上 下
70 / 134
つくも神のぬいぐるみミケ

カレーライスと海鮮巻き寿司をどうぞ

しおりを挟む
「うわぁ~美味しそう」
「美味しそうだ~にゃん」

  ムササビの声に振り向き海鮮巻き寿司に目を向けたわたしとミケは思わず声を上げてしまった。

  すると、ムササビもこちらを見たかと思うと「カレーライス美味しそう食べたいな~」と言って目をキラキラ輝かせている。

「おいおい君達、これはおばあちゃんのお客さんのカレーライスと海鮮巻き寿司だからな」

  高男さんはわたし達の顔を順番に見て苦笑する。

  わたし達三人は顔を見合わせえへへと笑う。ミケとムササビの顔は食べたいよと言っているように見えた。きっと、わたしも似たような表情をしているのだろう。

  そんなわたし達をじっと見ていた高男さんが「後で賄いで食べさせてあげるからね」と言った。

 「やった~」
「嬉しい~」
「早く食べたいにゃん」

  わたし達はバンザイをした。

「まったく食い意地の張った人達だね……」

   高男さんは呆れ顔で笑った。そして。

「さあ、お客さんに料理を運ぶよ」と言いながらカレーライスと海鮮巻き寿司、お味噌汁をお盆に載せおばあちゃんのテーブルに向かう。

  一度こちらに振り返り「あ、真歌さんは緑茶とサラダを運んでくださいね」と言った。



  トマトとキャベツのサラダと湯気の立っている緑茶があらかじめ載せられているお盆をわたしは手に持ち高男さんの後に続く。

「あ、わたしも様子を見に行こう」
「わたしも気になるにゃん」

  ムササビとミケもそう言ってわたしの後についてくる。

「お待たせしました。『君に会えたら嬉しいなセット』です」

  高男さんがおばあちゃんの目の前に美味しそうなカレーライスと海鮮巻き寿司を置いた。

「あらあら、美味しそうなカレーライスと海鮮巻き寿司ね。ありがとう」

  おばあちゃんは顔を上げ微笑みを浮かべた。その笑顔はほわほわとしていてほっこりと安らげる。

「ゆっくりお召し上がりくださいね」

  高男さんはそう言って右手を大きく横に広げた。すると、とてとてとムササビが高男さんの元へ向かい左手を大きく横に広げ「ごゆっくりお召し上がりくださ~い」と言った。

「うふふ、ありがとう。いただきます」

  おばあちゃんはニコニコと笑みを浮かべ海鮮巻き寿司をお箸で口に運んだ。

「マグロとサーモンの海鮮巻き寿司ね。美味しいわ。懐かしい味ね」

  おばあちゃんはとても美味しそうに海鮮巻き寿司を食べている。

「ありがとうございます。サバの巻き寿司もありますよ」

「そうなのね。サバの巻き寿司も美味しそうね」

  おばあちゃんはサバの巻き寿司に箸を伸ばした。

「わ、わたしヨダレが垂れそうだよ」

  ミケがサバの巻き寿司を口に運んだおばあちゃんをじっと見ている。

「ちょっとミケちゃんダメだよ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

加藤貴美華とツクモノウタ

はじめアキラ
キャラ文芸
――あ、あれ?……僕、なんでここに?……というか。  覚えているのは、名前だけ。付喪神の少年・チョコは自分が“何の付喪神なのか”も、何故気づいた時住宅街でぼんやりしていたのかも覚えてはいなかった。  一体自分は何故記憶を失っていたのか。自分は一体誰なのか。  そんなチョコが頼ったのは、加藤ツクモ相談所という不思議な施設。  所長の名前は、加藤貴美華という霊能者の女性。そこはなんと、政府から認可された“付喪神”に絡む事件を解決するという、特別な相談所で。

転生幼女はお願いしたい~100万年に1人と言われた力で自由気ままな異世界ライフ~

土偶の友
ファンタジー
 サクヤは目が覚めると森の中にいた。  しかも隣にはもふもふで真っ白な小さい虎。  虎……? と思ってなでていると、懐かれて一緒に行動をすることに。  歩いていると、新しいもふもふのフェンリルが現れ、フェンリルも助けることになった。  それからは困っている人を助けたり、もふもふしたりのんびりと生きる。 9/28~10/6 までHOTランキング1位! 5/22に2巻が発売します! それに伴い、24章まで取り下げになるので、よろしく願いします。

俺、きのこです。

禎祥
キャラ文芸
朝起きたら、きのこになってました。 …えっ?何で?どういうこと?誰か説明プリーズ! 取り敢えず歩けるみたいなんで、元の姿に戻れる方法を探しにいってみようか。 歩くきのこの珍道中ショートショート。 果たしてきのこはちょっぴりセンチメンタルな最終回へと辿り着けるのか?これは、最終回から始まり最終回へと至るための物語。 ※最終回はアレですが基本ギャグです。 *印のついた話は閲覧注意 本作品は横書き表示推奨です。 表紙絵は巴月のん様よりいただきました(*´∇`*)

クラックコア~死んだ傭兵が転生したのは男子中学生!?

百舌巌
キャラ文芸
ディミトリは三十五歳。傭兵を生業としている彼は世界中の戦場から戦場へと渡り歩いていた。 彼の記憶の最後に在るのはシリアだ。ヨーロッパへの麻薬配給源である生産工場を襲撃したまでは作戦通りだが撤収に失敗してしまった。 仲間の一人が敵に通じていたのだ。ディミトリは工場の爆発に巻き込まれてしまった。 ディミトリが再び目が覚めるとニホンと言う国に居た。しかも、ガリヒョロの中学生の身体の中にだ。街の不良たちに絡まれたり、老人相手の詐欺野郎たちを駆逐したり、元の身体に戻りたいディミトリの闘いが始まる。 *「カクヨム」さんにも掲載しています。

玄関フードの『たま』

ながい としゆき
キャラ文芸
 吾輩は『たま』である。だけど、子猫の頃に去勢されたので、タマはもうない。  なんて、すごい文学作品の真似をしてみたけれど、僕には『たま』っていう名前があるし、同居人が変わってもこの名前は引き継がれているから、僕は一生『たま』なんだと思う。それに僕は吾輩というガラでもないし、哲学的な猫でもない。アレコレ難しく考えるよりも、目の前の出来事をあるがままに受け止める方が僕の性に合っているし、何より気楽で良い。(冒頭)  現在の同居人夫婦は、前に住んでいた家で外通いの生活をしていた僕のことを気遣ってくれて、寂しくないようにと玄関フードから外を眺められるように玄関のドアを開けっ放しにしてくれている。  そんな僕が地域のボス猫『海老蔵』とタッグを組んでニャン格を上げるために頑張るハートフルでスピリチュアルでちょっぴりファンタジーな不思議なお話。

高校生なのに娘ができちゃった!?

まったりさん
キャラ文芸
不思議な桜が咲く島に住む主人公のもとに、主人公の娘と名乗る妙な女が現われた。その女のせいで主人公の生活はめちゃくちゃ、最初は最悪だったが、段々と主人公の気持ちが変わっていって…!? そうして、紅葉が桜に変わる頃、物語の幕は閉じる。

お嬢様と執事は、その箱に夢を見る。

雪桜
キャラ文芸
✨ 第6回comicoお題チャレンジ『空』受賞作 阿須加家のお嬢様である結月は、親に虐げられていた。何もかも親に決められ、人形のように生きる日々。 だが、そんな結月の元に、新しく執事がやってくる。背が高く整った顔立ちをした彼は、まさに非の打ち所のない完璧な執事。 だが、その執事の正体は、幼い頃に結婚の約束をした結月の『恋人』だった。レオが執事になって戻ってきたのは、結月を救うため。しかし、そんなレオの記憶を、結月は全て失っていた。 これは、記憶をなくしたお嬢様と、恋人のためなら何でもしてしまう一途すぎる執事(ヤンデレ)が、二度目の恋を始める話。 「お嬢様、私を愛してください」 「……え?」 好きだとバレたら即刻解雇の屋敷の中、レオの愛は、再び結月に届くのか。 一度結ばれたはずの二人が、今度は立場を変えて恋をする。溺愛執事×箱入りお嬢様の甘く切ない純愛ストーリー! ✣✣✣ カクヨムにて完結済みです。 毎日2話ずつ更新します。 この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。 ※第6回comicoお題チャレンジ『空』の受賞作ですが、著作などの権利は全て戻ってきております。

処理中です...