高尾山で立ち寄ったカフェにはつくも神のぬいぐるみとムササビやもふもふがいました

なかじまあゆこ

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ミケとわたし達

食べたいね

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「ねえ、まだかにゃん」

 テーブルに肘をつきながらミケが言った。

「高男さんが美味しいカレーライスとお好み焼きを作ってくれてるから待つんだよ」

 ムササビがまるでお姉さんのように言う。

 その時。
「お~い、ムササビ調理補助をしてくれよ」と厨房から高男さんの声が聞こえてきた。

「え~面倒くさいな」
「お~い、ムササビ何してるんだよ」
「はいはい、高男さん。仕方ないな手伝うよ」

 ムササビは嫌そうな声を出し渋々厨房に向かった。

 そんなムササビのポニーテールが揺れる後ろ姿をわたしは眺める。

「わたし達も手伝いましょうか?」

 わたしは厨房の高男さんに大きな声を出し問いかけた。

「皆さんは料理が出て来るのを待っていてください。ムササビと美味しい夕飯を作りますからね」

 高男さんは厨房から顔をひょっこり出し有り難いこと言ってくれた。

「にゃはは、ゆっくり待つにゃん」

 ミケは嬉しそうに笑った。

 まったく呑気な子だなと微笑ましく思っていると、ミケは人間の女の子の姿から本来の三毛猫のぬいぐるみに戻っていた。


 暫くすると、「お待たせしました~」と高男さんの明るい声と共に食事が運ばれて来た。

 その隣にムササビも立っていて「お待たせしました~」と言いながら緑茶の注がれた湯呑み茶碗をテーブルに並べる。

「待っていましたにゃん。ご飯だ、ご飯だにゃん」

 ぬいぐるみ姿のミケはにゃぱーと笑い目の前に置かれたカレーライスを食べようとしている。

「こらこらミケちゃん、みんなでいただきますって挨拶をしてから食べましょうね」

 真昼ひいおばあちゃんがうふふと笑いながら言った。

「もう、待てないにゃん」

 カレーライスとお好み焼きを食い入る様に見つめるミケの口からヨダレが零れ落ちそうになっている。

「では、皆さん食事の時間にしますよ」
「夕飯のお時間ですよ」

 高男さんとムササビもそう言いながら席に着く。

 ミケの食いしん坊ぶりに呆れてはいるけれど、かくいうわたしも早く食べたくてウズウズしている。

「あらあら、美味しそうね」

 おばあちゃんもカレーライスとお好み焼きに視線を落とし目をキラキラと輝かせている。

 やっぱり食いしん坊は遺伝かもね。だって、真昼ひいおばあちゃんに視線を向けると、わたしと同じく早く食べたくてウズウズしているような表情なんだもん。
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