1 / 52
新しい隣人① *
しおりを挟む
「んん…、朝からうるさい…なぁ…」
休日の朝、壁の向こうから聞こえる騒音に目を覚ます。マンションの隣の部屋で家具を運び込む音。数ヶ月前から空き部屋だったのだが、おそらく誰かが引っ越してきたのだろう。
栗原杏奈、25歳。社会人3年目が終わろうとしている。桜が開花して、あと数日でまた新しい年度が始まる。社会人も3年もすれば慣れたもので、浮足立った季節とは裏腹に、あたしの日常は特に目新しいこともなく、今まで通りの毎日が続くだけだ。
◇
「あぁン…、悠真…っ」
「ここ、好きだろ…?」
「すき…っ、アンっ、あっ、あぁン…ッ!」
悠真とは付き合って2年になる。出会ったのは合コンだったけど、あたしにとっては生まれて初めての彼氏で、当然、キスもエッチも悠真が初めてだった。
「あぁあン…っ!い、いい、ソコ…ッ!」
最初はすごく痛かった。今はそれほど痛くはないけど、慣れたら良いかというと残念ながらそんなこともなくて、あたしはこの行為が苦手だ。もちろん、悠真にはそんなこと言えないから、感じてるフリはするけど。
そもそもこの行為が気持ちいいなんて嘘じゃないのかな。だって、友達の話を聞いても、痛がってる女の子ばっかりだし。
まぁ、エッチはともかく、悠真との関係には満足している。このまま穏やかに付き合って、そのうち結婚できたら、あたしの平凡な人生なら十分合格点だと思う。
「ほら、どうして欲しい?」
「あァン…!悠真ので、早くイカせて…ッ!」
「エロいな、杏奈は。わかったよ」
早く終わって欲しくて、ワザと高ぶった声を出す。頭の中は冷静で、「嘘つきでごめん」と心の中で悠真に謝った。
◇
次の日、眠ったままの悠真をベッドに残し、会社に行く支度を整える。
悠真の家は自営業で、お父さんがやっている会社を悠真も手伝っているらしい。ゆくゆくは彼が跡を継ぐそうだが、身内経営のせいなのか悠真の働き方は自由で、時々羨ましくなる。
テーブルの上に書き置きをして、スペアの鍵を置くと、時計は7時半を過ぎていた。
慌てて家を出ると、隣の部屋のドアが空き、背の高いスーツ姿の男性が出てくる。新しく引っ越して来た人だと思い、挨拶しようとしたところで、眼鏡越しの彼と目が合い、あたしはフリーズした。
「に、西野…さん…?」
同じ職場の西野蒼生が、同じく驚いた顔でそこにいた。
休日の朝、壁の向こうから聞こえる騒音に目を覚ます。マンションの隣の部屋で家具を運び込む音。数ヶ月前から空き部屋だったのだが、おそらく誰かが引っ越してきたのだろう。
栗原杏奈、25歳。社会人3年目が終わろうとしている。桜が開花して、あと数日でまた新しい年度が始まる。社会人も3年もすれば慣れたもので、浮足立った季節とは裏腹に、あたしの日常は特に目新しいこともなく、今まで通りの毎日が続くだけだ。
◇
「あぁン…、悠真…っ」
「ここ、好きだろ…?」
「すき…っ、アンっ、あっ、あぁン…ッ!」
悠真とは付き合って2年になる。出会ったのは合コンだったけど、あたしにとっては生まれて初めての彼氏で、当然、キスもエッチも悠真が初めてだった。
「あぁあン…っ!い、いい、ソコ…ッ!」
最初はすごく痛かった。今はそれほど痛くはないけど、慣れたら良いかというと残念ながらそんなこともなくて、あたしはこの行為が苦手だ。もちろん、悠真にはそんなこと言えないから、感じてるフリはするけど。
そもそもこの行為が気持ちいいなんて嘘じゃないのかな。だって、友達の話を聞いても、痛がってる女の子ばっかりだし。
まぁ、エッチはともかく、悠真との関係には満足している。このまま穏やかに付き合って、そのうち結婚できたら、あたしの平凡な人生なら十分合格点だと思う。
「ほら、どうして欲しい?」
「あァン…!悠真ので、早くイカせて…ッ!」
「エロいな、杏奈は。わかったよ」
早く終わって欲しくて、ワザと高ぶった声を出す。頭の中は冷静で、「嘘つきでごめん」と心の中で悠真に謝った。
◇
次の日、眠ったままの悠真をベッドに残し、会社に行く支度を整える。
悠真の家は自営業で、お父さんがやっている会社を悠真も手伝っているらしい。ゆくゆくは彼が跡を継ぐそうだが、身内経営のせいなのか悠真の働き方は自由で、時々羨ましくなる。
テーブルの上に書き置きをして、スペアの鍵を置くと、時計は7時半を過ぎていた。
慌てて家を出ると、隣の部屋のドアが空き、背の高いスーツ姿の男性が出てくる。新しく引っ越して来た人だと思い、挨拶しようとしたところで、眼鏡越しの彼と目が合い、あたしはフリーズした。
「に、西野…さん…?」
同じ職場の西野蒼生が、同じく驚いた顔でそこにいた。
0
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説
