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新しい隣人②
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職場の自席で仕事をしながら、窓際の席に座っている西野さんを視界の隅で追う。
西野 蒼生。去年の春にうちに異動してきた彼は、あたしの一つ歳上で技術営業をしている。仕事はできるけど、愛想はあまりないタイプ。というかほとんど皆無と言ってもいい。黒縁の眼鏡の下の整った顔はいつも寡黙で、淡々とした表情で仕事をこなしている。もう一年近く一緒の部署にいるのに、職場でほとんど無駄話をしない彼とは、必要最低限の会話しかしたことがない。
今朝はあまりに突然のことに驚きすぎて、咄嗟に忘れ物をしたことにして家の中に逃げた。5分後に家を出たら、彼は先に会社に行ったようでもういなかった。
要するに、昨日引っ越してきた新しい隣人が西野さんだったということだ。見た感じ、本人はいつも通り、何もなかったような顔で仕事をしている。
しかし、当然のことながら、あたしの心情は穏やかとは言い難い。だって、絶対、聞かれている。昨日の行為中のあたしの声を…!
違うのだ、あんな喘ぎ声、好きで出してるわけじゃない。ワザと盛り上がった声を出したけど、それは悠真に早くイって終わって欲しかったからで。それをまさか職場の人に聞かれているなんて、とんだ生き恥だ。
(何からどう説明すれば…、いや、そもそもどう切り出せば…)
そう。大して接点のない西野さんに悠真との事情を話せる訳がないし、事が事だけに自分から切り出すのも気まずい。
(結局、余計なことはしないで、何もなかったフリをするのが一番いいような気も…)
幸い、彼は余計なことを言いまわったりするタイプではない。勿論、あのポーカーフェイスの裏でどう思われているのか想像するだけで、穴があったら猛ダッシュでダイブしたいけれど...
そもそも仕事以外の話をする間柄ではないし、悠真とのエッチはこれからは場所を考えるとして。西野さんとはこのまま距離を取って有耶無耶にするしかないのだろうと、あたしは気まずさを感じながら自分を納得させた。
西野 蒼生。去年の春にうちに異動してきた彼は、あたしの一つ歳上で技術営業をしている。仕事はできるけど、愛想はあまりないタイプ。というかほとんど皆無と言ってもいい。黒縁の眼鏡の下の整った顔はいつも寡黙で、淡々とした表情で仕事をこなしている。もう一年近く一緒の部署にいるのに、職場でほとんど無駄話をしない彼とは、必要最低限の会話しかしたことがない。
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