確認する。ビルの出口の自動ドアを出た先に、西野さんが見知らぬ女性と一緒にいた。
「え、わ…っ!」
芽衣ちゃんがあたしの腕を引き、西野さんに気づかれないように柱の陰に隠れる。
「ちょっと、誰ですか! 西野さんといる美女! 杏奈先輩、知ってます!?」
「し、知らない…!」
ストレートの長い髪。モデルみたいにスタイルが良く、西野さんと並ぶと理想的な美男美女という感じでよく似合っている。知らない人だけど、一人だけ思い浮かぶ人がいる。
" 美月─…、やっぱり…僕は、君が… "
西野さんが熱を出したとき、あたしをその人と間違えて抱きしめた。絞り出すような哀しい声で呼んだ西野さんが忘れられない女性。それがきっと、あの人だ。
冷たい態度を取られて当然だ。昨日、西野さんが言った言葉はすべて正しかった。きつい言葉もあったけど、全部、あたしのことを心配して言ってくれたものだ。
" 西野さんは関係ないじゃないですか…!"
そう言って、突き放したのはあたしのほう。関係ないだなんて、どの口が言うのか。あんなに何度も迷惑を掛けておいて。
西野さんはいつも優しかった。泣いたり傷付いたりするあたしを気に掛けてくれて、元気の出る言葉をくれた。
ふいに西野さんの柔らかい笑顔が頭に浮かぶ。あんなふうに笑ってくれることはもうないかもしれない。全部壊したのはあたしだ。
◇
時計が18時を回り、帰りの身支度をしながら窓際の西野さんのデスクを見る。先程まで、いつもと変わらない様子で淡々と仕事をしていたのに、気づかないうちに西野さんは帰ったようだった。
「じゃあ、行きましょっか、先輩」
「え…?」
「え、じゃなくて。飲みに誘ったの杏奈先輩じゃないですか…」
すっかり忘れていたあたしを芽衣ちゃんが呆れ顔で見る。西野さんを怒らせてしまったことばかり考えていて、朝に芽衣ちゃんを飲みに誘ったことが頭から抜けていた。
「あは、そうだったね、行こ!」
「…その言い方は、忘れてましたね?」
「やだなぁ、覚えてたよ、ちゃんと!」
眉間にシワを寄せながらあたしを睨む芽衣ちゃんをなだめて、あたしたちはオフィスを後にした。
◇
「杏奈先輩、食べたいものあります?」
「んー、芽衣ちゃんは?」
芽衣ちゃんの質問にそう返しながら、外に出るエレベーターに乗り込む。
「飲めればなんでもいいですけど、静かなトコの方が先輩の話ゆっくり聞けそうですよね」
「そ、そんなに改まって聞いてもらうほど、面白い話はないんだけど…」
なんだか根掘り葉掘り聞きだされそうだなと思いながら、1階に着いたエレベーターを降りる。
「あれ…?」
横で小さくそう呟いた芽衣ちゃんを見て、なんだろう?と視線の先を確認する。ビルの出口の自動ドアを出た先に、西野さんが見知らぬ女性と一緒にいた。
「え、わ…っ!」
芽衣ちゃんがあたしの腕を引き、西野さんに気づかれないように柱の陰に隠れる。
「ちょっと、誰ですか! 西野さんといる美女! 杏奈先輩、知ってます!?」
「し、知らない…!」
ストレートの長い髪。モデルみたいにスタイルが良く、西野さんと並ぶと理想的な美男美女という感じでよく似合っている。知らない人だけど、一人だけ思い浮かぶ人がいる。
" 美月─…、やっぱり…僕は、君が… "
西野さんが熱を出したとき、あたしをその人と間違えて抱きしめた。絞り出すような哀しい声で呼んだ西野さんが忘れられない女性。それがきっと、あの人だ。
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