【R18】男嫌いと噂の美人秘書はエリート副社長に一夜から始まる恋に落とされる。
夏琳トウ(明石唯加)
恋愛
真田(さなだ)ホールディングスで専務秘書を務めている香坂 杏珠(こうさか あんじゅ)は凛とした美人で26歳。社内外問わずモテるものの、男に冷たく当たることから『男性嫌いではないか』と噂されている。
しかし、実際は違う。杏珠は自分の理想を妥協することが出来ず、結果的に彼氏いない歴=年齢を貫いている、いわば拗らせ女なのだ。
そんな杏珠はある日社長から副社長として本社に来てもらう甥っ子の専属秘書になってほしいと打診された。
渋々といった風に了承した杏珠。
そして、出逢った男性――丞(たすく)は、まさかまさかで杏珠の好みぴったりの『筋肉男子』だった。
挙句、気が付いたら二人でベッドにいて……。
しかも、過去についてしまった『とある嘘』が原因で、杏珠は危機に陥る。
後継者と名高いエリート副社長×凛とした美人秘書(拗らせ女)の身体から始まる現代ラブ。
▼掲載先→エブリスタ、ベリーズカフェ、アルファポリス(性描写多め版)
【R18】イケメン御曹司の暗証番号は地味メガネな私の誕生日と一緒~こんな偶然ってあるんですね、と思っていたらなんだか溺愛されてるような?~
弓はあと
恋愛
職場の同期で隣の席の成瀬君は営業部のエースでメガネも似合う超イケメン。
隣の席という接点がなければ、仲良く話すこともなかった別世界の人。
だって私は、取引先の受付嬢に『地味メガネ』と陰で言われるような女だもの。
おまけに彼は大企業の社長の三男で御曹司。
そのうえ性格も良くて中身まで格好いいとか、ハイスぺ過ぎて困る。
ひょんなことから彼が使っている暗証番号を教えてもらう事に。
その番号は、私の誕生日と一緒だった。
こんな偶然ってあるんですね、と思っていたらなんだか溺愛されてるような?
イケメンエリート軍団の籠の中
便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある
IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC”
謎多き噂の飛び交う外資系一流企業
日本内外のイケメンエリートが
集まる男のみの会社
唯一の女子、受付兼秘書係が定年退職となり
女子社員募集要項がネットを賑わした
1名の採用に300人以上が殺到する
松村舞衣(24歳)
友達につき合って応募しただけなのに
何故かその超難関を突破する
凪さん、映司さん、謙人さん、
トオルさん、ジャスティン
イケメンでエリートで華麗なる超一流の人々
でも、なんか、なんだか、息苦しい~~
イケメンエリート軍団の鳥かごの中に
私、飼われてしまったみたい…
「俺がお前に極上の恋愛を教えてやる
他の奴とか? そんなの無視すればいいんだよ」
婚約破棄を突きつけに行ったら犬猿の仲の婚約者が私でオナニーしてた
Adria
恋愛
最近喧嘩ばかりな婚約者が、高級ホテルの入り口で見知らぬ女性と楽しそうに話して中に入っていった。それを見た私は彼との婚約を破棄して別れることを決意し、彼の家に乗り込む。でもそこで見たのは、切なそうに私の名前を呼びながらオナニーしている彼だった。
イラスト:樹史桜様
私の婚活事情〜副社長の策に嵌まるまで〜
みかん桜(蜜柑桜)
恋愛
身長172センチ。
高身長であること以外はいたって平凡なアラサーOLの佐伯花音。
婚活アプリに登録し、積極的に動いているのに中々上手く行かない。
名前からしてもっと可愛らしい人かと…ってどういうこと? そんな人こっちから願い下げ。
−−−でもだからってこんなハイスペ男子も求めてないっ!!
イケメン副社長に振り回される毎日…気が付いたときには既に副社長の手の内にいた。
初色に囲われた秘書は、蜜色の秘処を暴かれる
ささゆき細雪
恋愛
樹理にはかつてひとまわり年上の婚約者がいた。けれど樹理は彼ではなく彼についてくる母親違いの弟の方に恋をしていた。
だが、高校一年生のときにとつぜん幼い頃からの婚約を破棄され、兄弟と逢うこともなくなってしまう。
あれから十年、中小企業の社長をしている父親の秘書として結婚から逃げるように働いていた樹理のもとにあらわれたのは……
幼馴染で初恋の彼が新社長になって、専属秘書にご指名ですか!?
これは、両片想いでゆるふわオフィスラブなひしょひしょばなし。
※ムーンライトノベルズで開催された「昼と夜の勝負服企画」参加作品です。他サイトにも掲載中。
「Grand Duo * グラン・デュオ ―シューベルトは初恋花嫁を諦めない―」で当て馬だった紡の弟が今回のヒーローです(未読でもぜんぜん問題ないです)。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる