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距離②
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「うー…」
昼休み、スマホの画面を眺めながら苦悩する。あれから一ヶ月経った。そろそろ悠真に連絡をしないといけない。だけど、あたしの中では、まだ結論が出ていなかった。
悠真は思ったよりもずっとあっさりしていた。今まであんなにエッチをしたがって、出来ないと不機嫌になったりしていたのに。距離を置きたいだなんて言ったら、もっと揉める覚悟をしていた。だけど、悠真はそれをすんなり受け入れて、この一ヶ月、一度も連絡は来なかった。
「どうしたんですか、杏奈先輩」
「んー…?」
「午後、外出ですよね? 早く食べないと、お昼終わっちゃいますよ」
隣の席でお手製のお弁当を食べ終えた芽衣ちゃんが、そう話しかけてきた。
「あ、またゲス男が何かしたんですか…?」
眉間にシワを寄せながら、杏奈ちゃんがそう聞く。相変わらず安定して悠真のことが嫌いで、いっそ清々しい。
「ううん…。ここ一ヶ月ぐらい距離を置いているから、何もないんだけど…」
あたしのその言葉に芽衣ちゃんの瞳が急に輝く。
「やっと別れる気になったんですね…!」
「い、いや…、少し考えたくて、距離をね…?」
「距離を置いた時点で、もう答えは "別れる" の一択では?」
ズバッと切り替えしてくる芽衣ちゃんに気圧される。芽衣ちゃんみたいに可愛くて自信がある女の子だったら、うじうじと悩まずに次の恋へ行けるのだろう。
「あのゲス男な時点で、そんなに悩む必要あります?」
「いや、悠真もいい所はあるし、色々考えたら、そう簡単にどうするかは決められなくて…」
「あたしならさっさと振って、西野さんへ直行ですけど」
「だから、西野さんとは、そういうんじゃないんだってば…」
「えー…?」
どうして芽衣ちゃんはすぐに西野さんを持ち出してくるのか。天地がひっくり返っても、西野さんと何かが起こるはずがない。彼の心の中には美月さんがいるのだから。
そうでなくても、あたしなんか嫌だろう。引っ越して早々、嘘の喘ぎ声を聞かされたり、この前の夜だって、悠真に抱かれて何度も達したのを聞かれている。そんな女を恋愛対象にしたいと思う人なんていない。
「でも、杏奈先輩、今日の午後も西野さんと一緒にお客様の所に行くんですよね?」
「それは、仕事だから一緒に行くだけで…」
「杏奈先輩はそう思ってても、向こうはわからないですよ?」
「何もないから、絶対に…!」
そう否定したにもかかわらず、芽衣ちゃんは何かを期待するように微笑んでいる。そんな顔をされても何も無いものは無いのだけれど、これ以上否定したところで芽衣ちゃんは聞く耳を持たないだろうと諦めた。
昼休み、スマホの画面を眺めながら苦悩する。あれから一ヶ月経った。そろそろ悠真に連絡をしないといけない。だけど、あたしの中では、まだ結論が出ていなかった。
悠真は思ったよりもずっとあっさりしていた。今まであんなにエッチをしたがって、出来ないと不機嫌になったりしていたのに。距離を置きたいだなんて言ったら、もっと揉める覚悟をしていた。だけど、悠真はそれをすんなり受け入れて、この一ヶ月、一度も連絡は来なかった。
「どうしたんですか、杏奈先輩」
「んー…?」
「午後、外出ですよね? 早く食べないと、お昼終わっちゃいますよ」
隣の席でお手製のお弁当を食べ終えた芽衣ちゃんが、そう話しかけてきた。
「あ、またゲス男が何かしたんですか…?」
眉間にシワを寄せながら、杏奈ちゃんがそう聞く。相変わらず安定して悠真のことが嫌いで、いっそ清々しい。
「ううん…。ここ一ヶ月ぐらい距離を置いているから、何もないんだけど…」
あたしのその言葉に芽衣ちゃんの瞳が急に輝く。
「やっと別れる気になったんですね…!」
「い、いや…、少し考えたくて、距離をね…?」
「距離を置いた時点で、もう答えは "別れる" の一択では?」
ズバッと切り替えしてくる芽衣ちゃんに気圧される。芽衣ちゃんみたいに可愛くて自信がある女の子だったら、うじうじと悩まずに次の恋へ行けるのだろう。
「あのゲス男な時点で、そんなに悩む必要あります?」
「いや、悠真もいい所はあるし、色々考えたら、そう簡単にどうするかは決められなくて…」
「あたしならさっさと振って、西野さんへ直行ですけど」
「だから、西野さんとは、そういうんじゃないんだってば…」
「えー…?」
どうして芽衣ちゃんはすぐに西野さんを持ち出してくるのか。天地がひっくり返っても、西野さんと何かが起こるはずがない。彼の心の中には美月さんがいるのだから。
そうでなくても、あたしなんか嫌だろう。引っ越して早々、嘘の喘ぎ声を聞かされたり、この前の夜だって、悠真に抱かれて何度も達したのを聞かれている。そんな女を恋愛対象にしたいと思う人なんていない。
「でも、杏奈先輩、今日の午後も西野さんと一緒にお客様の所に行くんですよね?」
「それは、仕事だから一緒に行くだけで…」
「杏奈先輩はそう思ってても、向こうはわからないですよ?」
「何もないから、絶対に…!」
そう否定したにもかかわらず、芽衣ちゃんは何かを期待するように微笑んでいる。そんな顔をされても何も無いものは無いのだけれど、これ以上否定したところで芽衣ちゃんは聞く耳を持たないだろうと諦めた。
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