高尾山で立ち寄ったカフェにはつくも神のぬいぐるみとムササビやもふもふがいました

なかじまあゆこ

文字の大きさ
上 下
135 / 198
ミケとわたし達

思い出の味

しおりを挟む
「では、皆さんお待たせしました。カレーライスとお好み焼きを食べましょう。いただきま~す」

 高男さんがにこやかな笑みを浮かべ手を合わせた。

 わたし達も元気よく「いただきま~す」と言って手を合わせる。

 ミケは『いただきます』と言い終わるか言い終わらないかのタイミングでもうカレーライスを食べ始めているではないか。しかも、お好み焼きも同時にだ。

「あはは、ミケちゃんってば凄い勢いで食べているね」

「にゃはは、だって、わたし待ちくたびれていたんだもん」

 そう答え顔を上げたミケの口の周りにはカレールーとお好み焼きのソースがべったりくっついていた。

「あ、ミケちゃんってばお口の周りがばっちいよ~」

 わたしは笑いながらウェットティッシュを差し出す。

「にゃはは、またまたやってしまいましたにゃん」

 ミケは照れ笑いを浮かべわたしからウェットティッシュを受け取る。

 そんなミケをみんなが見てどっと笑う。ただ、その笑い声から愛おしさが感じられなんだか幸せがぎゅっと胸の中いっぱいに広がった。



 わたしもさっそくお好み焼きに箸を伸ばす。カレーライスかお好み焼きどちらから先に食べようか迷った末お好み焼きにしたのだ。

 たっぷりかけられたソースの香りが鼻腔をくすぐり、もう食べる前から美味しさがじわじわと伝わってくる。

 そして、お好み焼きを口に運ぶと豚肉がカリカリしていてソースと良く合いそれとなんだか懐かしさが込み上げてきた。

 高男さんが作ってくれたお好み焼きなのにわたしはこの味を昔から知っているような気がする。

 大きめサイズで生地を薄めにして焼かれたお好み焼きは……。素朴だけどとても美味しくて何枚でも食べられそうだ。

 マヨネーズもプラスして口に運んでみる。ソースとマヨネーズの酸味が良く合う。美味しくてたまらない。

「真歌ちゃ~ん、お好み焼き焼けたわよ」

 階下からわたしを呼ぶ声が聞こえてきた。

 

 そうだ、この声は、この味はおばあちゃんの声とよく作ってくれたお好み焼きの味だった。

「おばあちゃん」

 わたしは、おばあちゃんに視線を向けた。すると、おばあちゃんもわたしを見ていた。


「真歌ちゃん、このお好み焼きわたしが作るものと似ているわ」

 おばあちゃんはわたしの目を真っ直ぐ見て微笑みを浮かべた。

「うん、わたしもおばあちゃんのお好み焼きを思い出したよ。田舎に遊びに行くとお好み焼き好きだよねと言って作ってくれたよね」

 わたしは、大好きだったおばあちゃんのお好み焼きを思い浮かべる。お皿からはみ出しそうな薄くて大きめなお好み焼き美味しかったな。

 最近は忙しくて田舎に遊びに行くことも少なくなっていた。

「真歌ちゃんが美味しそうに食べてくれるからおばあちゃん嬉しかったな。また、遊びに来てね」

 おばあちゃんはお箸でお好み焼きを口に運び食べた。

「うん、絶対に行くね」

 わたしももう一口お好み焼きを食べた。うん、やっぱりおばあちゃんの味がするお好み焼きだ。

 そして、ふと視線を高男さんに向けると目が合った。その目はキラリと輝いて見えた。やっぱり高男さんは不思議な人だな。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

異世界着ぐるみ転生

こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生 どこにでもいる、普通のOLだった。 会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。 ある日気が付くと、森の中だった。 誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ! 自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。 幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り! 冒険者?そんな怖い事はしません! 目指せ、自給自足! *小説家になろう様でも掲載中です

公主の嫁入り

マチバリ
キャラ文芸
 宗国の公主である雪花は、後宮の最奥にある月花宮で息をひそめて生きていた。母の身分が低かったことを理由に他の妃たちから冷遇されていたからだ。  17歳になったある日、皇帝となった兄の命により龍の血を継ぐという道士の元へ降嫁する事が決まる。政略結婚の道具として役に立ちたいと願いつつも怯えていた雪花だったが、顔を合わせた道士の焔蓮は優しい人で……ぎこちなくも心を通わせ、夫婦となっていく二人の物語。  中華習作かつ色々ふんわりなファンタジー設定です。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

元貧乏貴族の大公夫人、大富豪の旦那様に溺愛されながら人生を謳歌する!

楠ノ木雫
恋愛
 貧乏な実家を救うための結婚だった……はずなのに!?  貧乏貴族に生まれたテトラは実は転生者。毎日身を粉にして領民達と一緒に働いてきた。だけど、この家には借金があり、借金取りである商会の商会長から結婚の話を出されてしまっている。彼らはこの貴族の爵位が欲しいらしいけれど、結婚なんてしたくない。  けれどとある日、奴らのせいで仕事を潰された。これでは生活が出来ない。絶体絶命だったその時、とあるお偉いさんが手紙を持ってきた。その中に書いてあったのは……この国の大公様との結婚話ですって!?  ※他サイトにも投稿しています。

花好きカムイがもたらす『しあわせ』~サフォークの丘 スミレ・ガーデンの片隅で~

市來茉莉(茉莉恵)
キャラ文芸
【私にしか見えない彼は、アイヌの置き土産。急に店が繁盛していく】 父が経営している北国ガーデンカフェ。ガーデナーの舞は庭の手入れを担当しているが、いまにも閉店しそうな毎日…… ある日、黒髪が虹色に光るミステリアスな男性が森から現れる。なのに彼が見えるのは舞だけのよう? でも彼が遊びに来るたびに、不思議と店が繁盛していく 繁盛すればトラブルもつきもの。 庭で不思議なことが巻き起こる この人は幽霊? 森の精霊? それとも……? 徐々にアイヌとカムイの真相へと近づいていきます ★第四回キャラ文芸大賞 奨励賞 いただきました★ ※舞の仕事はガーデナー、札幌の公園『花のコタン』の園芸職人。 自立した人生を目指す日々。 ある日、父が突然、ガーデンカフェを経営すると言い出した。 男手ひとつで育ててくれた父を放っておけない舞は仕事を辞め、都市札幌から羊ばかりの士別市へ。父の店にあるメドウガーデンの手入れをすることになる。 ※アイヌの叙事詩 神様の物語を伝えるカムイ・ユーカラの内容については、専門の書籍を参照にしている部分もあります。

【完結】転生少女は異世界でお店を始めたい

梅丸
ファンタジー
せっかく40代目前にして夢だった喫茶店オープンに漕ぎ着けたと言うのに事故に遭い呆気なく命を落としてしまった私。女神様が管理する異世界に転生させてもらい夢を実現するために奮闘するのだが、この世界には無いものが多すぎる! 創造魔法と言う女神様から授かった恩寵と前世の料理レシピを駆使して色々作りながら頑張る私だった。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! リクエストの更新が終わったら、舞踏会編をはじめる予定ですー!

処理中です...