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つくも神のぬいぐるみミケ

会えた

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「そうご飯よ。幼かったわたしはミケちゃんに悩みを聞いてもらってね、お礼にご飯よ~ってあげたこともあるのよ。今、考えると可笑しいわね」

  おばあちゃんはミケを見てコロコロ笑う。

「おばあちゃんがわたしにご飯をくれたことがあるんだね。そっか、だからわたしご飯が好きにゃんだね」

  ミケは納得したように首を縦にうんうんと振りにゃぱーと笑った。そして、気がつくとミケは……。

  人間の女の子の姿からぬいぐるみの三毛猫の姿に戻っていた。

「あ、ミケちゃん!!」

  わたし達四人はほぼ同時に驚きの声を上げた。

  三毛猫のぬいぐるみに戻ったミケはちょこんとテーブルの上に座っている。

「にゃはは、小さなぬいぐるみに戻ってしまったにゃん」

  ミケは頭を搔き搔き笑った。

「ああ、わたしのミケちゃんだわ」

  おばあちゃんはテーブルの上に座るミケに手を伸ばしそっと頭を撫でた。

そして、「間違いない」と言っておばあちゃんは懐かしそうに顔をほころばせた。

「おばあちゃん……ううん、真昼ちゃんだよね。会いたかったよ。思い出したにゃん」

  おばあちゃんに頭を撫でられているミケは幸せそうに目を細めている。その姿を気持ちよさそうで幸せそうだなそう思いわたしはじっと眺めた。


  高男さんやムササビに目を向けると、わたしと同じように頬を緩めほっこり顔でじっとミケとおばあちゃんを眺めていた。

「なんかほっこりしますね」

  わたしと目が合った高男さんが言った。

「はい、見ているとなんとも言えない温かくてほっこりした気持ちになりますね」

  今もミケの頭を愛おしそうに撫でているおばあちゃんと、そして幸せそうに撫でられているミケに目を向けわたしは返事をした。

「わたしも仲間入りしたいくらいだよ~」

  ムササビはミケとおばあちゃんに優しい目差しを向けている。

「ミケちゃん思い出してくれたのね」

「うん、思い出したにゃん。真昼ちゃんはぬいぐるみのわたしを可愛がってくれたにゃんね」

「ミケちゃんをぎゅっとすると安心できたのよ。それに笑いたい時も悲しくて泣きたい時もいつもミケちゃんに聞いてもらっていたのよ。ありがとうね」

  おばあちゃんはうふふと笑いミケをもう一度撫でた。

「こちらこそだにゃん」

  ミケはにゃぱーと笑う。

  きっと、ミケとおばあちゃんはずっと、一緒に過ごしてきたのだろう。わたしもぬいぐるみが好きだからおばあちゃんの気持ちもわかる。

  そこまで考えたところで、でもどうしてミケはこのムササビカフェ食堂の棚の上に飾られていたのかな?  とふと思った。
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